『歴史評論』2013年4月号(第756) Historical Journal(REKISHI HYORON) April 2013 vol.756

異文化接触としての日米交流史 “Probing the Cultural Dimension to Japan-U.S. Relations”

定価 860円


 中国・韓国との領土問題に象徴されるサンフランシスコ講和体制の問題や、大河ドラマ「八重の桜」など、外交からポピュラーカルチャーまで、日本社会に対するアメリカの影響は多大なものです。現在においては、国際関係や文化に関して、一国史を越えた他者との出会いを組み込んだミクロな論述は、歴史研究の重要な一角を占めています。
 本特集では、一八七〇年代から一九三〇年代を対象とし、日本人とアメリカ人の間の文化接触を取り上げます。越境的な歴史学の類例に洩れず、その対象とする地域は多様であり、またその範囲も大小様々です。接触領域として、福岡や仙台といった日本の地域社会、ハワイのプランテーションや「満州国」を取り上げました。また、ジェンダーや「家庭性」のみならず、国際交流における多民族の子供、白人の仏教受容、日本人の異人種結婚観などに踏み込んで記述することにより、白人と有色人種、西洋と東洋、キリスト教文明の与え手と受け手といった二項対立を越えた分析を行いました。
 これらの論述は、接触の現場において、日本人・アメリカ人双方の人種意識、自己認識、また日本以外に対するアジア観が、関係性の動態を作り上げてきたことを明らかにしています。アメリカの影響を強く受けてきた日本人が、二一世紀の東アジアの問題を考える上で、多様な日米関係をいま一度問い直す必要があるでしょう。本特集が、この問い直しの一助となれば幸いです。(編集委員会)

   *  特集にあたって  編集委員会
 論  説  エリザベス・プールボーの日本経験
Elizabeth R. Poorbaugh's Japan Experience
 小檜山ルイ
KOHIYAMA Rui
 論  説  日本仏教のハワイ布教と文化変容―ハワイ本派本願寺教団を中心に
Acculturation of Japanese Buddhist Missions in Pre-War Hawaii:
A Case of the Honpa Hongwanji Mission of Hawaii
 守屋 友江
MORIYA Tomoe
 論  説  津田梅子とアメリカ―初の官費女子留学生の一人として
Umeko Tsuda and the United States: One of the First Female
Students Sent to Study in the US by the Japanese Government
 高橋 裕子
TAKAHASHI Yuko
 論  説  アメリカ女性宣教師と大正期福岡
An American Woman Missionary to Fukuoka during the Taisho Period
 千葉 浩美
CHIBA Hiromi
 論  説  日米人形交流から満州国女性使節へ―国際交流における子供の活用
From the Doll Exchange Project between Japan and
the United States to the Girls Delegation from Manchukuo:
The Use of Children in International Exchanges
 是澤 博昭
KORESAWA Hiroaki
歴史のひろば 失敗から何を学ぶか―日米安保・原子力・領土・改憲  岡本  厚
 私の原点 『福島県史 第11巻』(近代資料T)に巡り合う幸運を得て  安在 邦夫
 書  評 三上喜孝・藤森健太郎著『Jr.日本の歴史2』  神谷 正昌
 書  評 中島耕二著『近代日本の外交と宣教師』  李  省展
 

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