『歴史評論』2013年9月号(第761) Historical Journal(REKISHI HYORON) September 2013 vol.761

「過去の克服」と日本の市民社会 “Coming to Terms with the Past and Japanese Civil Society”

定価 860円  編集長ブログも随時更新中。


 二〇一三年は、アジア・太平洋戦争で日本が敗北してから六八年が経過しました。日本の侵略は、国内外に甚大な被害をもたらし、とりわけアジア諸国で夥しい数の犠牲者を出しました。それにもかかわらず、日本軍「慰安婦」問題や歴史教科書問題に象徴されるように、加害の事実に対する日本政府の歴史認識や被害者に対する戦後補償は、多くの課題を抱えたままとなっています。
 一方、こうした政府の態度とは別に、市民社会においては一九六〇年代以降、加害の事実について調査し、学習し、戦後補償を実現していくための様々な取り組みが積み重ねられてきました。そうした諸実践は、小さな学習会から大規模な街頭行動まで、多様な形態で進められ、時に活動妨害や運動の分裂などの困難を経験しながらも、未決の戦争責任を告発し、戦後補償の実現を促してきました。
 従来、日本の加害の問題をめぐっては、その歴史的実態や、戦後補償の内容が主たる議論の対象となってきましたが、他方で、市民社会がそうした問題にどう取り組んできたのかについて、歴史的に検証する試みは、あまりなされてこなかったように思います。
 本特集では、そうした「過去の克服」をめぐる諸実践に光をあて、歴史研究者、教育者、市民が、加害の歴史とどのように向き合ってきたのかを振り返り、その意義とこれからの課題について検討したいと思います。本特集をきっかけに、「過去の克服」をめぐる議論がさらに活発化していくことを期待します。(編集委員会)
  *  特集にあたって 編集委員会
論  説  南京大虐殺をめぐる歴史修正主義と歴史学者
The Struggle between Historians and Revisionists on the Nanjing Massacre
笠原十九司
KASAHARA Tokushi
論  説  日本の市民社会と「慰安婦」問題解決運動
Japanese Civil Society and the Struggle to Resolve the Issue of Japan's Military Sexual Slavery
金  富子
KIM Puja
論  説  日本社会の戦後補償運動と「加害者認識」の形成過程―広島における朝鮮人被爆者の「掘り起し」活動を中心に
Postwar Compensation Campaigns and the Emergence of “Perpetrator Guilt”in Japanese Society
本庄 十喜
HONJO Toki
論  説  比較史研と「過去の克服」
Society for the Study of Comparative History and Coming to Terms with the Past
齋藤 一晴
SAITO Kazuharu
論  説  「過去の克服」と日本の市民社会―東京朝鮮高級学校との交流から
Coming to Terms with the Past and Japanese Civil Society from the Cultural Exchanges with Tokyo Korean High School
魚山 秀介
UOYAMA Shusuke
歴史の眼  知的基盤を奪われた武雄市民―武雄市図書館歴史資料館問題
井上 一夫
文化の窓  資料保全活動の現在―各地の資料ネットから@
吉原 大志
書  評  石井寛治著『帝国主義日本の対外戦略』
武田 晴人
書  評  中野聡著『東南アジア占領と日本人』
荒  哲
  *  東京都教育委員会による高校日本史教科書採択への不当な介入に抗議する歴史研究者・教育者のアピール
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  *  日本軍「慰安婦」問題に関する声明(日本の戦争責任資料センター)
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