『歴史評論』2012年2月号(第742) 定価 860円

特集 日米同盟と憲法九条

 
 「三・一一」の大震災・原発事故によって戦後日本のあり方が根本的に問われているが、政治の混迷をついて「時代閉塞」状況を反動的に打開しようとする動きもあらわれている。歴史の激動期、転換期に際して、主権者にふさわしい国民の歴史認識を鍛え、育てるため、それに応えうる歴史研究者としての努力と探究が求められている。
 「三・一一」以後においても日米同盟と憲法の矛盾が問題となっている。それは現代認識の根幹にかかわる問題である。本特集は、二〇〇四年に生まれた「関西歴史九条の会」の最近二年間の議論をふまえて企画された。具体的には、特集の背景と意図を論じた上で、巨大マス・メディア(朝日新聞)における政治的地殻変動の軌跡、アメリカ側から見た「日米同盟」の意味と狙い、戦後日本の代表的思想家・加藤周一が「九条の会」に全力投入した意味、新たな共同性の表出である大阪の市民運動と三重の反原発運動の検討、などの内容からなる。全体として世界史の流れから孤立する日本の現状とそれに対峙する思想と運動の現在を考究することを目的としている。
 本誌特集を素材として、われわれがいま何を考え、何をなすべきか、議論が広がることを期待したい。(編集委員会)
   *  特集にあたって 編集委員会
 論   説 時代閉塞の現状と打破の模索 広川 禎秀
 論   説 マス・メディアにおける普天間問題と日米同盟、憲法九条
 ―朝日新聞「社説」を中心に―
上野 輝将
 論   説 日米関係「再生(Reviving)」構想が描く21世紀の世界
 ―ケント・E・カルダーの著作をもとに―
小林 啓治
 論   説 加藤周一と「九条の会」 古市  晃
 論   説 「九条の会」運動と若手歴史研究者 西尾 泰広
松岡 弘之
 歴史の眼 長野県北部震災と文化財保全活動 白水  智
 文化の窓 戦後歴史学の「現場」に立つ
 ―現場に立って考えるE―
木村 茂光
 書   評 老川慶喜著『近代日本の鉄道構想』 高嶋 修一
 書   評 根本敬著『抵抗と協力のはざま』 佐藤いづみ
 追   想 「たたかわなければ、真実は守れない…」
 ―耳に残る遠山茂樹氏の声―
丸浜  昭
 追   想 安田浩さんの逝去を惜しむ 大門 正克
   * 2012年度歴史科学協議会総会報告   *
  

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