『歴史評論』2010年1月号(第717) 定価 860円
特集/藩政改革の思想
「改革無くして成長無し」とは、小泉政権のスローガンでした。しかし、その「改革」は中途半端に終わり、「格差社会」という大きなひずみを残しました。政権は交代しましたが、新政権も「改革」の旗印を掲げています。いったい「改革」とは何でしょうか。その意味をあらためて問い直すべきだと思います。
本特集では、近世中期以降の藩政改革をとりあげました。それは、商品流通・貨幣経済が進展し、石高制に基礎をおく領主経済との矛盾が顕著になり、また、東北地方を中心に大きな饑饉が繰り返し、「藩」という枠組みをゆさぶった時期です。これらの危機に対応して改革が行われました。
これまで藩政改革に対しては、藩権力による体制再編にすぎず、支配・収奪の強化につながったという評価がある一方、「明君(名君)」や「賢宰」の強いリーダーシップや人材登用・人心刷新などの諸政策への高い評価があります。この二つの評価は相反するものではなく、いわばメダルの表裏といえるでしょう。
では、どのようにすれば総合的に改革を捉えることができるでしょうか。それには、改革の実態を明らかにすると同時に、領主の意識・思想に踏み込んだ考察が必要だと考えます。そこで本特集では藩領主の意識・思想に焦点をあて、改革の光と影≠浮き彫りにしようと試みました。本特集が藩研究・藩政改革研究の新たな論点を提起するものとなれば幸いです。(編集委員会)
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年頭にあたって |
梅村 喬(代表理事) |
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特集にあたって |
編集委員会 |
論 説 |
藩政改革像の再構築―熊本藩宝暦改革を中心に― |
吉村 豊雄 |
論 説 |
改革主体の学問受容と君主像―米沢藩家老竹俣当綱の読書と政治・思想実践― |
小関 悠一郎 |
論 説 |
近代化、近代性と名君像の再検討 |
マーク・ラヴィナ (杉 岳志訳) |
論 説 |
越後長岡藩儒・秋山景山の天保改革構想 |
小川 和也 |
論 説 |
雄藩の藩政改革と専売制 |
山形 万里子 |
投稿論文 |
長沢別天の人種競争論―1891年〜93年の在米経験をてがかりに― |
水野 守 |
書 評 |
永原慶二著『永原慶二著作選集』(全10巻) |
杉山 厳 児島 貴行 呉座 勇一 佐藤 雄基 十河 靖晃 |
書 評 |
渡辺尚志編著『近代移行期の名望家と地域・国家』 |
高久 嶺之介 |
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2009年『歴史評論』総目次 |
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