『歴史評論』2011年11月号(第739) 定価 860円

特集 戦争と平和のアーカイブズ/大会準備号

 本特集は、歴史研究の精度と検証可能性を高める記録、およびその共有化を担うアーカイブズ学の役割を確認することで、戦争や平和のあり方を多面的に理解しようとする試みです。
 戦争以前の記録は、戦闘、敵対国による押収、意図的な隠匿によって本来あるべき場所から持ち運ばれ、あるいは破壊されてきました。こうした記録の消失は、戦争以前の人間の営みを理解する際の強い制約となります。そしてこれは、戦争を直接の分析対象とする研究だけでなく、歴史研究全般の推進をも阻害する問題となっています。一方、戦争によって新たな記録が生み出されたという側面も見逃せません。戦闘報告などの純軍事的な記録はもちろん、一般市民の戦争体験や平和運動もまた記録化されています。これまでの歴史研究は、戦争による記録の消失という困難を乗り越え、戦争によって新たに生み出された記録を用いることで戦争という人類の過ちを検証してきました。
 しかし、現在までに収集・利用された戦争記録は、戦争を多面的に捉えるうえで量的にも質的にも十分とはいいがたい状況にあります。戦争を歴史的により深く理解するためには、戦争記録のさらなる公開と共有化が必要とされています。
 以上の問題意識から本特集は、記録のコンテクストを重視するアーカイブズ学の視点から戦争と平和のあり方を捉えなおすことに努めました。記録を土台とする歴史学の原点に立ち戻り、その重要性を改めて認識する機会となれば幸いです。    (編集委員会)
     *    特集にあたって 編集委員会
   論   説   原爆・核実験被害関係資料の現状 ―ABCC・米軍病理学研究所・米原子力委員会― 高橋 博子
   論   説   太平洋戦争の開戦と在豪日系企業記録 和田 華子
   論   説   歴史記録としての戦争体験 ―口述記録の証拠性と公開性をめぐって― 加藤 聖文
   論   説   沖縄県伊江島の反戦平和アーカイブズ ―阿波根昌鴻資料調査会の活動― 安藤 正人
   論   説   日本軍占領下「蘭領東インド」の記憶と記録 ―オランダにおける「戦争の遺産」の記録化プロジェクト 前川佳遠理
第45回大会準備号
《世界史認識と東アジアU》
大会テーマの設定にあたって 全国委員会
第45回大会準備号
《世界史認識と東アジアU》
〈大会第1日目〉「移行期における東アジア認識」
一二世紀日本仏教の歴史的位置
上川 通夫
第45回大会準備号
《世界史認識と東アジアU》
〈大会第1日目〉「移行期における東アジア認識」
織豊期王権の成立と東アジア
堀   新
第45回大会準備号
《世界史認識と東アジアU》
〈大会第2日目〉東アジアにおける支配・統合と地域社会
生成する地域・地域意識 ―清末中国の地方社会―
山田  賢
第45回大会準備号
《世界史認識と東アジアU》
〈大会第2日目〉東アジアにおける支配・統合と地域社会
疾病・医学・医療の歴史と地域社会 ―近代日本のハンセン病問題を中心に―
廣川 和花
第45回大会準備号
《世界史認識と東アジアU》
〈大会第2日目〉東アジアにおける支配・統合と地域社会
中国における支配の正当性論理と社会
三品 英憲
   私の原点 宇都宮清吉「僮約研究」 渡辺信一郎
     * 加盟組織の活動報告    *
     * 加盟組織の機関誌案内    *
  

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