Update:30/Jun/2000, Copyright by Michitoshi Hayashi


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鮎滝と笠網漁

1999・6・30起  出沢区鮎滝保存会会員     林  道 敏
 Ayutaki and  Kasaamigyo

   by Michitoshi Hayashi

鮎滝日報 鮎滝の歴史と沿革

 鮎   滝         
   所  ; 知県新城市出沢区内
 
由 来 ;出沢区内を流れる豊川(旧寒狭川)には、かつて三つの滝があった。
 1643年(寛永20年)新城藩主水野備後守元綱が、切り出した材木を流す(江戸時代の初期から行われていたようである)のに、二の滝が障害になっているとの苦情を聞き、播州の高砂から石切の石工を呼び寄せこれを切り開かせた。その時、出沢の滝川宗右衛門(地元の代官)がその石工を引き続き大海村の太郎左衛門宅に寄宿させ、私費でもって三の滝を切り開かせた。これにより、滝は高さ一条三尺、幅六間余りとなり、以来寒狭川を遡上してきた鮎が良く飛ぶようになり、名称も自然に「鮎滝」と呼ばれるようになったのである。写真上はその滝の状況、写真下は今日一般に鮎滝と呼んでいる滝の状況である。

一の滝;七久保川の出口より下約10メートル程にかけてあり、普段は長篠発電所への溢水式ダムに沈み見ることが出来ない。わずかに渇水期に滝の肩と思われる岩の一部が見えるに留まる。
二の滝;ダムの基底となっており、ダムの下部に面影をしのぶことが出来る。
三の滝;現在の鮎滝である。
 
 思い出日報;一日中ぼつぼつ飛んだ。こんな日が一番疲れる。竿を出しているとき色々なことを考える。「次に飛ぶのはどこか?右?左?高さは?移そうか?糸トンボが飛んできた。オニヤンマが卵を産んでいる。川坊主に喰われた。かゆいかゆい。でっかい蟻が来た。小さな蜘蛛が降りてきた。滝の風に吹かれて今にも落ちそうだ。あーあ居なくなっちゃった。麦藁トンボが竿に留まるってこっちを向いている。重いって。暑い!額の汗が眼鏡に落ちて見難い。口が渇いた。今日は風が吹かないなー。気圧が少しでも変われば状況が変わるのに。雲が無いなー。飛ばないなー。これじゃあ名人には成れそうにないなー・・・・・・・・・。」迷人???・・・・・・・
 じっと網先と川面を見ていて一瞬ではあるが、川の音も暑さも何も感じなくなり、頭の中が真っ白に成る時がある、それでも鮎が網にはいると体が反応する。捕れたときは何とも言えなく嬉しい。名人???・・・・・・・
鮎滝行事;
  鮎滝祭り (鮎滝安全祈願祭);
 
 例年6月第一日曜日(今年は4日)でした。 
  
 
1年の安全と、豊魚を祈り行なうものです。
 コロナウイルス騒ぎから行事の縮小傾向で、今年も役員だけで執り行われました。
滝の川施餓鬼;
 毎年うら盆に当たる8月24日に行われます。

この日までの豊漁と安全を感謝し、これからの豊漁と安全を祈願して行われているものです
 笠 網 漁
  所     ; 鮎滝と同じ
  由   来;三の滝を切り開いたことで良く飛ぶようになった鮎を、何とかうまく捕る方法はないものかと思案したものと思われる。長さ約二間の竹竿の先に笠(当時の旅人がかぶったすげ笠)に似た網を付けたもので捕るようになった。以来これによる漁法を笠網漁と称するようになった。元々は、たまたま通りがかった旅人が、あまりに多くの鮎が飛ぶ様を見て、付けていた笠をさし出したところ、うまく掬えた。これを見て考案されたものではないかと伝えられている。「鮎汲み漁」というのが当時の呼び名であったが今日では「笠網漁」と呼ぶのが一般的である。また、いつの頃からかサデ網と 呼ばれる網がよく用いられているが、この名も、着物の袖に似たところから「袖網」がなまって「サデ網」となったとか、地方にサデ網漁というのがあって、網の形がよく似ているところからこの名を取ったとも言われているが定かでない。
  
  写真上;鮎滝における笠網漁である。
  写真下;笠網2本とサデ網3本


 漁 期6月1日〜9月初旬
  区内の4軒が一組になり、輪番制で行っています。10日で一回廻ってきます。雨が降ったり大水で捕れなくても番は廻って行きます。漁獲量は、一日ゼロ匹から数百匹と、天候や水温、水量、何よりも鮎の気分次第と自然任せのため大きな差が出ます。
 極 意
       
 ・笠網漁の極意は何か有りますか?とよく聞かれます。小生も先輩(浅井昇氏)に聞いたことがあります曰く、「鮎が飛び込むのを待つことだよ・じっと待つこと・ただひたすら待つことだよ」と教えられました。鮎は、時には高く、時には低く、次には右に、その次には左にとどこに飛ぶか解らない。そのたびに追いかけてはよくない。それは鮎とのルールです。第一これだけ重い笠網を、一日中炎天下で振り回していたらこちらの体力が持たない。
 
語り部;水面を境にして、下は鮎の世界、上は人間の世界。お互いに相手の世界を犯さないこと。これがルール。人間が水の中では生きられない様に、鮎は水面から上では生きて行けない。生きて行けないことを覚悟で飛ぶ鮎なら、捕ってもいいだろう。網を水の中に入れて捕ってはいけない。それが鮎に対する礼儀でもある。自然に対して最も優しい漁法だと言えよう。以上半分は先輩(浅井昇氏)からの受け売りでもある。とかく人間ほど我が儘で、どう猛な動物はいない。動植物は勿論、鉱物まで何でも食べる。勝手な理由を付け、絶滅をもさせるほどに食べ尽くす。そこには、同じ地球に棲ませてもらっているという気持が無い。情けないことである。最近保護ということが言われるようになった。良いことである。しかし、それでさえ、強者の言い分だと言うことを忘れてはいけない。自分がそうであるように、自由が一番なのだから
 
お願い;見学者は歓迎しますが、次のお願いをします。
  • 出来るだけ静かにお願いします。鮎は気の小さな魚です。
  • 日の方向を見て見学してください。水面に人影が映ると飛んでいる魚も飛ばなくなります。
  • 滝の上流200メートル以内での入水は遠慮願います。特に、滝のすぐ上に同区内からの支流「錦砂川」が流れ込んでいますが、そこへの入水はお断りします。鮎の嗅覚は人間の200倍といわれます。冷たくて気持がいいのですが、手を洗ったり、足を入れて休まれますと、とたんに飛んでいる鮎が飛ばなくなってしまいます。(水質公害基準では、十分な水量が有れば200メートルが自然浄化の距離となっています。)
  • ゴミの持ち帰りには協力願います。
  • 友釣り以外の漁法は禁止されています。特に滝下の深みは友釣りも遠慮してもらっています。
  • 以上、市の文化財ともなっている、三百五十年の歴史ある素朴な漁法を守って行くためと推察し、協力願います。


令和5年   鮎 滝 日 報

 今年は良き年になりますように!・・・
我が家の当番だけ乗せます。この日はよほどのことがない限り滝にいます。
 6 月  7 月  8 月  9 月
 8(木) 17(土) 26(月)   5(水) 14(金) 23(日)   1(火) 10(木) 19(土) 28(月)  6(水) 15(金) 24日(日) 

 6月8日(木)7:00〜17:00
 天候; 曇後雨  水量;大きい・・
 水温; 17℃〜19℃
 成果; 0尾 
 6月2日の台風二号で、小さいながら例年に無く大量に遡上してきた鮎が全く見えなくなってしまった。何十年ぶりの大水となり押し流されたのである。帰ってくるにはしばらくかかる・・・・・・・
6月17日(土)
   7:00〜18:00
天候;晴 水量;大きい
水温; 17℃〜20℃
成果; 0尾
台風3号の影響も有り水量下がらず、魚影未だ見えず。

6月26日(月)8:00〜16:30
 天候; 曇  水量;平水
 水温; 19℃〜21℃
 成果; 100尾  2s
三日前から捕れるように成った。サイズも良い。群れというものではなく、力のあるモノが来ているようだ。例年の十分の一にも満たないが、今後に期待したい。






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