『歴史評論』2011年3月号(第731) 定価 860円
近世村落史研究の現在
村に伝存する膨大な量の史料を用いて行われる近世村落史研究は、村が近世社会を構成する中心的な要素ということもあって、近世史研究において重要な位置を占めてきました。しかし、かつてと比べて、村落史研究への関心は相対的に低下しているのではないでしょうか。その理由はさまざまあると思いますが、村落史研究の深化にともないテーマが細分化し、近世史全体の問題として位置づけづらくなったことや、近年の研究視角の多様化により、これまで注目されなかった社会の細部へと研究の視点が移ったことなどが考えられます。また、情報技術の急速な進展によって、地方の均一化が著しいこと、従来イメージされたような村の生活や社会が多くの人びとにとって身近でなくなってきたこともあるでしょう。
このような現状を踏まえ、本特集では、近世村落史研究の歩みを見つめ直し、これからの研究を展望する論考をお寄せいただきました。多くの論点が出されてきた地域論や民衆運動史、中近世および近世近代移行期、研究のベースになる史料自体への眼差しなど、各論考は研究の到達点と今後の研究課題を提示しています。
本特集をきっかけに村落史研究はもちろんのこと、他分野との議論が活性化し、近世史研究全体がより活発に展開することを期待します。また、これから近世史研究を始めようとする皆さんの手引きになれば幸いです。(編集委員会)
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特集にあたって |
編集委員会 |
論 説 |
近世村落史研究の課題を考える ―地域社会論と民衆運動史― |
渡辺 尚志 |
論 説 |
「近世村落史料学」を考える |
神谷 智 |
論 説 |
中近世移行期の村をどうとらえるか |
小酒井大悟 |
論 説 |
近世地域史研究の潮流 |
野尻 泰弘 |
論 説 |
近世・近代移行期村落史研究の諸課題 |
松沢 裕作 |
投 稿 |
鈴木貫太郎内閣期における国家意志形成システム構築の試み ―水面下での意見調整とその限界― |
関口 哲矢 |
歴史のひろば |
中世天皇論の位相 ―河内祥輔『日本中世の朝廷・幕府体制』を読む― |
近藤 成一 |
科学運動通信 |
歴史教育シンポジウム「「韓国併合」一〇〇年と歴史教育」参加記 |
木村由美子 |
書 評 |
加藤正彦・八耳文之編『黒羽清隆歴史教育論集』 |
滝澤 民夫 |
紹 介 |
学校法人日本医科大学創立百三十周年記念写真集出版委員会編 『目で見る 学校法人医科大学百三十年史』 |
平井雄一郎 |
紹 介 |
是澤博昭著『青い目の人形と近代日本』 |
小檜山ルイ |
追 想 |
林基さんはなにをしたのか |
深谷 克己 |
追 想 |
林基氏の生涯を振り返って |
斎藤 純 |
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