『歴史評論』2012年9月号(第749) 定価 860円

特集 いま、歴史教育は何をめざすのか


そもそも歴史教育は何を目指すべきでしょうか。教育一般に関して言えば従来の知識偏重型教育、暗記中心の教育ではなく、国際社会の変化に即応できる生きた学力・考える力をつける教育を求める声が高まっています。こうした動向の中で、歴史教育の現状はどのようになっているのでしょうか。「歴史は暗記するものではなく考えるものだ」という主張は以前から歴史教育の中でなされてきたものです。政府は国際化社会に対応するとして、いち早く高校で世界史を必修科目としました。ところが現実には依然歴史は暗記モノという常識はまかり通っており、世界史未履修問題も起こってしまいました。
このような状況の中、昨年日本学術会議は世界史未履修問題をはじめ歴史教育の抱えるさまざまな課題を解決すべく新しい地理・歴史教育に関する提言を発表しました。その提言はどのようなもので課題は何でしょうか。また、別の視点から「グローバル化」の中で今どのような歴史教育が求められているのか考えてみる必要もあるでしょう。
本特集はこのような問題意識から「グローバル化」への対応が求められる時代の歴史教育の問題について、特に「歴史を考える力」を中心に検討するものです。歴史学・教育現場・教育学それぞれの立場から発言していただきました。本特集をきっかけに議論が活性化することを期待します。(編集委員会)
    *  特集にあたって   編集委員会
  論  説  グローバル化の時代における歴史教育の対話
―往復書簡から―
  大門 正克
  戸川  点
  論  説  学術会議の歴史基礎案
―世界史未履修問題への対応をめぐって―
  久保  亨
  論  説  高校歴史教育の改革と思考力育成   油井大三郎
  論  説  歴史の学びの原初的形態へ   野口  剛
  論  説  歴史を考える力としての学力の構造
―「仮説性」という概念を介して歴史認識の学力を考える―
  佐貫  浩
 歴史の窓  初めての天皇陵立ち入り観察
―誉田山古墳(宮内庁呼称応神天皇恵我藻伏崗陵)内堤表面観察調査の報告と意義―
  森岡 秀人
 私の原点  首長制社会論の原点   鈴木 靖民
科学運動通信 シンポジウム「遠山史学と歴史学の現在」に参加して   飛矢崎貴規
科学運動通信 アメリカ国際シンポジウム
―「荘園制を再考する:中世日本の社会と経済」参加記―
  木村 由美子
  書  評 橋本義則著『古代宮都の内裏構造』   遠藤みどり
  書  評 樋口健太郎著『中世摂関家の家と権力』   松薗  斉
  書  評 田中達也著『中近世移行期における東国村落の開発と社会』   小酒井大悟
  書  評 浅田進史著『ドイツ統治下の青島』   小池  求
  書  評 堀井弘一郎著『汪兆銘政権と新国民運動』   柴田 哲雄
  紹  介 山田昭次著『関東大震災時の朝鮮人虐殺とその後』   小薗 崇明
  紹  介 エメ・セゼール著『二グロとして生きる』   尾崎 文太
   * 大阪人権博物館・大阪国際平和センターの補助金削減・廃止に反対する声明  日本史研究会
 歴史学研究会
 歴史科学協議会
歴史教育者協議会
  

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