『歴史評論』2011年2月号(第730) 定価 860円

21世紀に歴史学を考える


 「新自由主義」を鼓吹していた米国から世界的な不況がひろがって以来、多くの国で政権が不安定になったり、財政・雇用の悪化により争議が続発したり、「新自由主義」を代弁していたWTO(世界貿易機関)が途上国の拒否で機能しなくなったりしています。また、自然破壊によるつけが温暖化や異常気象となって、世界各地に災害をもたらしています。この暗転した二一世紀の様相から、人類社会の未来をおもんばかる声が聞かれます。このような状況は、世界史のどのような段階のものとして位置付けられるのでしょうか。現代は科学技術の大発展の時代ですが、歴史観にも影響するような変化が起っているのかもしれません。
 本特集号はこれらの課題に応えるため、経済理論、社会思想、脳科学・人類学などの人間諸科学、国家のあり方を規定する憲法、の四つの方向から論究をお願いしました。ソ連社会の構造的分析、歴史的に社会運動の中心概念だった「アソシエーション」の現代的意義の考察、「下部構造」といわれてきた概念の再検討が行われます。そして、この流動化する二〇一〇年代の世界のなかで、日本のあり方を集約する憲法問題が論じられます。
 歴史学とは異なる分野からの提言を交えて、人類社会の未来を展望する議論が喚起されることを期待します。(編集委員会)
   *    特集にあたって 編集委員会
  論  説   ソ連の社会は資本主義だった 大谷禎之介
  論  説   歴史の中のアソシエーション 田畑  稔
  論  説   現代科学の成果に立って「下部構造」の経済一元論を脱却する 井本 三夫
  論  説   二〇一〇年代の憲法問題と内外情勢 柴山 敏雄
 投稿論文  聖レオナール崇敬の創出と奇蹟(11〜12世紀)  ―平和の守護聖者から戦士の守護聖者へ― 小野 賢一
歴史のひろば 市民講座「新聞記者から見る歴史像の現在」  ※2010年10月30日開催の市民講座講演内容 渡辺 延志
 文化の窓 「ムラの戸籍簿」研究会の可能性  ―現場に立って考える@― 木村 茂光
科学運動通信 第二九回「陵墓」限定公開 奈良市コナベ古墳(小奈辺陵墓参考地)の調査見学記 森岡 秀人
白谷 朋世
  書  評 太田幸男著『中国古代史と歴史認識』 小嶋 茂稔
  紹  介 藪田貫編著『大坂西町奉行新見正路日記』 大橋 幸泰
  紹  介 伊藤るり・坂元ひろ子・タニ・バーロウ編『モダンガールと植民地的近代』 池川 玲子
  紹  介 ダン・トゥイー・チャム著/高橋和泉訳『トゥイーの日記』 井本 三夫
  紹  介 加賀美雅弘・川手圭一・久邇良子著『ヨーロッパ学への招待』 堀口 詩織
  

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