『歴史評論』2009年8月号(第712) 定価 770円

特集/基地問題・平和運動の歴史と現在


 二〇〇八年九月二五日、横須賀に原子力空母ジョージ・ワシントンが入港し、横須賀を母港として、西太平洋から中東までを戦略的視野に置いた活動が開始されました。しかし同空母入港当日の反対行動参加者は、わずかに三五〇名と報じられています。また原子力空母が日本の港を母港とすることの問題点を大手マスコミで報じたのは、「東京新聞」(同月二三日から三回)だけでした。かつてなら、原子力空母の寄港だけでも世論が大きく動きました。今回は単なる寄港ではなく母港化だというのに、マスコミも国民もそれに大きな関心を払うことなく、事態が推移しようとしています。
 しかしそもそも、米軍空母の母港化というのがどういう問題なのかについて、私たちの認識は十分でしょうか。それが十分でないとすれば、私たちはまず「知る」ことからはじめる必要があるのではないか、と考えてこの特集を組みました。アメリカ軍の軍事力の全体構造を知ることで、日本に置かれている基地の位置を知ることができると思います。
 もう一つ、「知る」必要があるのは、私たち自身の平和運動の経験についてです。私たちはこんな運動を経験してきたんだということを知ること、私たちが経験してきた運動が歴史のなかでどういう役割を果たしてきたのかを知ることは、私たちにふたたび立ち上がる勇気と、現実のなかで何ができるのかについての知恵をくれると思います。(編集委員会)

   *     特集にあたって 編集委員会
  論 説   在日米軍基地の歴史と現在 山田  朗
  論 説 戦後日本の反戦平和運動とその歴史的意味 山田 敬男
  論 説 一九五〇年代沖縄の軍用地接収 ―伊江島と伊佐浜そして野辺古― 鳥山  淳
  論 説 熊本における平和運動の現状と水俣病救済運動 猪飼 隆明
 歴史の眼 グアンタナモ米軍基地の歴史と「強制収容所」 ―「アメリカの戦争」の詩と真実― 島川 雅史
  投 稿 戦前期都市社会政策と内鮮融和団体の形成と崩壊 ―京都市における内鮮融和団体を事例として― 杉本 弘幸
 歴史の眼 「海賊対処法案」の位相 栗田 禎子
  書 評 横内裕人著『日本中世の仏教と東アジア』 大塚 紀弘
  書 評 長島淳子著『幕藩制社会のジェンダー構造』 桜井 由幾
  書 評 大橋幸泰著『検証 島原天草一揆』 大石 一久
  書 評 孫江著『近代中国の革命と秘密結社』 藤谷 浩悦
 文化の窓 パロディとしての楔 ―歴史学とサブカルチャーE 北條 勝貴

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