『歴史評論』2009年10月号(第714) 定価 770円

特集/鎌倉時代をどうとらえるか



 鎌倉時代史研究は、ここ二〇年ほどのあいだに大きく深化し、新たな研究領域を展開しつつあります。それは、一九七一年に刊行が開始された編年史料集『鎌倉遺文』が一九九一年に完結したこと、鎌倉時代の古文書、古記録の全文データベース公開が進められていることなど、鎌倉時代史研究の史料的環境の充実がもたらしたものであることは間違いありません。
 それとともに、戦後長らく鎌倉時代史研究に大きな影響を与えてきた「領主制論」の見直しが進むなかで、公家社会研究、東アジア史研究の進展など鎌倉時代を捉える視角は多様化し、政治史・制度史などの鎌倉時代の政治・社会を捉える基礎的な研究も活発となりました。
 しかしながら、そうした鎌倉時代史研究を総括する試みはあまり行なわれていません。鎌倉時代をどうとらえるか。本特集では、現段階での鎌倉時代史研究の現状と課題を明らかにすることを目的に、以下の論考を寄せていただきました。まず、近年特に活発な鎌倉時代後期の政治史研究、地頭制・御家人制研究、朝廷制度史研究です。そして従来から多くの研究蓄積のある荘園制研究・百姓論については、現状をふまえ新たな研究の方向性を示していただきました。
 鎌倉時代史研究はここで取り上げたものにとどまりませんが、本特集をきっかけとして、さらに議論が活発化することを期待したいと思います。(編集委員会)
    *     特集にあたって 編集委員会
  論  説   鎌倉幕府後期政治史研究の現状と課題 細川 重男
  論  説 地頭制・御家人制研究の新段階をさぐる 高橋 典幸
  論  説 鎌倉時代の朝廷制度史研究 遠藤 珠紀
  論  説 鎌倉時代の立荘と村落形成―日根荘日根野村の誕生をめぐって― 海老澤 衷
  論  説 「式目四二条」を読み直す―中世百姓論の深化のために― 木村 茂光
  投  稿 鎌倉幕府の戦死者顕彰―佐奈田義忠顕彰の政治的意味― 田辺  旬
 歴史のひろば ケルン市歴史文書館の倒壊とその後―復興への道筋と「市民アーカイブ」構想― 平松 英人
井上 周平
  文化の窓 おもちゃ箱のなかの戦争―歴史学とサブカルチャーF― 北條 勝貴
 科学運動通信 百舌鳥御廟山古墳(大阪府堺市)の「限定公開」参加記 森岡 秀人
白谷 朋世
  紹  介 財団法人満鉄会編『満鉄四十年史』 千葉 正史
    * 自著『歴史学と歴史教育の構図』のための弁明 今野日出晴
  

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