37年ぶりの福井豪雪での開発してきた融雪装置の状況


コンクリート基礎杭兼用利用での地中熱融雪(駐車場)
 26年間,今回の豪雪でも駐車場融雪として実用的に問題がなくも雪をよく溶かし続けた.融雪面積当たり循環ポンプの約4W/uの,電熱融雪の1/40の消費電力である.福井県立大学職員住宅のコンクリート基礎杭(長さ35m)48本の中空に貯水し,放熱管埋設駐車場400uからの冷水を杭底にまでポリエチレン管で送り,冷水は杭内貯水に出て,ゆっくりと杭頭に周囲の地中熱を得ながら流れる.高温となった循環水は駐車場に戻る.平成2年運用されて以来,目づまりした炭酸カルシウムで流量計を外すなどのメンテナンスを除き,シーズン前の点検も一切無く雪を消し続けた.融雪のコンクリート路面もひび割れは全く見られない.積雪センサは数年前壊れ,部品が調達できなくなり,住民の方が手動で運転している.目視運転では無駄な運転となることから豪雪では溶けにくなるが,今回は一時的に積雪があったものと思うが,除雪の後も無く雪は消えていた.住民の方からはよく溶けて助かっている.26年経過で循環ポンプはいつ壊れても仕方がないと思っている.循環ポンプは取り替えても10万円もしないだろう.積雪センサは,画像処理タイプ20万円が開発されている.国内最初のこの実証システム,施工にも注意が行き届き,26年ほぼトラブルなく,数値シミュレーションも示すように,豪雪にも強いことが示された.

福井県立音楽堂の基礎杭兼用利用の地中熱融雪(歩道) ここも溶けていた.4年前に積雪センサの中の蜘蛛を除いて復帰できた積雪センサだが,雪で斜めに向いたが,うまく制御しているとのこと.4年前に,動いていたが運転時の杭底からの漏水を回路を大気開放系から大気密閉系にするだけで無くし,漏水するからと締めていた杭も利用できるようにした.ただし.炭酸カルシウムの析出で管路が目づまりした杭があって,稼働している杭は施工杭の6割ほど.この数年の研究で,珪酸ソーダを僅かに添加するなどで炭酸カルシウム析出や漏水は無くせた.循環水が水では凍結の寒冷地でも融雪面と杭熱源の中間に熱交換器を挿入することで実施可能.音楽堂も三郎丸も設備会社のメンテナンスはおこなっていない.県立図書館はメンテナンス委託をしているが管路が長く空気抜きなどに苦労している.積雪センサが補修されずに,手動で運転されていることもあってか十分な融雪には至っていない.

歩道無散水融雪車道散水のセット融雪(地下水再利用融雪)16℃の地下水を歩道に埋設された放熱管に流し歩道の雪を溶かす.溶かした後の7℃となった地下水を車道に散水して消雪する.この歩道無散水融雪車道散水のセット融雪は昭和61年に筆者らが国内最初に実施した.その後東北以南の雪国の都市部で最も代表的な融雪に普及した.大雪直後は融雪が追いつかなかったが,その後は写真のように歩道もほぼ溶けていた.現場によって,ほぼ溶けているサイトと余り溶けていないサイトがあった.溶けていなくても雪が降り止んで車道は散水されいなかった.筆者が開発したシステムでは融雪歩道の積雪を感知するように制御し,設計の仕様もそのように記した.しかし,全国に普及したシステムは降雪センサでの制御で,これでは大雪では路面に雪が残った状態で,雪が降り止むと運転停止となる.暖房するのに,室温で無く外気温で制御するようなもので,積雪センサの開発を30年前に,企業や高専と共同で筆者らは開発した.開発した積雪センサは歩道用が70万円で車道用の首振りタイプが500万円で,降雪センサの30万円に比べると高価だが,システム全体の数千万円からするとその節水効果が2倍で,優れた能力向上からすると積雪センサは優れもので,地下水揚水の電気代でも10年ほどで償還できる.昨年から画像処理タイプの積雪センサが私の元職場のメンバーによっての開発,市販された.この画像処理タイプの積雪センサで歩道の融雪状況を見て制御すれば大雪では雪が降り止んでも延長で,降っても積もらない時は運転停止,僅かな降雪では間欠運転で,節水と節電となる.融雪はニッチなので,専門性を高めても受注量が保証されない.また,発注者が専門性の評価を上手に行うことが出来ないこともあって,融雪をよく分からないコンサルが受注する.そして,多くは融雪関連メーカーや施工業者に設計を下請け,丸投げすることが問題の背景です.こうした背景があるからこそ,公共性の高い筆者らが研究開発する意義がある.こうした背景は,開発しても,総合的に良いシステムが普及するのでは無く,下請けの特定のメーカーや企業に利益になるのものが普及されて,最適なものが採用とは必ずしもなっていない.

ホテルの見える写真の福井駅北歩道(夏の蓄熱を群杭効果で初冬まで通常地中より10℃高める)は,大雪で蓄熱はなくなって,また降雪センサ制御で降雪時以外は運転が停止で,融雪面は凹みが見られる程度で破綻していた,同じ方式の幸橋も,融雪はこの大雪には対応できなかった.前後の散水融雪に比べて見劣りしていた.鋼床版橋で路面凍結がしばしば生じることと既存の井戸を井戸掘削が規制された橋の南で使用し,この橋は夏の熱を蓄熱したシステムにした.路面を常時0℃以上に保持する制御で,通年では蓄熱の半分を消費していることから,路面に水分が無いときは運転を停止する制御にできれば融雪能力は向上する.積雪センサで運転されているが,この大雪直後は3℃の循環水温であることから60W/u(1時間で新雪0.6cmの融雪)出力であった.季節間蓄熱は,37年ぶりの大雪にまで対応させようとすると設置費が高くなりすぎる.地中熱も大雪だと地中の温度が低下するが,季節間蓄熱ほどの温度低下にはならない.地下水利用は,無尽蔵なので,大雪でも能力の低下はない.ただし,深さ12mの地下水帯水層の水位が低下し,筆者らが実証試験中の福井市森田では地下水循環方式の地中熱熱源床暖房システムは揚水できなくかった.深さ6mの帯水層は水位低下がなくて,揚水を切り替えて運転は継続できた.福井市河増でも昨年,16mの深い井戸水位が低下し,浅い井戸とサイフォンで繋いでいたことで,その水位差で放熱管内を地下水が循環し,無動力で融雪がされた.