『歴史評論』2010年7月号(第723) 定価 860円

60年安保から半世紀


 一九六〇年、当時の岸信介内閣が、日米安全保障条約の改定を断行したことは、多数の国民の反発を招き、安保闘争と呼ばれる全国的な運動が激しく展開されました。当時実際に運動の隊列に加わった方はもちろん、歴史としてのみ知る者からみても、この闘争が日本の戦後史の大きな画期をなすことは、容易に実感できることでしょう。この年には、安保闘争のほかにも、日本社会党と民主社会党の分裂、浅沼社会党委員長の遭難、総資本対総労働の戦いと言われた三井三池争議の終焉、「風流夢譚」事件など、その後の日本のあり方に大きな影響を与えた事件を多く経験しましたが、「六〇年安保」という言葉はこれらの歴史的な出来事をも包み込んで一九六〇年という画期的な一年を象徴しているようにも感じられます。
 その画期的な年から半世紀が経ちました。五〇年経っても日米安保条約と在日米軍基地が厳存するという現実を踏まえつつ、改めて、六〇年安保の持つ歴史的意味を考えてみたいと思います。
 また、安保闘争には多くの歴史研究者が主体的に参加しました。運動の体験は、研究者個人のみに関わらず、その後の日本の歴史学界全体に対しても一定の作用があったと思われます。今回の特集によって、六〇年安保の経験を参照することで、私たち一人ひとりが、主体と研究との関わりを考え直す契機になれば、と思います。(編集委員会)
    * 特集にあたって  編集委員会
  論  説 安保闘争の戦後保守政治への刻印  渡辺  治
  論  説 日本社会党と安保闘争  岡田 一郎
  論  説 「六〇年安保」と労働者の運動  三宅 正明
  論  説 戦後歴史学と「国民」  谷川 道雄
歴史のひろば 日韓中西洋古代史学界の交流と動向  高橋 亮介
歴史のひろば 韓国における西洋古代史研究  ―「韓国西洋史学会五〇周年記念」によせて―  金  悳洙
(翻訳 高橋亮介)
最近考えたこと 映画『カティンの森』で考える  井本 三夫
科学運動通信史 「「大逆事件」処刑第一〇〇回追悼集会」に参加して  林   彰
  書  評 西本昌弘著『日本古代の王宮と儀礼』  稲田奈津子
  書  評 市川理恵著『古代日本の京職と京戸』  中村 修也
  書  評 井上寛司著『日本中世国家と諸国一宮制』  畠山  聡
  書  評 稲葉継陽著『日本近世社会形成史論』  竹井 英文
  書  評 三木理史著『局地鉄道』  恩田  睦
  書  評 是澤博昭著『教育玩具の近代』  太田 素子
    * 二.一一集会各地の記録 宮城の記録  中野  良
    * 二.一一集会各地の記録 奈良の記録  杉田  義
  

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