『歴史評論』2012年12月号(第752) 定価 860円

2012年 歴史学の焦点


 いうまでもありませんが、歴史学にとって研究史の整理は基本です。いま何が問題で、それはどこまでわかっているのか、従来の研究のどこにどんな問題があるのか、が提示されなければ、その先の研究に進めないからです。私たちの立ち位置を確認し、いま何を問題にするべきかを考えるためには、研究史の整理が欠かせません。
 研究史を振り返って気がつくのは、歴史学は、そのときの社会情勢など、いかに時代の規定性を受けていることが多いかということです。もちろん、それは歴史学が現代との緊張関係を保ってきたことを示しており、その時々の課題にいかに向き合うかを真摯に考えようとしてきた歴史学の姿を表しているということだと思います。
 『歴史評論』では、しばしば「歴史学の焦点」と題して、五年から一〇年くらいのスパンで特定のテーマの研究史を整理し、その先の研究を展望する特集を組んできました。この特集が、いまの歴史学の立ち位置を確認する手段として有効だと考えてきたからです。
 三年ぶりにお届けする今号では、古代東アジア世界、中世鎌倉都市、近現代の天皇、高度経済成長、植民地、をめぐる問題をそれぞれ議論していただきます。今号が、これら個別のテーマに限らずその周辺分野を含め、現在の歴史学の課題について議論が深まる契機になれば幸いです。(編集委員会)
   *  特集にあたって 編集委員会
 論  説  東アジア世界論の現状と展望 廣瀬 憲雄
 論  説  都市鎌倉研究の現在 秋山 哲雄
 論  説  近現代天皇研究の現在 河西 秀哉
 論  説  高度成長期研究の現状と展望 荒川 章二
 論  説  植民地研究の現在―アフリカ史の場合― 永原 陽子
 歴史の眼 2011年度の陵墓立会調査見学 白谷 朋世
 文化の窓 ソウルに住んでいる日本人―ソウルで考えたこと第5回― 君島 和彦
 私の原点 『日本国家の起源』『法と経済の一般理論』『近世奄美の支配と社会』 石上 英一
科学運動通信 シンポジウム歴史教科書 いままでとこれからPART[ 参加記 小川 輝光
金  鉉洙
 書  評 赤羽目匡由著『渤海王国の政治と社会』 浜田久美子
 書  評 遠藤珠紀著『中世朝廷の官司制度』 告井 幸男
 書  評 吉岡拓著『19世紀民衆の歴史意識・由緒と天皇』 奈倉 哲三
 書  評 大庭邦彦・長志珠絵・小林知子著『Jr.日本の歴史6』 繁田 真爾
 書  評 兒玉正昭著『日本人移民ハワイ上陸拒絶事件』 李  里花
 書  評 吉田裕著『兵士たちの戦後史』 福間 良明
 書  評 新村拓著『国民皆保険の時代』 中村 一成
 紹  介 千葉慶著『アマテラスと天皇』 小山  亮
  

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