『歴史評論』2010年5月号(第721) 定価 860円

第43回大会報告特集/世界史認識と地域史の構想V



 グローバリズムと新自由主義が世界を席巻している現実に向き合いながら、地域の視点を世界史認識につなげていきたい。歴史科学協議会はそういう思いをこめて、二〇〇七年からの三年間、「世界史認識と地域史の構想」を大会テーマに掲げて議論してきました。しかしこの三年間に国内外情勢は大きく動きました。グローバリズムと新自由主義の矛盾が露わになり、それに対する民衆の不満を背景として、アメリカでも日本でも政権が交替しました。新たな状況を踏まえて開催された第四三回大会(二〇〇九年一一月一四日・一五日、早稲田大学)での報告と討論を、特集してお届けします。
 大会の第一日目は、前回にひきつづいて「グローバリズム・新自由主義と歴史学の課題」をテーマとして、二〇〇八年世界経済危機を一九二九年大恐慌と比較して論じる報告と、グローバル化による国家・地域の再編と対抗軸の形成を論じる報告を得て、討論が行われました。
 第二日目は、前回のテーマ「人びとの生きる場としての地域」を引き継ぎつつ、今回は「労働・生活の場としての地域」をテーマとして、「労働の場」としてみる視点を追加し、中世の地域社会、近世の労働社会、近代の失業対策に関する報告を得て、討論が行われました。
 この三年間の大会での成果を踏まえて、さらに議論が深められていくことを期待したいと思います。 (編集委員会)
      *     特集にあたって  編集委員会
    論  説 《第一日目テーマ グローバリズム・新自由主義と歴史学の課題V》
  二〇〇八年世界経済危機の歴史的性格
 萩原伸次郎
    論  説 《第一日目テーマ グローバリズム・新自由主義と歴史学の課題V》
  グローバル化と国家・地域の再編 ―現代日本の歴史的位置―
 岡田 知弘
      * 《グローバリズム・新自由主義と歴史学の課題V》報告へのコメント  五十嵐 仁
 大会第一日目討論要旨                   *  千地 健太
    論  説 《第二日目テーマ 労働・生活の場としての地域》
  中世前期における民衆の地域社会 ―地域・村落の〈名士〉層と荘園制―
 田村 憲美
    論  説 《第二日目テーマ 労働・生活の場としての地域》
  日本近世における労働社会の構造
 森下  徹
    論  説 《第二日目テーマ 労働・生活の場としての地域》
  失業対策の意図と帰結 ―近代日本の経験から―
 加瀬 和俊
 大会第二日目討論要旨                   *  鈴木 織恵
第四三回大会報告を聞いて 萩原・岡田報告を聞いて  伊藤 正直
第四三回大会報告を聞いて 殿原層と地域  ―田村兼備報告によせて―  蔵持 重裕
第四三回大会報告を聞いて 森下報告を聞いて  後藤 雅知
第四三回大会報告を聞いて 加瀬報告を聞いて  高岡 裕之
 第四三回大会参加記                   *  川本 愉彦
 第四三回大会参加記                   *  中村 只吾
  科学運動通信 二〇〇八年度の陵墓立会調査の初見と立会調査の意義  森岡 秀人
 白谷 朋世
  科学運動通信 シンポジウム「陵墓公開運動三〇年の総括と展望」参加記  川合 奈美
  

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