『歴史評論』2012年1月号(第741) 定価 860円
特集 世界史論の現在
近年の「社会科世界史60年」をめぐる論議は、戦後の「世界史論」の歩みの到達点と課題を明らかにしました。さらに、それは今後の世界史認識の在り方や世界史教育の方向性を見定めようとする地道な研究・実践に引き継がれています。
たとえば、戦後から今日まで高校世界史教育や大学の歴史教育の現場では、文字通り「グローバルな視点・視野で世界の歴史の歩みを捉える」試みがなされてきました。現在もこの視点からの実践が多様なスタイルで行なわれ多くの成果を挙げてきています。これは欧米中心史観を克服する世界史認識方法の一つとも言えるでしょう。また全体史やネットワーク論などの研究にグローバルな射程を持つものがみられます。
しかし、昨今のこうした状況の下で、そうした世界史の捉え方とは異なる雰囲気・意図をもった「グローバル・ヒストリー論」が姿を見せ始めました。この世界史論は、「戦後歴史学」批判や「国民国家」の相対化を課題とするものですが、新自由主義と親和性を持つものであるとの指摘もあります。
本特集では、世界が金融・資本・労働力などのグローバル化の進展によって大きく規定されているかのように映る時代状況の中で、どのような世界史論が求められているのかを、新自由主義的グローバル化に批判的な論者に考えていただきました。果たして、いかなる世界史論が浮かび上がってくるのでしょうか。(編集委員会)
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新たな展望を切り開くために |
糟谷 憲一 (代表理事) |
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特集にあたって |
編集委員会 |
論 説 |
人類が見た夜明けの虹 ―地域からの世界史・再論― |
板垣 雄三 |
論 説 |
グローバルヒストリー雑感 ―政治文化史と民衆運動史の視点から― |
趙 景達 |
論 説 |
資本の地理的不均等発展 ―新自由主義的グローバル化への批判と資本主義論― |
大屋 定晴 |
論 説 |
世界史論の歩みからみた「グローバル・ヒストリー論」 |
近江 吉明 |
投 稿 |
戦国大名浅井氏の菅浦支配 |
銭 静怡 |
歴史のひろば |
日露戦争研究と『坂の上の雲』 ―吉村昭氏の作品とともに― |
松村 正義 |
私の原点 |
高校から大学の先生たち |
保立 道久 |
書 評 |
伊藤俊一著『室町期荘園制の研究』 |
井原今朝男 |
書 評 |
水野邦彦著『抵抗の韓国社会思想』 |
渡引 禮 |
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2011年『歴史評論』総目次 |
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