トップページ > フーリエ変換入門(FFT入門) > 前フリ(1)
これから,「フーリエ解析」という数学が何なのか,何に使えるのか,どうやって使うのか,・・・などを解説していきます。 フーリエ解析の応用先は本当にたくさんあるのですが,このページでは最終目標を「信号処理」ということにします。 「信号」といえば当然,電気信号のことなのですが,要は「波」です。
たとえば,オシロスコープでマイクからの音声波形を見たとします。 音は「音波」という名前の通り「波」なので,オシロの画面には何らかの「波形」が表示されます。 かといって,きれいなsinカーブではなく,複雑な形がごちゃごちゃ動いている・・・という感じになります。
電子回路では,音声にせよ,無線用電波にせよ,可視光にせよ,とにかく「波」を相手にすることが多いです。 これからフーリエ変換の話をやっていく上で,話の中心は常に「波」になります。(数学でいうところの「関数」がこれに相当します)
別に波と言っても特別な事はなく, 電子回路のいろんな場所では常に電圧の「ゆらぎ」が生じています。それをオシロスコープで見れば,もう「波」に見えてしまいます。波なんて案外どこにでも存在してます。
むかしむかし(といっても200年前くらいですが),フランスにFourier(フーリエ)さん (1768 - 1830) という人がいました。 フーリエさんは数学者らしいのですが,
と言いました。これはけっこうヤバイこと言ってます。
たとえば,「適当な関数 f(x) を sin関数 の足し算で表す」というのは下式のようなイメージになります。
sinx,sin2x,sin3x,... と,「様々な周波数のsin関数」を足し合わせている感じになっています。 また, 「足し合わせている sin は全部同じ振幅」 というのも不自然なので,それぞれ自由に振幅を定めてa1,a2,a3,... としています。
フーリエさんの言っていることは,「いろんな周波数のsinを好きな大きさずつ混ぜれば,どんな関数でも再現できる」という感じです。 しかし,いきなり言われてもなかなかイメージが湧きません。。。僕も最初は信じられませんでした。 これからの解説の中で色々と計算したり,証明したりして,確かにそれっぽいなあ・・・という流れにするつもりです。
(※「様々な波形」とは書きましたが,厳密には全ての波形を完全再現することはできません。 厳密に証明とかをやってみると,いろいろ制限があることが分かります。 教科書なんかを見ると「ほとんどすべての関数」なら大丈夫とのことです。。。 実際のところ,電子回路で扱うような信号(関数)であれば,余裕で「ほとんどすべての関数」に含まれるので実用上は問題ありません。)
では最初に,クロックパルスなどでおなじみの「矩形波」(くけいは)をsinで作れるか試してみます。 けっこうインパクトが強いと思ったので,この例を選びました。 sinはなめらかな曲線で,矩形波はカクカクした直線です。sin関数をどうやったら矩形波になるのか,最初はちょっとイメージし難いかもしれません。次ページでは,とりあえず難しい理屈は抜きで,ほんとうにsinで矩形波を作れるのか試してみます。