『歴史評論』2010年2月号(第718) 定価 860円

特集/フランス革命は「終わった」のか?


 かつて、フランソワ=フュレはフランス革命二〇〇周年前後に「フランス革命は終わった」と発言し、革命史研究の在り方や、主にパリ第一大学「革命史講座」が作り上げたとされる革命像を批判し世界の人々の耳目を驚かしました。それから二〇年が経ち、しかし日本では、研究現場は言うに及ばず、歴史教育、出版、演劇、映画などの場においても一定の伝統的評価を伴った「フランス革命」像がその輝きを失うことなくいそがしく活躍し、多くの人々の関心を惹きつけています。
 本特集ではそうした現状に鑑み、その後のフランス革命史研究の動向を確認するとともに、革命家・民衆蜂起・戦争・植民地といった視点からの分析よってあらためて検討し、フランス革命に関する多様な言説や、記憶として提示されるいくつかの革命像の現在を確認しつつ、今後の革命史研究の方向性を展望することにしました。
 さらに歴史小説や映画が描く革命像のそれぞれの特徴を同じ土俵の中で比較することも大事な作業です。作家・佐藤賢一氏のフランス革命との係わりには、革命の「磁力」の発散が窺われます。また、シナリオの無いドラマの連続ともいわれる革命展開や、革命家や民衆のあるがままの発言・行動を飾りけなしに見せてくれる「ベルンシュタイン文庫」の新史料にも注目したいと思います。
 はたして、本特集からどのような革命像が飛び出してくるのでしょうか。 (編集委員会)
  *     特集にあたって  編集委員会
 論 説 『小説フランス革命』の刊行を開始して  佐藤 賢一
 論 説 サンジュストにおける政治と暴力  山崎 耕一
 論 説 フランス革命期における秩序正しい暴力 ―ノール県ウプリヌHoupline村食糧騒擾の事例から―  佐藤 真紀
 論 説 戦時下のフランス革命 ―銃と自由―  西願 広望
 論 説 二〇〇周年以降のフランス革命研究の現状 ピエール=セルナ
(山崎耕一訳)
 コラム 「ベルンシュタイン文庫」史料群に迷い込んで  近江 吉明
 コラム フランス革命とハイチ ―最近の研究動向から―  浜  忠雄
 コラム フランス革命と映画  西願 広望
歴史の眼 「つくる会」教科書採択問題を考える ―杉並区を中心に―  山本 直美
文化の窓 連載/「郷土と「偉人」 ―熊本と横井小楠(1)―  猪飼 隆明
 書 評 山村亜希著『中世都市の空間構造』  小島 道裕
 書 評 平井上総著『長宗我部氏の検地と権力構造』  池  享
 書 評 妻鹿淳子著『近世の家族と女性』  大黒 恵理
 書 評 槇蒼宇著『植民地期朝鮮の警察と民衆世界一八九四―一九一九』  松田 利彦
 紹 介 横山伊徳・石川徹也編著『歴史知識学ことはじめ』  岡本 隆明
  

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