融雪面の積雪感知センサで 地下水と電気の使用量は1/3に 降雪後も融雪完了までの運転で路面も改善

土木事務所の融雪担当の友人に,何が困っているかと質問しました。すると雪が降っていても積もらないことが多いのに,降っているだけで地下水を散水して融雪している。もったいないから,降っていても積もらないと思う時には運転を停めている。これが大変だという。降雪の判定に比べて路面の積雪判定が難しいから積雪センサが市場になかったのです。降雪判定での融雪制御は,暖房の制御を室温でなく外気温で行うようなものです。暖房の制御を室温でなくて外気温で行う人はどこにもいないでしょう。
1985年当時石川高専今井清保教授が赤外線の反射率で積雪を判定して校内の実験用融雪を制御していました。これを県内企業の(有)西村電機商会,且R田技研に技術移転し国内最初のフィードバック融雪制御を実道路で実現しました。この転換だけで運転時間(=融雪でのエネルギー消費量)は福井市内県道の3事例で,67%削減(宮本重信:地下水を利用した節水型融雪システムの開発 土木学会論文集1994),67%削減(高島浩一・宮本重信・杉村佳昭:市街地における節水型散水消雪に関する研究,福井県雪対策・建設技術研究所年報第15号,2002.8)65%削減(山崎三知朗:画像処理による積雪センサの実用状況,福井県雪対策・.建設技術研究所年報2012)といずれも約1/3に削減です。小浜市役所前では35%削減(小浜市地下水利活用・保全検討委員会:地下水の利活用と保全に向けた提言2018年),新潟県六日町では33%削減 (前掲高島浩一他で交互散水消雪とある,佐藤英則・加藤勝彦・渡邊亮:六日町道路消雪パイプ集中管理システム導入について, 土木計画学研究・講演集No.20.1997.11)一般に融雪装置は3時間降雪強度で85%までの降雪強度までを溶かす設計になっていますから,積雪センサ運転では85%以下のほとんどの降雪に積雪は溶けるから運転は停止し,再び雪が積もり始めると運転になります。間欠運転になるのです。  運転事例を見ると,降雪センサは時間降雪が気象台計測最小値0.5mmで稼動しています。積雪センサでは舗装が温かいから日中は2.5cm/hの降雪になって積雪感知で稼動しても20分ほどで雪が消え運転は停止です。同じ時間帯,降雪センサは連続運転です。必要なく散水しているのです。夜間の1〜2cm/hの降雪では,降雪センサは連続運転ですが,積雪センサは間欠運転です。深夜1時から3〜1cm/hの降雪では,運転時間に差が見られません。溶けるまで積雪センサは運転しているのです。日中の運転時間は積雪センサ化で1/7に激減ですから,歩行者が車に飛ばされた散水を被ることも激減します。  建設省の担当室長も絶賛され,福井県道路保全課などは,各土木事務所に地下水利用融雪事業では,この積雪センサを使用するように通達しました。しかし,人事異動もあって,また設計コンサルタントに伝わらず徹底されなかった。その後,福井県雪対策・建設技術研究所の後輩らは積雪センサの画像処理化でコストを80万円にまで縮減しました。車道の散水融雪では,降雪に伴い車で轍ができ、路面広くを監視しないと運転の停止開始の指示が適切になりません。大雪の現場でないと監視領域の設定が難しい。その作業がIOTで画像を見て設定変更ができるロードアイは高額だけど優れます。  地下水利用の無散水融雪では,放熱管の埋設かぶり深さが5cm以上だと積雪後からの積雪運転では時間遅れが生じます。但し,降り止んでからも積雪があれば運転継続なので,降雪センサ運転より路面状況は改善されます。降雪強度センサでの融雪制御では,車によるシャベット雪の攪拌飛び散りや轍,路面の蓄熱,日射・長期放射・風などで路面の融雪は異なるので限界があります。無散水融雪の歩道などであれば轍も生じなくて均一な融雪なので30cm四方の積雪の感知で運転できました。80万円の設置費で県内で4カ所使われて省エネとなったのですが,部品がなくなってしまいました。その後北海道電力などが路面埋設発光での積雪センサを開発し、7万円で市販したのですが,漏水することで中止になりました。近年北海道大学などでAI画像処理での積雪センサも市販され始めています。

1台の積雪センサで市街地全ての節水・節電 

越前市では1台の積雪センサからの運転信号を市庁舎の中央制御を介することで市街地全ての融雪を運転しています。これだと費用は安価で,地下水利用の融雪でも1年ほどの電気代の節約で償還できるでしょう。私達は,各融雪サイト毎に融雪路面状況が異なるから積雪センサの設置しなければならないと思い込んでいました。しかし,周辺の融雪路面状況での運転であっても,降雪の有無での運転するよりは路面は良くなると推測されます。とりわけ,大雪では降雪後も積雪センサは運転となるので路面状況も改善されます。雪国の電力会社では電力ピーク負荷の低減を目的に,昼間2回各1時間停電する条件で,電力料金を安価にしています。1時間停電時に積もって,その後降雪が無くても積雪センサであれば対応できます。デマンド抑制(ピークシフト)しやすいのです。

積雪センサ義務づけで,将来も地下水熱利用可能に

1975年福井県は地盤沈下対策要綱で福井市橋南での新たな井戸の設置を禁止しました。そのことで,市道の花堂跨線橋では年間約6百万円の電気代,マンションでは車1台分年間約6万円のガス代の融雪です。この融雪では,地下水利用に比べ設置費維持費,二酸化炭素排出量は数倍です。  長岡市は民間の融雪が降雪に拘わらず運転することから節水型降雪検知器の設置などを条例で義務づけています。この節水化で,先に井戸を設置した者だけでなく,広くみんなが地域資源を利用できるようにしています。この制御方法での規制に学び,福井県(福井市)や金沢市などは,積雪センサ設置を義務づけるべきです。現状の降雪センサを積雪センサ制御にすれば,福井市街地での地下水揚水量はシーズンでは約1/3に減じますが,大雪豪雪の期間は溶けるまで散水することからそれほどの節水にはなりません。これらの地域での道路や鉄道の地下水散水融雪は中央制御ですから,代表的な箇所の1台の積雪センサ信号を使えます。地下水節水分だけ,地下水規制域では他の利用者にも地下水利用が可能になります。化石燃料や電熱でない地下水利用で温暖化対策になります。  なお,既存の融雪井戸からの地下水を,新たに設置したほぼ同じ面積の融雪区間に,間欠交互に散水して融雪することが導入されています。これでは融雪能力は半減化し,残雪が増えます。この交互散水方式で積雪センサを用いると,溶けるまで運転となるので能力ダウンはカバーされます。福井市の新規井戸の規制区域で導入しました。無散水融雪で熱源の埋設深さが10cm以上の融雪設備では積雪後の運転では融雪が遅れます。これには,降雨強度からその後の積雪有無を数値シミュレーションで予想して運転開始を指示することで解決できるでしょう。

この積雪センサだと融雪能力が不足しても降雪後も溶けるまで運転なされるので,設計ミスや想定外の能力ダウンがカバーされます。
融雪面が均一な無散水融雪では監視面の設定が容易です。地下水再利用の歩道無散水融雪と車道散水の融雪では,溶けにくい歩道を感知することがお薦めです.
東北の自動車道路などのトンネル出入口の電熱融雪では約5年間の電気代の節約で設置費が償還できると500万円の積雪センサが約100台設置されました。
 青森の海水熱をヒートポンプで昇温しての無散水融雪の制御にも節電と降り止んでも消えるまで溶かすことで使われています。積雪センサでのトラブルでは積雪センサの監視領域が路側すぎると除雪された雪で何日も運転になることです。また車道と歩道を同じ運転で制御すると車道は大雪では除雪で雪がなくなるが歩道は残雪があっても運転停止になります(幸橋)。

これまでの地下水散水融雪を井戸を増やさずに,新たに融雪区間を増設し,交互に散水して融雪することがなされます。そこでも使われて溶けるまでの運転で役立っています。

福井市街地などの合流式下水道区域では,融雪用地下水も下水道処理場にポンプ圧送されて処理されます。その費用年間数百万円を市は一般会計で負担しています。地下水散水融雪の節水は,この下水道処理費用と井戸ポンプの電気代と二酸化炭素排出量を削減します。

散水凍結で事故を防ぐサブスクリプション化が課題

 福井県内で消雪準備でのノズル点検で散水した水が深夜に凍結して,突然のスケートリンク路面に直面して自動車事故が起こり,道路管理者の瑕疵として裁判での判決がされています。また,橋面の結露凍結対策で融雪装置を散水してしまい,散水流末での凍結で運転手が死亡した事例があります。 融雪での散水が路面に残り,その区間だけが突然のスケートリンクで事故に繋がります。積雪センサでは路面の水分の有無や温度を検知することができます。これを利用して数時間後の路面凍結を予知して,道路管理者に融雪剤散布を緊急通知するシステムが必要です。積雪センサのメーカーから路面管理を行うスブスクリクション化,積雪センサの工事発注から運転制御管理の委託化への転換です。

数値シミュレーションでは 


図1 福井での電熱融雪数値シミュレーション 降雪センサVS積雪センサ 積算運転時間

地下水散水車道融雪での2シーズンの福井市街地での実施例では,降雪センサ運転に比べて積雪センサ運転は約1/3になっている。電熱融雪200W/u(電熱かぶり2cm)での1990年12月から1991年3月の1シーズンを熱解析によるシミュレーションを行った。結果(図1)は降雪センサ269時間が積雪センサで91時間となり、実測の1/3の削減と一致している。福井での地下水散水融雪が電熱融雪200W/u(電熱かぶり2cm)と概ね同等の融雪であると推定される。散水消雪は熱による融雪以上に良く溶け,車によるシャベットの飛散効果と推測されるが,数値シミュレーションでの再現はされていない。積雪センサでの制御結果から条件毎の融雪能力が分かるので、それが散水融雪の融雪モデルの解明に繋がることが期待される。  散水融雪では散水した水が流末で凍結し,スケートリンクとなって死亡事故になった事例があります。路面が結露凍結で白くなって,これを積雪とセンサが間違って散水することも1回経験し,ヒーター付き水分計を設置し対処したことがあります。外気温が低い時には降雪があっても散水融雪は行わない方法も従来から用いられています。

電熱融雪を路面濡れ運転(札幌市)VS積雪センサ運転 ほぼ同じ融雪に 


図2 札幌での電熱融雪シミュレーション 降雪センサ, 積雪センサ,札幌市方式(路面水分なし等)積算運転時間


図3 札幌での電熱融雪シミュレーション 降雪センサ, 積雪センサ,札幌市方式(路面水分なし等)残雪深

札幌市で電熱線埋設かぶり10cm出力250W/uの融雪で制御方法を変えてシミュレーションした。結果(図2)は降雪センサが積雪センサ運転時間の約半分で、福井とは逆の結果となった。これは札幌では融雪が降雪に追いつかなくて降雪が降り止んでも残雪が残ることが多くて(図3),積雪がなくなるまで運転すると運転時間が増えることによる。省エネにはならないが、路面が積雪とならないように融雪装置の適切な運転を実現している。札幌市は外気温,降雪,路面の濡れ乾燥,路面温度,降雪予測を組み合わせた運転制御を実施しているとネットで公表している。この札幌市方式をも標準気象1シーズンで,数値シミュレーションで再現した(図2)。路面に雪がなくなる積雪センサでの514hrに、札幌市(降雪予報での運転なし)では、更に路面の水分が乾くまでの運転が加わって585hrになっていると解される。更に1時間後に降雪があるという時にも運転とするのを札幌市方式とした結果の総時間は591hrになった。最大積雪深は11.3cmが11.2cmに下がっただけの効果に留まった。電熱線埋設深を10cmから3cmにすると運転総時間は370hrに、最大残雪深も7.6cmに低下した。

札幌市内では融雪装置の運転をインターネットで指示するサブスクリプションが行われている。気象庁は毎時に1時間から6時間先の降雪量などを5kmメッシュで予想公開し始めているので、この情報と融雪設備の仕様で数値シミュレーションを繰り返して融雪路面の残雪で運転を指示すると省エネと残雪最小化を実現できる可能性がある。


積雪センサ メーカー:山田技研