『歴史評論』2009年7月号(第711) 定価 770円

特集/歴史を学びなおす―教科書記述と歴史研究2―


 先月号に引き続き,歴史学入門特集として「歴史を学びなおす―教科書記述と歴史研究2」をお届けします。小・中・高校で誰もが目にする歴史教科書の記述を歴史研究の視点から読み直すことを通じて、歴史学の新しい成果や課題について問題提起したいと思います。
 歴史教科書については,検定をはじめとする制度の問題ととともに、歴史叙述として魅力に乏しいということがしばしば指摘されてきました。しかし、大学でこれから本格的に歴史学を学ぼうとする学生などにとって、教科書を通じて身につけた歴史知識は決して少なくはないはずです。また、より学問的で興味深い教科書を作ろうとしてきた執筆者の努力が、事項の選択や記述のニュアンスに時代・分野ごとのずれを含みつつも、着実に反映してきていることは間違いありません。教員や生徒がそうした教科書記述の「行間」に反応することができるならば、教科書を歴史に対する新しい知識や視点を獲得する手がかりとして大いに役立てることができるかもしれません。
 今月号には、時代やテーマごとに新しい見方が提起され、それが定着し始めている状況を受け、日本の対外関係や戦争・植民地認識、日本の「内」と「外」のあり方に関する論考、世界史教科書の記述についてそれぞれの時代の大局から検討を加えた論考を寄せていただきました。歴史学・歴史教育の双方の立場から、新たな研究や実践への示唆を汲み取っていただければ幸いです。(編集委員会)

    *     特集にあたって 編集委員会
  論  説   世界史教育と中国古代史研究 ―とくに鉄器と牛耕の出現をめぐって― 飯尾 秀幸
  論  説 日本中世の対外関係 関  周一
  論  説 歴史の教え方・学び方再校 ―ヨーロッパ中世― 渡辺 節夫
  論  説 「鎖国」の見直しと教科書記述 木村 直也
  論  説 世界からみた日露戦争 稲葉 千晴
  論  説 「清末の鉄道国有化問題」の現在 田中比呂志
  投  稿 国光社と歴史教科書 竹田 進吾
 歴史の眼 日本における新自由主義の展開と松下政経塾 渡辺  治
  書  評 榎本淳一著『唐王朝と古代日本』 廣瀬 憲雄
  書  評 細井浩志著『古代の天文異変と史書』 河内 春人
  書  評 三田武繁著『鎌倉幕府体制成立史の研究』 清水  亮
  書  評 伊川健二著『大航海時代の東アジア』 清水 有子
  書  評 武田春人編『日本経済の戦後復興』 齊藤  直
  紹  介 見城悌治著『評伝・日本の経済思想 渋沢栄一』 中島 哲也
2.11集会の記録 東京・京都・大阪・奈良・佐賀の2.11集会の記録 菊池  英
花森 重行
大月 英雄
杉田  義
長野  暹
  

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