『歴史評論』2013年7月号(第759) Historical Journal(REKISHI HYORON) July 2013 vol.759

前近代アジアの律令法 “The Ritsuryo Law in the Premodern Asia”

定価 860円  編集長ブログも随時更新中。


 一九九九年、中国寧波市の天一閣にて、宋代の天聖令が発見されました。それまで原本は存在しないとされていた中国の令(行政法)が、はじめて発見されたのです。天聖令には、「不行唐令」として唐開元二五年令と目されるものも記されており、特に日本古代史研究者に大いに注目されました。それまでは、中田薫・仁井田陞・池田温などの中国史研究者が集めた唐令の逸文を、日本の大宝・養老令と比較して日本古代の特質を見出すという方法で、「日唐比較研究」が一部の研究者でなされてきました。天聖令発見後に状況は一変し、「日唐比較研究」はあらたな段階へとステップアップすることとなりました。
 しかしながら律令研究は、日本古代史研究者だけが行うものではありません。かつて西嶋定生が述べたように、律令は、東アジア世界の指標となるもののひとつであり、実際に朝鮮やヴェトナムなど、日本以外の周辺諸国に伝搬・利用されていたことはつとに知られています。史料の制約もあるため、朝鮮史・ヴェトナム史における律令法研究は少ないものの、天聖令が発見されたいま、あらためて前近代東アジアにおいて律令法はどういう意味を持っていたのかということを考えてみる必要があります。
 本特集によって、前近代東アジアにおける律令法の特質や、当該地域の法と社会の関係が明らかになれば幸いです。(編集委員会)
   *  特集にあたって  編集委員会
論   説  中国律令法の変容
From Lu-Ling-Ge-Shi to Chi-Ling-Ge-Shi and beyond
川村  康
KAWAMURA Yasushi
論   説  日本古代の服喪と喪葬令
Mourning and the Statutes on Mourning and Burial in Ancient Japan
稲田 奈津子
INADA Natsuko
論   説  高麗時代の法制について―いわゆる高麗律の存否問題と関連して
YAGI Takeshi, Penal Codes of the Goryeo Dynasty
矢木  毅
YAGI Takeshi
論   説  前近代ヴェトナム法試論―『国朝刑律』再論
An Essay on the Law of Pre-Modern Vietnam
八尾 隆生
YAO Takao
歴史の眼 闘うことの豊穣―金曜官邸前抗議によせて
小田原 琳
ODAWARA Rin
科学運動通信 原始・古代の職人集団展/職人の「わざ」と「カタ」展
亀谷 弘明
KAMETANI Hiroaki
科学運動通信 「歴史資料保全ネットワーク・徳島」の設立
町田  哲
MACHIDA Tetsu
書   評  江村治樹著『春秋戦国時代青銅貨幣の生成と展開』
下田誠
MACHIDA Tetsu
書   評  深谷克己著『東アジア法文明圏の中の日本史』
岸本 美緒
KISHIMOTO Mio
書   評  籠橋俊光著『近世藩領の地域社会と行政』
野尻 泰弘
NOJIRI Yasuhiro
書   評  谷ヶ城秀吉著『帝国日本の流通ネットワーク』
湊  照宏
MINATO Teruhiro
書   評  大門正克編著『新生活運動と日本の戦後』
牛木 純江
USHIKI Sumie
追   想  生きることと学問―吉田晶の歴史学
今津 勝紀
IMAZU Katsunori
    *  2.11集会―各地の記録

 

戻る