『歴史評論』2012年11月号(第751) 定価 860円

緊急小特集 現代日本の「ポピュリズム」を問う


 現代日本の政治情勢はいよいよ混迷の度を深めてきました。自民党から民主党への政権交代は国民の変革への期待に何も応えられなかったばかりでなく、福祉を切り捨て、格差をいっそう広げるものにほかなりませんでした。こうした国民の政治不信の一方で、近年強いリーダーシップを発揮する(ように見える)政治家に支持が集まっています。
 しかし、その政治構想には大きな問題が含まれていることもすでに指摘されてきています。それらには、地方分権を唱えながらも、教育現場への露骨な介入などに象徴されるように、個性を尊重する態度は見られません。従来の古くさいナショナリズムに寄り添いつつ、新自由主義のもとに自己責任論を振りかざす強者の論理が見え隠れしています。にもかかわらず、これらが一定の支持を獲得しているのはなぜなのでしょうか。
 編集委員会では、このような状況に強い危機感を覚え、すでに計画済みの特集を一号ずつ先送りしてでも緊急にこの問題を扱うべきだという結論に達しました。現代日本の「ポピュリズム」はどのような歴史的特徴を持っており、そこにはどんな問題点が含まれているのでしょうか。そして、私たちはどのような選択をするべきなのでしょうか。この緊急小特集が、現代史のターニングポイントであるいま≠知り、望ましい未来を展望するための手がかりとなれば幸いです。(編集委員会)
 
      *  特集にあたって 編集委員会
   論    説  「維新」と「ポピュリズム」 平井 一臣
   論    説  教育の地方自治と大阪現象 荒井 文昭
   論    説  「ポピュリズム」の支持構造 ―有権者調査の分析から― 松谷  満
 第46回大会準備号
 世界史認識と東アジアV
大会テーマの設定にあたって 全国委員会
  【第1日目 現代日本政治の岐路と東アジア】
新段階に入った日本政治と東アジア
渡辺  治
  【第1日目 現代日本政治の岐路と東アジア】
現代沖縄民衆の歴史意識と主体性
戸邉 秀明
  【第2日目 伝統社会における貧民救済】
幕末・維新期、江戸の周縁と民衆世界
吉田 伸之
  【第2日目 伝統社会における貧民救済】
飢人救済をめぐる公権力と地域社会 ―天保飢饉下の八戸藩―
菊池 勇夫
  【第2日目 伝統社会における貧民救済】
中国における「救荒史」研究をめぐって
高橋 孝助
  歴史のひろば  現代史を考えるための若干の考察 高江洲昌哉
   書    評  市沢哲著『日本中世公家政治史の研究』 丸山 裕之
   書    評  鹿毛敏夫著『アジアン戦国大名大友氏の研究』 村井 章介
   書    評  大石学著『Jr.日本の歴史 5』 水村 暁人
   書    評  住友陽文著『皇国日本のデモクラシー』 小路田泰直
   紹    介  奥村弘著『大震災と歴史資料保存』 宇野 淳子
   紹    介  山田朗・渡辺賢二・齋藤一晴著『登戸研究所から考える戦争と平和』 平井雄一郎
      * 加盟組織の活動報告    *
      * 加盟組織の機関誌案内    *
  

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