『歴史評論』2011年7月号(第735) 定価 860円

通史を読みなおす―歴史学の「間口」と「奥行き」2


 先月号に引き続いて、特集「通史を読み直す」をお届けします。これまでくりかえし刊行されてきた日本史の通史シリーズをとりあげ、さまざまなテーマに沿って読み直してみたいと思います。
 戦後の歴史学は、研究を支える問題意識だけではなく、成果の還元といういう面でも、社会の現実とのかかわりを強く意識してきました。その一つのあらわれとして、一般読者向けにわかりやすく書かれていながらも、学問的水準は高い歴史書がたくさん世に送りだされてきたことを指摘できます。それぞれの時代の研究者が、各巻を分担して執筆するというスタイルの通史シリーズは、その代表的なものだと言うことができるでしょう。とすれば、専門家ではない人々にも読みやすい歴史学の「間口」ともいうべき本を通じて、研究状況や歴史叙述のあり方といった歴史学の「奥行き」の風景のうつりかわりをたどることができるのではないか、というのが本特集の出発点となった着想です。
 今月号では近世史・近現代史のさまざまなテーマを軸に、通史シリーズを検討します。歴史書の論理や叙述を充分に理解し味わうためには、研究史や研究状況の理解が重要になってきます。しかし、これから歴史学を学ぼうとしている学生や歴史教育関係者といった、歴史に強い興味・関心を持っている人にとっても、それは簡単なことではないでしょう。本特集がそうした読者をより深い歴史書の楽しみに誘うきっかけとなれば幸いです。(編集委員会)
   *    特集にあたって 編集委員会
 論  説   通史でみる日本近世史像・近世社会論の変容―一八世紀を中心に― 須田  努
 論  説   近世朝幕関係論 堀   新
 論  説   幕末維新史と戊辰戦争 箱石  大
 論  説   通史叙述にみる近代日本の戦争と軍隊 本庄 十喜
 論  説   「昭和史」を書くということ 源川 真希
 論  説   高度経済成長の捉え方―その歴史的位置― 沼尻 晃伸
 投  稿   中世東国寺社領の成立と展開―円覚寺黄梅院領の場合― 佐藤 博信
 書  評   市大樹著『飛鳥藤原木簡の研究』 亀谷 弘明
 書  評   本田秀人著『近世都市熊本の社会』 吉村 豊雄
 書  評   小野沢あかね著『近代日本社会と公娼制度』 今西  一
 書  評   本間千景著『韓国「併合」前後の教育政策と日本』 崔  誠姫
 書  評   山本進著『環渤海交易圏の形成と変容』 小瀬  一
 紹  介   島田法子・中嶌邦・杉森長子著『上代タノ』 影山 }子
   *   二.一一集会―各地の記録A(宮城) 柳原 敏昭
  

戻る