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三角比について

 

高校数学で習うアレです

三角比は…たしか、高校の数学Tで習った気がします。 最初は“sin”や“cos”なんていう記号に戸惑うこともあったり…。 でも結局のところただの比です。見かけによらず(?)けっこう実用的です。 三角比は「長さ」と「角度」を結ぶ道具です。

※なぜ三角比の解説から始めてしまったのかと、少し後悔してたりします(^^;
数Tの内容から出発したからには、ベクトルとか、数列、微分積分、複素数などの考え方にも 触れるのが筋というものです。うーん…
(ご要望のメールが来たら書きます)

上の四角い領域にアプレットが表示されない場合は… Javaのページ

 

「直角三角形」という条件で…

なんで三角比ができたの?という話です。三角比のノリは、上のアプレットでマウスをグリグリして遊んでもらえれば 伝わると思います。だいたいのノリが分かればそれで十分です。イメージを持っていれば、 それを数式で表す方法を考えるのはそれほど大変ではありません。

はい。おなじみ(?)の直角三角形です。辺には名前がついてます。知らなくても全く困りません。 ただ、ここで思うのは“隣辺”ってなんで「となり」なんだろう…とか、 “対辺”ってどこに「向かい合っている」のか…という点です。“斜辺”に対してか?と考えても、どちらにせよ 斜辺にくっついているから「隣の辺」です。意味が分かりません。ということで、後回しにします。

次は「直角」という点に注目します。直角というのはすごくキツイ条件です。それは…

上の図のように、ある斜辺をもとにして「直角三角形」を作ることを考えます。 (ここでは、分かりやすくするために水平方向にダーっと線がある図を書いています。 別に水平では無い場合も多々あるのですが、そういった図形は、回転させれば結局上の状態に 帰着するので同じ扱いになります。)

「直角三角形を作れ」と言われたら、上図のように垂線を下ろすのが自然です。 すると、この時点で「対辺」の長さが決まってしまいます。同時に、斜辺から下ろした垂線の足が 「隣辺」のハジになるので、やっぱり隣辺の長さも決まってしまいます。

このことから、何か適当に斜辺を持ってくると、その時点で直角三角形の形は決まっちゃうよ… ということが分かります。

 

斜辺の「長さ」と「角度」が直角三角形の形を決める

「適当に斜辺を持ってくる」といっても、斜辺が持つパラメーターがはっきりしないと困ります。 一番上のアプレットを動かして遊ぶと、「長さ」と「角度」が重要なのかな…という気がします。 長さだけを、もしくは角度だけを変えた場合にどうなるのか、それぞれのケースを整理してみます。


「角度」を変えた場合については、口の開き方(?)が大きいほどガバっと対辺が長くなります。 「長さ」を変えた場合は、相似な感じで拡大・縮小されます。相似であっても「図形」としては もちろん違うものなので、やはり図形の形は斜辺の長さにも依存していることがわかります。

 

「三角比」をつくる

ここまでで、斜辺の長さと角度が大事だ…ということはだいたい分かりました。 じゃあこの2つをどうするのか、ということになります。 とりあえず2つあると面倒です。できることなら1つにまとめたいところです。 しかし、長さの単位は[m]で角度の単位は[度]なので、物理的に全く違うものを どうまとめるのか困るところです。

それならば単位が同じもの同士に目を向けてみます。 「長さ」に注目すれば、斜辺の他にも”対辺”と“隣辺”があります。 斜辺の長さを固定した場合、隣辺や対辺の「長さ」というのは「斜辺の角度」に1対1で対応していることは、 これまで確認してきた通りです。そこで斜辺に対して隣辺や対辺の長さはどのくらいなのか?ということを 比べることにします。「比べる」ということは、数式でいえば比をとることになります。

ここで、今まで何も書いていなかった「斜辺の角度」にあたる角度を、“θ”(シータ)[度]とおきます。 なぜθを使うのかは知りません。。。きっと昔のエライ人が勝手に決めたんだと思います。 このθを使って、一番長い「斜辺」の長さに対する「対辺」の長さの比を、 “sinθ”(サイン・シータ)と書きます。 また「斜辺」に対して、もうひとつ残っている「隣辺」の長さの比を “cosθ”(コサイン・シータ)と書きます。 あと、もう1つペアが残っています。「隣辺」に対する「対辺」の長さの比を “tanθ”(タンジェント・シータ)と書きます。 全て“θ”が関わることで比が決まるんだよ…という意味で、すべての比の名前にθが含まれています。

最初に直角三角形の辺の名前が意味わからんと言いました。 この辺の名前は、すべて角度θから見た物として考えています。 「斜辺」は、そのまんまです。ナナメってるから「斜辺」。 「対辺」はθから見て向かい側の辺です。「隣辺」は、θの隣に…確かになっています。 「斜辺」もθの隣の辺には違いないのですが、すでに「隣辺」と名前がついているので やっぱり残った方が「隣辺」という名前にするのが自然です。

結局のところ、三角比はすべて単なる長さの比だということです。「なぜ“sin”なんて名前なの? 」とか思います。 これは昔のエライ人が(以下略) 語源はラテン語だという話を聞いたことがあります。名前は別に重要ではありません。 もはや覚えるしかないです… 「分かりずらいよ。sinが斜辺と対辺の比…とか覚えられない!」とか思います。 これは字と同じで、使っているうちに覚えます。最初は定義を見ながら計算するしかありません。。。

 

三角比の解釈

sinやcosという定義をしたことで、三角形の形が数式で表せるようになりました。 とは言っても、最初は数字だけを見てもともとの図形をイメージすることは難しいです。 ここでは、もとの定義に戻ってイメージを整理しておきます。

sin”というのは、斜辺に対する対辺の長さのことでした。ということは、sinの値が大きいほど対辺は長い… ということになります。よって、sinは直角三角形の「タテに長い感じを表す(?)パラメーター」だと 言えます。次に“cos”ですが、cosは斜辺に対する隣辺の長さの比でした。このことから、 cosは直角三角形の「ヨコに平べったい感じ(?)を表すパラメーター」ということになります。

また、直角三角形のなかで一番長い辺は、最初に基準にとった通り「斜辺」です。 よって、対辺や隣辺と比を取ると、対辺や隣辺は斜辺よりも短いので比の値は必ず1より小さくなります。 だったら、sinやcosが1になる時はどんな時…?と考えると、

対辺や隣辺が斜辺に重なってしまうので、もはや三角形じゃなくなってしまいます。。。

あと、違う三角形だけどsinやcosの値が同じ…という場合もあります。 2つの三角形においてsinとcosがそれぞれ等しいということは、2つの三角形の「斜辺の角度θ」が同じということになります。 すなわち、2つの三角形が相似の時はsinとcosがそれぞれ同じ値をとります。

 

まとめ : 結局、三角比のどこが便利なの?

よく言われるのが、「測量」に使われるという話です。

高さの分からないビルなどの建物、山…などの高さを求めるためには、tanθを使うことで計算ができます。

…という話を高校の時に聞いたとき、自分は「え、それだけ?測量とか別に興味ないんだけど…」 と思いました。三角比を勉強する気が一気に萎えたのを覚えています(^^;

実際のところ、“三角形のカタチ”が分かると言われても別に嬉しくないです。 そもそも、このページは電子回路の設計に必要な数学ということで書き始めました(それにしてはダラダラ長く 書き過ぎました)。 しかし、回路を流れる電流なんかを計算するときに「三角形の形が分かった!すごく助かった!!」 というシチュエーションは想像しにくいです。というか、意味不明です。

三角比は、sinやcosという表記法を得たところから、三角形という「図形」から離れて どんどん独り歩きしていきます。具体的な図形から離れて抽象化された三角比は、 次ページの「三角関数」になります。この三角関数は本当に便利です。やばいです。

そんなわけで、実際使うのは三角関数の方なのですが、 三角関数を考える時にも、そのベースの三角比に戻ることで理解の助けになります。 そう考えると三角比はやっぱり重要なものなので、三角比の定義の意味からズラズラと解説しました。 なお、このページの解説は全て角度θが90度より小さい三角形(いわゆる鋭角の三角形)を使っていたのに対して、 ページの一番上のアプレットはθの値が360度全ての値をとります。また、角度の単位に“ラジアン”というのが 出てきてます。 いわゆる「三角比の拡張」や、「ラジアン」については三角関数の文脈で出した方が自然なので 次ページで解説します。




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