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研究室で経験したこと

良くも悪くも,大学・大学院で印象に残っている事を書いておきます.







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はじめに

キレイゴト並べても仕方がないので,本音を書きます. あと,技術関係の話じゃありません.


とりあえず,僕は学部4年生と修士1,2年の計3年間,主にMOSFETの研究を行っている研究室(ラボ)に所属していました. その間,研究室内の作業に必死だったので電子工作はやってません. たまにこっそりと新しい記事を書くことはありましたが, 新しい作品を作れなかったので寂しかったです.

研究室に在籍している期間内に,何度も大学に泊まって作業をすることがありました. 胃潰瘍になってロクに食事ができなくなった時期もありました. ハードですけど,実験屋なんてだいたいこんなもんです. ただ,いわゆる“ブラック研究室”とはまた違う問題もあるように感じました. 根っこの所というか,目指す方向というか,なんかズレてる気がしました. 別に,現在の日本の大学では決して珍しい事では無いと思います. 文句を言うつもりはありません. しかし,明らかに“セコい”感じのことを平気でやってのける現場が,どうしてできあがってしまったのか不思議でした. 今後の自分への教訓という意味も込めて,実際にあった出来事を記録に残し,大学院生の時点で思うことを書いてみようと思います.

青二才の勝手な言い分です,ご了承ください. 自分がオッサンになった時に若い頃の自分が何を考えていたかを見て, 顔を赤らめたりニヤニヤしたりしてみたいんです...


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おかしな(?)モチベーション

僕が居た大学は,国立の理系単科大学です.電気系の学科に所属していました. そもそも僕がそこへ行ったモチベーションは,非常に単純なものでした.

「子供の頃から面白くて不思議でしょうがなかった,電子回路について詳しくなりたい.」

・・・という,それだけです. 僕は決して成績が良いわけではありませんが, こんなホームページを書いているくらいなので, とにかく手を動かして物を作るのが好きでした. 子供の頃は雑誌の製作記事をそのままコピーして回路を作るだけでしたが, “いつか自分の力で回路を設計できるようになりたい”と思い, いわゆる「お勉強」が必要だと感じました. それが大学進学を決めたきっかけです. 電気が好きだと言うと,ダサいとか,オタクとか,たまに言われることもありますが, そんなことを言われても困ります...本当に,ただただ好きなだけなんす.

元々のモチベーションは「思うように回路を作りたい」ということでしたが, 学部4年生になって研究室に所属する時,どうするか迷いました. 回路系の研究室に入るのも魅力的だったのですが, 回路の中で使われている個々の電子部品がブラックボックスに見えて仕方がなかったのです. 趣味でトランジスタ等の半導体部品を作ることは不可能に近いので, 学生の間に半導体デバイスについて詳しくなりたい, 「自分で作る」という経験をしておきたい・・・と思うようになりました (今でも満足できるほど詳しくないです). そんな流れで,結局は半導体デバイスを扱う研究室に入ることにしました.

しかし,当然のことですが,「もともと興味があったから」という理由で大学に入ってくる学生が全てではありません. 実際,複数の教授に僕が今の大学に入ってきた事情を話したところ, 「君みたいな学生は珍しい」と喜ばれたことが何度もありました. でも,それは全く構わない事だと思います. 大学に居る間に面白さに気付いたり,手法について学ぶうちにのめり込んでいけば, 結果としてマトモな技術者の卵が出来上がるのではないかと思っていました. 別に大学生がガリガリと勉強をする必要もなければ, 散々遊んでおいて良いとも思います(親御さんに迷惑をかけない程度であれば・・・). ただ,わざわざお金払って理系の大学なんて所(野郎ばっかり!)に居るんだったら, 何でも良いから自分の血肉になる事をやれよ,と思います.


良いのか悪いのか分かりませんが, うちの大学では学部を卒業した学生の9割が大学院に進む風潮があります. もちろん,技術者としてツブシが利くように知識と経験を蓄えようとする人達もたくさんいるわけですが, 少々問題のある人も居ました. もちろん,全くやる気が無いのに進学するというのは言語道断というか, よほど時間とお金に余裕がある人なんだな・・・と羨ましくなります. そこまでいかなくとも,現状では全く別のモチベーションを持っている学生も居ます. そのモチベーションとは,

といったものです. 「自分をマシな技術者にする」というのが完全に抜け落ちてます. 最初は驚きましたが,なんだかもう慣れてしまいました.


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研究

日本の大学院の役目は,「研究を進めること」と「学生を教育すること」だと思います. 海外だと大学ごとに役割分担があるらしいですが,日本はどこでも両方やる感じになってます(建前は). ただ,研究を進めるだけなら国立の研究所だとか,企業のリサーチセンターとかあるわけなんで, やっぱり「教育」側にウェイトがあるんじゃないかと思います. 少なくとも,大学院に居るガキは「研究を進める」より, 「その後の人生の血肉になるようなノウハウを身に着ける」ことを意識したほうが良いと思いますし, 僕はそんな感じでやってきました. 僕は非常に泥臭い人間なので,いつもストレートにぶつかって,いつも損します(笑い).

研究ってやつを始めるにあたって,重要なのは「新規性」と「トレンド」だと言われます. 新規性ってのは,当然ですが,誰もやってない新しい事をやれということです. トレンドは,その分野の流行を意識してテーマ決めをする,という感じです. たとえばうちの分野だと,最近CPUの発熱が顕著だからチップ内の熱のマネージメントをしないとな・・・ とかいうのが2012年ごろのトレンドの1つでした.

新規性がある研究なんて,大学院入ったばかりのガキが簡単にできるもんじゃありません... 何が新しいか判断するには,既存の物を知る必要があります. トレンドも同様で,いきなり研究室に入った学生が最先端の研究のトレンドを知っているはずがありません. 何十年分も論文を読んで,今の産業の状態を知って,更にその中でネタを探すわけです. これができるのはある程度古株の人間ということになります.

そこで,ボス(教授)が出てきます. 研究畑で長い間仕事をしてきたボスなら,新規性の有無もトレンドも判断できます. 研究室に所属した学生1人1人にテーマを考えてあげて,とりあえず学生はそれに従う・・・ というのが最初はスムーズだと思いますし,合理的でしょう. ただしリスクもあって,油断すると学生がボスの操り人形になる可能性があります. 学生が自発的に動かず,すべてボスの言いなりになってしまいます. (むしろ,それを狙っている場合もあります・・・注意.)

研究の最終目的は,何か新しいことを見つけて理解した部分を, 学会とかペーパー(論文)として世の中に出すことです. きっと,それによって「世の中の役に立つ」ことになるんだと思います. しかし,僕は研究なんてタダの飾りだと思ってやってきました. 研究をやる,という名目で一通りの作業を経験し, 自分の技術を磨くところに時間を割きました. うちは実験屋なので,研究は実験データが無いと始まりません. 実験データを出すためには,サンプルを作ったり,測定器を組んだりする必要があります. 実験装置や測定器は忙しい時に限ってぶっ壊れるので, それを修理したり新しく組むための技術は必須になります. 結局,根っこは「技術」なんだと思います.

そんなわけで,僕は技術をまず最初に固めようと考えました. 今後,自分のスキルをじっくり高める時間なんて取れないかもしれません. 成果を急ぐよりも,メソッドを最適化するよりも, 「どんどん車輪の再発明をする」ことで既存の技術を使いこなし理解したかったんです. 結局,泥臭い温故知新という感じです. もちろん,たくさんの装置をいじるために練習をするので, その途中でいろいろとデータは出てきます. 僕はそのデータをまとめて,学会や論文に出していました. 簡単に書きましたけど,これをやるのは死ぬほど大変でした. 僕の姿を見かけた後輩に「ゾンビみたいな歩き方っすね」と言われたりしました...


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研究の目的は?

研究の最終到達点は「論文」か「学会」です. アタマ良い人たちが面白がって実験したり考えたりして, 重要な発見をしたり,次世代の技術が生まれたりする,その記録が論文だ,と僕は思ってます. マトモな論文がたくさん出ると,それだけ科学が前進します. そんなわけで,研究現場のモチベーションを上げるために「賞」とかいうのが制定されたりします. 賞なんてただのオマケなんですけど. たまに勘違いした人が「賞を取ること」を研究のモチベーションにしちゃったりします. たしかに,研究で商売やってメシ食ってる人には評判って大事なんだと思います. でも,学生は将来メシ食っていくために力を付ける時期です. ビジネスで研究やってるわけじゃありません.

ボスというのはメシの糧として研究やってる人たちです. 大きな論文を出したり賞を取ったりすると,多額の予算をとりやすくなります. 多額の予算をゲットできれば,それを使って新しい装置を買ったりして次の研究がやりやすくなります. すると,その研究でまた次の予算を取ってきて・・・という感じで,研究屋は自転車操業なんだそうです. そんなわけで,成果に強くこだわるボスというのも居たりします. しかし,大学で仕事しているということは,研究の他に学生の世話をしなければいけません. 学生の面倒を見るのが嫌ならば国立の研究所なり企業のR&Dなりに行けばいいと思います. それがお互いの為です.くだらんステータスや名誉のために日本の学生を腐らせないでください. とはいえ,嫁や子供を食わせていくための,苦肉の策かもしれません. みんな大変なんすよね.

また,賞や成果に惑わされる学生も少なくない感じです. まず,自分が就活する時のアピール・ポイントになると思い込んでしまいます. 実際に現場の方からお話を聞くと,結局学生はボスのパワーに強く依存しているわけなんで, 学生を評価するのに賞だとか成果はあまり見ないみたいです. そんなことない場所もあるかもしれませんが... 物事そんな単純だったら苦労しませんよね.

もうひとつ.奨学金というやつがあります.僕もお世話になりました. 大学院で「頑張って研究をする」と,ご褒美(?)として奨学金の返済が免除になったりするらしいです. この「頑張って研究をする」というのは,キレイな意味ではありません.要はハデなことをやればいいわけです. とにかく多くの学会や論文を出しまくるだけです.本当は学会や論文の質なんてピンキリなんですけどね... 僕は,返済免除が第一目的になっている人を間近で見てきました. ひどいもんです,スキルも無ければ熱意も無い,身に着けようという気さえ感じられません. 一番腹が立ったのは, そんな連中に「お前はどうしてそんな泥臭いことばかりやってんだ?早く“研究”しろよ.」 と言われた時です. その人たちが使う装置を直したり,スクリプトのバグを取ったり, ネットワークの管理をしたり・・・というのを, 僕は自分の研究そっちのけでやっていました.残念でした. キレるというより,本当に悲しくて,涙を流しながら作業していました.

しかし,そんな連中もボスから見れば「都合の良いロボット」なんですよね. モチベーションは別として,とりあえずガツガツ論文を出したり学会へ出ようとしてくれるので, ボスとしても対外成果を期待できます. 学生の中身は育たないので,結局はボスが“アドバイス”(入れ知恵)をするわけです. キラキラした成果に包まれた,中身空っぽの学生が出来上がります.それが企業にドヤ顔で就職していくわけです.

何がやりたいのか,僕にはわかりません. 学生育てるのが大学じゃないんですか.


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やるならやる,やらないならやらない.スジを通す.

まともに技術を身に着けたいと思っているとか, 純粋に研究に興味があって研究をしている学生なんてほんの一握りだと思います. かく言う僕も,ハズレ(?)の研究テーマを拾ってしまい, 自分の研究自体には全く興味がありませんでした. だから,本当にただ「食っていける程度の技術を身に着ける」ことだけを考えてやってきました.

これに対して,「技術」にも「研究」にも全く関心が無いのに理系の大学院に入ってきてしまう人もいます. そんな人に仕事を任せても,納期が遅れたり,モノを壊されたりするだけなので, 結局やる気のある人間の所にタスクを集中させるそうです.「適材適所」だそうです. (何言ってんだろう?) もし仮に,ラボに居るほとんどの人間がダラけたり,協調を放棄してしまった場合, 残る少数の人間がその処理を一手に引き受けることになります.大変なことです. たとえば,体を壊したりとかします.でも,医療費は全額自腹です.「自分で勝手にやったんだろう?」で処理されます. 実際,「やる人がやる,やらない人はやらない」というのは全世界で共通だと思います. ただ,やった人が認められるシステムくらいは欲しいところです. 尻拭いした人間に向かって「お前はいつまで泥臭いことやってんだ,研究しろ.」と言うような現場は, 少なくとも教育機関としてはマズいんじゃないかと思うところです.

本当にやる気が無いなら,やらなくて良いと思います. 大した熱意が無くても,要所を押さえれば修士号くらい来ます. 今の日本は修士号持ってれば何かと便利です. ただ,真っ当な熱意が無いのに功名心だけある人が増えてきているので, カタギに頑張っている人たちが負担を背負うことになっています. やらないなら,やらない.スジを通せ.


とは言え,たいして興味も無いのに大学院に入ってきちゃう人ってすごく増えています. いろいろ事情はあるんでしょうけど. でも,頑張って自分の興味を作ったり,仕事として淡々と片づける立派な人はたくさんいるわけです. 逆に,汚いやり方に手を出す人もいるわけですが. 自分のやりたい事と,自分の能力の方向性をうまく結び付けられなかったような感じの人はよく見かけます. 別に自分の能力を発揮することだけが人間の幸せだとは思いませんけど, きっとジジイになった時に後悔とかしちゃうんじゃないかなあ・・・となんとなく思います. 今の日本はある程度豊かなので,覚悟を決めて進学先を選ぶ必要も無いのかもしれません. 必死になる必要がなければ,向上心も育ちません. 恵まれた環境ゆえに,自分で自分の磨き方を知らない,教わらないで生きてきたのかもしれません. だから,本当に自信を持った子供って育ちにくいんじゃないかと思います. 僕も大した自信なんて無いんですけど... 本当の自信って,強くて優しい人を作ります. 自信が無いと,気弱で不安に襲われていたり逆に傲慢に突っ張っていたりと,何かとバランスが悪いもんです. セコい真似する研究者は,色々と情けない.

それにも関わらず適当に大学に入ってきてるわけですから, オツムの出来はそれなりに良いんでしょうね. ただ一言,「もったいない」.


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そもそも,大学って?

大学って何のため,むしろ,教育って何のためにあるんすかね? なんでもいいです,人それぞれで. ただ,人様に迷惑をかけそうな考え方だけはご遠慮願いたいなあ・・・と僕は思ってます. 大学の中がバイオレンスな感じになっちゃいそうなので.

正直,まだよく分かっちゃいないんですけど. 僕が高校生の頃は,浅はかに「難しい学問をするところ」程度に思っていました. たしかに,やたらと高価な教科書を買わされて,下手くそな(失礼)授業を延々と聞いていると, いかにも「俺はムズカシイ事をやっているなあ!」という気分になります. それを味わいたくて大学に入る人は多くないと思いますけど...

僕の目的は,「自分が知ってる事,自分が作れる物の幅を広げたい」ということでした. やっぱりものづくりが好きなので,それまで手が届かなかった技術を自分が習得した時ってすごく嬉しいんですよね. ただ,それだけ言ってると,「学費に恵まれたジャップ(Japanese)のガキが!貴族の遊び気取りか!?」とか, 文句を言われてしまいまそうです(今のところ,幸いにも直接言われたことはありませんけど).

やっぱり,自分も稼いで食っていかなきゃいけないわけです. 食っていくって事は,自分の技術で商売する事になります. 商売ができるのは,誰かがモノや技術を欲しがっているからです. 誰かがモノや技術を欲しがるのは,それが人を満足させたり,幸せにしたりするからだと思います.

すると,結局大学が提供しているものは「人間を幸せにするポテンシャル」みたいなヤツなんだと思います. 正直,そんなスゲーもんが学費を払っただけ,単位取っただけで手に入るわけないとは思います. それなりに必死こいてやらなかったら,どんな大学に入ったって,良いカンジの人間に仕上がって出てくるわけありません. 「良いカンジの人間」ってのは,技術,知識,情熱,経験・・・あたりを押さえた人かなあと今は思ってます. みんな「成績」が大好きみたいですが,成績が良いってのは“知識”だけです. たしかに,成績がズバ抜けている人はオトナに対するウケが良いです.でも,見た感じだと最初だけのようです. 大事なのはバランスじゃないかと感じています. ガキが大学に入ったところで,そんなもの簡単に身に着くわけ無いとは思うんですけど. とりあえず,頑張らなかったら始まりません. 一生懸命やって,技術を磨いて,人を幸せにできるようにする. それが,大学に入ってしまった人間の落とし前のつけ方だと思います.


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結果

例によって「技術→実験→データ→論文」の流れを意識して,3年間研究をやりました. 装置を納入するところ,つまりゼロから始めた形だったので,最初の2年間はずっと装置の立ち上げです. しかも要領の悪い泥臭いやり方をずっと続けていたので,ロクな結果はほとんど出ませんでした. なんとか,3年目になってようやくマトモな学会へ行きました. 体も精神もボロボロでした. もう学会なんか行きたくもなかったんですけど,現地で思いがけずリフレッシュする機会がありました. ( シリコンバレー旅行記 に書いた内容です ).

研究内容を発表する時,スライドの構成にはお決まりのパターンがあります. Background(研究背景)→Objectives(研究目的)→・・・と続きます. この「目的」の所は,普通は「〇〇に関して未知の内容を解明すること」みたいな感じになります. キレイゴト(入れ知恵された“研究目的”を棒読みするだけ)を言う場合も多くあります. 僕は,今となってはバカだったと思いますが,本当のことをそのまま喋りました. "The main objective for ME is to learn practical skills through an experience of building the measurement environment." (私のメインの目的は,実験系を立ち上げる事を通して実践スキルを身に着けることです.) 失笑されました.本当に馬鹿なことをやったと思います. それでも発表が終わった後,立派な発表だったと言ってくれた先生がいました. 嬉しくて,帰りの飛行機の中で大泣きしました.気が緩んでしまったのだと思います.

その後,IEEEなんとかという所から表彰されました.

ただ, この賞自体に全く文句は無いのですが,僕が受賞するとなると色々と煮え切らない所があり, 辞退しようとしました.スピーチで,このページに書いたような事を全部喋りました. 「俺はこんなもんのためにやったんじゃねえ!!」と叫びました. 本当に,僕はバカな猿です. チェアマンの先生,困らせてしまって本当に申し訳ありませんでした... 式が終わって帰ろうとした時,電機メーカの研究所職員の方が,僕に名刺をくれました. ギュッと握手されて,「ボクは君の考え方が正しいと思う.」と言ってくれました. なんだか安心して気が抜けてしまって,その会場でもボロボロ涙を流して泣きました. 嬉しかったです.名刺大切に持ってます.(結局,賞を持ってけと軽くお説教されて,いただいてきました...)

その後,修論を書きました.だいたい300ページくらいあります. 自分が立ち上げた装置の説明,スクリプト,雑務のために作ったネットワーク説明書類,全部説明しました. また馬鹿な事やってますが,それこそが「自分がやった仕事」だと思ってます. 序論の部分には「私はこの研究には全く興味も無いし,価値もわかりません.ただ,技術を身に着けるためにやりました.」と書きました. 正直なところ,300ページまで書いたのは半分嫌がらせです.腹が立っていたとはいえ,申し訳ありませんでした. でも,こんなバカな事ができるのは学生最後だと思ったので,きちんと考えた上でやらせていただきました.

そんな修論ですが,どういう訳か優秀論文賞をもらいました. おそらく研究発表の時に感情の入れ込み方が伝わったんだと思います. ウワベだけの薄い話じゃない,くらいは気迫で伝わるみたいです. ただ,別に審査員の先生方は僕と一緒に仕事をした訳ではないので, 僕の技術が高まった事を確認できたとか,そのおかげで助かったとか,そういう話とは違う気がします.

それに,僕はたまたま運が良かっただけかもしれません. 実際,ボスにも恵まれず,研究設備にも恵まれず,優秀なのに困り果てている友人がいます. 僕も大学院の最後まではずっと闇の中という感じでしたが,最後に分かりやすい形で区切りがつきました. もっともっと,苦しい思いをしている人はたくさんいます. どんな状況でも,いちおう学生やってるんですから,まっすぐにスジを通して悪いことなんて無いと思うんです. 大学の現場は,それくらいは保障してくれるはずです(甘いかもしれませんけど). 大学を社会に出るための通過儀礼程度に思うのは間違っていると思いますが,別に大学が終点なわけでもありません. どうか,体に気を付けて.

泥臭いやり方,さんざんバカにされました.「車輪の再発明は無駄だ,そんなこと大した価値は無い」とも言われました. 技術を学ぶ姿勢に対して,「それはキミの趣味でしょう?」とあしらわれた事もありました. とりあえずここまでやってきて,「本気出して,正直にまっすぐやれば,何かある」くらいの認識です. 非常にぼんやりしています... でも,科学は自然が相手とはいえ,結局我々は人間社会の中で, 人同士のつながりとして技術学んだり研究やったりしているんだと思います. なんであれ,相手がいるんだという意識だけは持っておこうと思うところです. 技術は人の為なり,ですね.



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古典回路屋でやりたい事

もしかすると,今後は泥臭い熱血だけの技術者なんか流行らないかもしれません. 家族を養っていく時は,スタイルを変えなきゃいけなくなるかもしれません. それでも,趣味だけは自分に素直にやりたいと思います.

このホームページでは,面白いなーと思った事を,てきとーに書きたいと思ってます. でも,薄っぺらい演技じゃないです.形だけの授業でもないです.血が通っているやつです. ただ,例のごとく僕は修羅場人間なので,ちょくちょくブランクができます. ライフワークのつもりですので,もし気に入っていただけましたら,気を長くしてお付き合いいただければと思います.


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