『歴史評論』2013年8月号(第760) Historical Journal(REKISHI HYORON) August 2013 vol.760

災害と都市の比較史 “Comparative History in Disasters and Cities”

定価 860円  編集長ブログも随時更新中。


 「3.11」を契機として、災害史研究への関心が高まっています。もちろん、この分野の研究はそれ以前から地道に積み重ねられてきており、その延長線上に現在の災害史研究があります。本特集は、この流れを一層確固としたものにしようと企画されました。
 災害史研究の基本は、現代社会のリジリエンシィ(自己回復)の観点からしても、個別災害の被害実態とその対策・復興の過程を描くことにあります。しかし、それに留まることなく、複数災害への対処や復興の時系列的変化を特定地域において分析する、あるいは災害によって露呈する社会的矛盾が表出する場として都市を位置づけるなど、総じていえば特定テーマの追求に災害事例を意識的に用いるといった、多様な展開が試みられてもよいのではないでしょうか。
 都市は人間が自然のなかに作り出した人工的空間ですから、自然に抗している側面を必ず持ちます。災害史研究が人間と自然の関係史、つまり環境史の一部であるという意味で、都市における災害は、この関係史の端的な局面であるということができます。
 また、本特集は災害史研究における地球規模の比較を試みています。比較という営みをとおして、それぞれの地域の特質を浮かびあがらせることができると同時に、それぞれの研究自体を相対化し、新たな課題を発見することが期待されます。本特集が災害史研究の豊富化を促す契機となれば幸いです。 (編集委員会)
    *  特集にあたって 編集委員会
  論  説  ロンドン大火後の市参事会の活動
The Business of the Court of Aldermen after the Great Fire of London
菅原 未宇
SUGAHARA Miu
  論  説  1563年のイスタンブル大洪水―大河無き都市を襲った水害―
The Deluge of Istanbul in 1563
澤井 一彰
SAWAI Kazuaki
  論  説  1911年江南の水害とその影響
Flood Damage and its Influence in 1911 Jiangnan
堀地  明
HORICHI Akira
  論  説  日本中世の政権都市における震災
Earthquake Disaster in Seats of Government Power in medieval Japan
高橋 一樹
TAKAHASHI Kazuki
  論  説  災害対応と文書行政―江戸における二つの大水害から
Measures against Disasters and Administration of the Edo City magistrate Office in the 18th Century
渡辺 浩一
WATANABE Koichi
私の歴史研究  日本近世農民運動史から生活文化史研究へ
青木美智男
《聞き手》大橋幸泰・野尻泰弘

  書  評  今津勝紀著『日本古代の税制と社会』
亀谷 弘明
  書  評  平田茂樹著『宋代政治構造研究』
宮崎 聖明
  書  評  小野寺史郎著『国旗・国歌・国慶』
遊佐  徹
 

戻る