『歴史評論』2009年4月号(第708) 定価 770円

特集/表象としての女性

 わたしたちは日々、テレビ・絵画・映画といった視覚文化によって造形された大量な女性像に接しています。時代や社会の産物としての女性イメージは、それを観る人々の心に意識的・無意識的に働きかけ、ジェンダー規範を浸透させる機能を果たしてきました。同時に、わたしたちのもとに届けられる女性像は、単一の固定的な規範をストレートに再生産したものではなく、様々な勢力のせめぎあいのなかで作りだされ、国家や社会の変動と連関して変化していくものでもあります。そのため女性表象の分析は、各時代のジェンダー規範のあり方とそれが生産される場に交錯する諸力学、そしてその変容を明らかにするうえで、極めて有効な視角となっています。
 文字に比べ、多義性を多く含む視覚表象からなにをどのように読み取ることができるか。本特集では、古代の観音像、能・歌舞伎における女性表現、近世の屏風や農書などに描かれた田植え風景、女性が脚本を手がけた戦時下の日本映画、そしてイギリス女性参政権運動が演出した行進を対象にした論考を集めました。各地域、各時代の女性像を明らかにするとともに、そこから伺える女性の社会的配置を考察します。
 また、今回は特に、ファッションに関するコラムを設けました。女性の身体への加工も含め、ファッションに付与された社会的意味や役割を多角的に検討します。(編集委員会)
   *     特集にあたって 編集委員会
  論 説   観音像に見られる女性像 岩崎 和子
  論 説 能と歌舞伎の女性表現 奥山けい子
  論 説 早苗の植え手をめぐるジェンダー
   ―「五月男女」と「早乙女」―
長島 淳子
  論 説 戦時下日本映画の中の女性像
   ―『チョコレートと兵隊』再検討―
池川 玲子
  論 説 イギリス女性参政権運動の「演出」 佐藤 繭香
  コラム 小袖のジェンダー 菅原 正子
  コラム 「女学生」という表象
   ―袴からセーラー服へ―
山崎 明子
  コラム イスラームとベール 大川真由子
  コラム 「伝統」という名の暴力
   ―纏足・女性・痛みの表象―
斎藤 綾子
歴史のひろば 朝河貫一の比較封建制論の再評価をめぐって
   ―イェール大学図書館所蔵「朝河ペーパーズ」の紹介―
佐藤 雄基
  書 評 小島孝之・小林真弓・小峰和明編『三宝絵を読む』 岡野 浩二
  書 評 今野日出晴著『歴史学と歴史教育の構図』 宮原 武夫
  紹 介 梅村恵子著『家族の古代史』 鈴木 織恵
文化の窓 電脳空間をめぐる死の臭い
   ―歴史学とサブカルチャーC―
北條 勝貴
  会 告 声明「海賊対策」の名のもとの自衛隊派兵に反対する』 歴科協理事会
全国委員会
  

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