
歴史学では、様々な形式の史資料を読み解きながら、新たな歴史像を構築することが目指されます。歴史研究で用いられる史資料のうち、紀伝体や編年体といった体系的な叙述方法によって編まれた史書は、研究を進める上で無視することのできない重要な書物です。
史書は、「正史」という言葉が用いられることもあるように、時の政治権力のお墨付きが得られた書物と見なされることがありました。確かに、史書の叙述は、編纂者の史観に基づき、収録する情報が取捨選択されます。編纂当時の政治思想が過去の人物に投影されることもあれば、同時代に複数の史書を編む王朝も存在しました。また、複数の伝本が存在する史書は、諸本の伝来過程にも目を向けた上で歴史像を考察する必要があります。このように、史書を読み解くに際しては、他の史資料以上に、厳密な史料批判が必要なことは言うまでもありません。
他方で、一部の史書は後世の人々によって読み替えられ、新たな史書を生み出す素地にもなりました。史書の受容のされ方に注目することで、過去の人々の歴史意識を探ることも可能です。
そこで本号は、史書の編纂事例が豊富な前近代の東アジア文化圏を対象に、各史書の性格や、新出土資料との関係、編纂事業の特質、後代の歴史叙述に与えた影響について考える特集を組みました。それぞれの史書が持つ特徴とともに、各時代・各地域の歴史叙述への向き合い方を知るきっかけとなれば幸いです。(編集委員会)
| * | 特集にあたって | 編集委員会 |
| 論 文 | 『史記』の叙述と新史料 ―人間司馬遷に見る歴史観― Historical Narratives in the Shiji and New Historical Materials |
鶴間和幸 TSURUMA Kazuyuki |
| 論 文 | 古代史書から『南嶋志』へ ―『日本書紀』『続日本紀』と東アジア、南西諸島― Records of Negotiations with the Nansei (Ryukyu) Islands in the Ancient Japanese Chronicles Nihon shoki and Shoku Nihongi |
遠藤慶太 ENDO Keita |
| 論 文 | 『吾妻鏡』の史料論 Critical Approaches to Azumakagami as a Historical Source |
高橋秀樹 TAKAHASHI Hideki |
| 論 文 | 『徳川実紀』の編纂と徳川家康像 Compilation of the Tokugawa jikki and the Construction of Tokugawa Ieyasu’s Image |
平野仁也 HIRANO Jinya |
| 論 文 | 近世琉球の史書編纂とその活用 ―『中山世譜』を事例に― Compilation and Utilization of Official Histories in Early Modern Ryukyu |
大城直也 OSHIRO Naoya |
| 論 文 | 朝鮮王朝実録 ―編纂と改修をめぐる相克― Compilation and Revision of the Veritable Records of the Joseon Dynasty |
長森美信 NAGAMORI Mitsunobu |
| コメント | 【歴史科学協議会第59回大会 第1日目 「戦争と平和」研究の立脚点】 The Foundations of Historical Studies of “War and Peace” 構造的暴力に対する学術の役割 The Role of Scientific Communities in Confronting Structural Violence | 隠岐さや香 OKI Sayaka |
| 科学運動通信 | 近衛天皇陵避雷針設備改修工事に伴う立会調査見学参加記 | 阿部大誠 |
| 科学運動通信 | 宝来山古墳(垂仁天皇陵)事前調査見学会参加記 | 中村聡 |
| 書 評 | 林彰著『自由民権から初期社会主義へ』 | 高島千代 |
| 二・一一集会 ―各地の記録 |
相庭達也・柳原敏明 長谷川達朗・堀田慎一郎 北泊謙太郎・杉田義 |






