『歴史評論』2009年2月号(第706) 定価 770円

特集/歴史研究と歴史教育をいかにつなぐか

 歴史研究と歴史教育の連携はいかになされるべきか――。
 両者の関係についてほとんど意識しなかった戦前の歴史学の反省をふまえて、戦後一貫して歴史学は両者の連携を模索し続けてきました。そうした問題意識をもって展開されてきた歴史教育論が、歴史教科書・歴史叙述のあり方や授業の方法などについて、重要な議論を喚起して一定の成果をあげてきたことは確かなことです。
 一方、いま、教育現場の歴史授業で、歴史研究の成果が反映されにくくなっていることも確かな事実です。精緻な歴史研究が進められるのはもちろん歓迎すべきことですが、限られた時間のなかで多様な生徒を目の前に全時代をこなすことを要求される現実の歴史教育では、個別分散化した研究成果をそのまま授業に組み込めなくなってきています。さらに、教育現場が抱える様ざまな問題の増加や受験指導への対応におわれて、教材研究に割ける時間が減少していることもそれに拍車を加えています。
 歴史研究と歴史教育の連携が重要であると指摘されながらも、かえってその乖離が進行しつつあるように見えるのが現状です。本特集では、歴史の教員養成の現状と課題を立脚点として、この問題を考えてみたいと思います。従来の歴史教育論では、歴史の教員養成をめぐる問題についてはあまり議論されてきませんでした。本特集は、歴史の教員養成のあり方を基軸に、歴史研究と歴史教育がいかに連携されるべきかを探る試みです。 (編集委員会)
   *     特集にあたって 編集委員会
  論 説 歴史教育と社会科歴史
  ―「歴史教師」という問題―
今野日出晴
  論 説 教員養成と歴史研究・歴史教育 大橋 幸泰
  論 説 歴史教育はコミュニケーションである
  ―理屈、実践、課題―
小田中直樹
  論 説 歴史教科書執筆者が考える歴史の教員養成 大日方純夫
  論 説 歴史教育の現場からみた歴史研究と教員養成 會田 康範
  論 説 教育実習生指導の問題と歴史教育 安井  崇
歴史のひろば 前近代の民衆運動と竹橋事件(一) 島田 次郎
  書 評  井上和人著『日本古代都城制の研究』 仁藤 敦史
  書 評  鎌田元一著『律令国家史の研究』 服部 一隆
  書 評  清水亮著『鎌倉幕府御家人制の政治史的研究』 高橋  修
  書 評  五味文彦著『中世社会史料論』 佐藤 雄基
  書 評  千葉正史著『近代交通体系と清帝国の変貌』 田中比呂志
  書 評  松田博著『グラムシ思想の探求』 谷本 純一
  紹 介  歴史資料ネットワーク編『地域社会からみた「源平合戦」』 高松 百香
  

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