潜熱蓄熱材封入鋼床版橋 
昼間の太陽熱を鋼床版内の4℃相変化潜熱蓄熱材に保存し路面の凍結を地盤部並みにする

鉄筋コンクリート床版厚250mmに比べて鋼床版厚が12〜22mmの瀬戸大橋など鋼床版橋の路面は熱容量が小さくて結露凍結しやすい.バケツの水は凍結しないが,杯一杯の水は凍結しやすい,瀬戸大橋は年間15日ほど融雪剤を散布しており,利用車両や鋼橋の腐食を促進している.4℃で液体から固体に相変化するパラフィンを平均厚2cm舗装床版内に埋設すると日中に液体になったパラフィンが早朝に固体化し始めて長く4℃を保持するため路面凍結は地盤部までに抑制された。交通事故は,時間空間の変化点で生じるので,前後と凍結が異なる橋面は危険である.この工法はメンテナンスを必要としない。


Uリブや箱で囲わずにバルブプレートリブやI桁にすると下面からの対流熱と放射熱で凍結は減ります。


土木学会論文集では,気象データと橋構造からの差分法でシミュレーションした計算結果が実測と良く一致することを示した。別途計測した凍結結露量と滑り抵抗の関係から,スリップの危険性をも予測している。日本雪工学会誌では床版下面断熱で凍結が増えることや箱桁やUリブ をI桁やバブルプレートリブにすると凍結が半減することを示している。

  
福井県内の天菅生橋,勝山橋,高浜高架橋に適用されました。
この潜熱蓄熱材封入鋼床版橋は科学技術庁の注目発明に選定され,日本土木学会技術開発賞を受賞しました。
耐久性は福井鐵鋼(株),大阪大学,大阪工大との共同で,科学技術振興機構の研究費で検証しました。
パラフィンを防火安全のために見かけ上ゲル化して使用しています.実施例の3カ所では,そのゲル化を電熱床暖房のパラフィンゲル化の技術を有した三菱電線工業にお願いしていました.そこでは80℃に一度加熱する必要からコストが高く,また現在は需要減から加工が不可能となりました.調べると,油の流出事故で粉末粒子を用いてゲル化する技術を代替できそうで,パラフィン自体もその会社で高品質なものを輸入できそうで,工事込みで面積当たり3万円/m2は約半額に下がることが期待されます。

鋼床版の上面に鋼管封入で潜熱蓄熱材を設置し,その周囲をアスファルトでなくて鋼繊維補強コンクリートで耐久性を確保した。合成鋼床版橋では名古屋都市高速での実績が参考になった。コンクリート舗装の平坦性はコンクリート舗装が濡れていると目視では分からないので,3m長さの鋼尺を当てて確認することが大切で,またコンクリートの養生を湿度記録計で確認すること。平坦性が得られなくて表層に薄層のアスファルトを用いたが,これは耐久性が不十分であった。その厚さを鋼繊維補強コンクリートとした方が良い。
鋼床版の下面から鋼管封入潜熱蓄熱材を押し当てたのでは,パラフィンの熱伝導率が低くて,結露凍結に時間的に間に合わないとシミュレーションの結果だった。しかし,アルミたわしを鋼管内に置いてパラフィン液を流し,ゲル化材を添加する方法であれば解決する。鋼床版下面のリブを活かして潜熱蓄熱材を床版に安価に密着させるかが課題。この方法であれば既存の本四架橋の鋼床版橋にも設置できる可能性がある。

関係研究論文

鋼床版橋下面での熱移動(観測と解析)寒地技術シンポジウム寒地技術論文・報告,vol.13,pp.121-125,1997,宮本重信
床版下面構造が橋梁路面の凍結におよぼす影響日本雪工学会誌,No.609/Y-41,1998,宮本重信・室田正雄・杉森正義
鋼床版橋路面の蓄熱材封入による凍結抑制の研究,土木学会論文集No.574/Y-36,1997,宮本重信,室田正雄
鋼床版橋路面での蓄熱材封入凍結抑制法の数値シミュレーションによる効果予測,土木学会論文集No.609/Y-41,1998,宮本重信
蓄熱材封入による鋼床版橋路面の凍結抑制-閉断面リブ鋼床版橋での計測,寒地技術シンポジウム寒地技術論文・報告,1997,宮本重信・室田正雄
鋼床版橋の路面凍結と蓄熱材封入による抑制,道路橋床版シンポジウム講演論文集,pp.247-252,1998.12,宮本重信・室田正雄
拡張アメダス気象データと数値シミュレーションを用いた橋面凍結の推定,道路橋床版シンポジウム講演論文集,2000,宮本重信・奥村茂
凍結抑制型合成鋼床版の輪荷重走行下での疲労特性,道路橋床版シンポジウム講演論文集,2000,奥村茂・宮本重信・堀川都志雄・桧垣豊・松井繁之
蓄熱材封入合成型鋼床版の実橋載荷実験,道路橋床版シンポジウム講演論文集,2004,松井繁之 池田良介 宮本重信 堀川都志雄
蓄熱材による鋼床版橋凍結抑制の愛知県での実験と数値シミュレーション,土木学会年次講演,2002年,宮本重信 奥村茂 後藤芳顯