天雷无妄 　震下、乾上
「時の過ぎ行くままに。」
じたばたせず、自我を捨てて自然の流れに沿うことが肝心。
思わぬ天災などに要注意。
小吉
「无」は空、無と言う意味。「妄」は訓読みでは「みだり」と読み、妄想と言うように内実の無きこと。「无妄」は妄想が無い、真心、虚心坦懐、とでもいったところです。
自然界の動きは何かの目的を持つものではありません。太陽は誰かを照らそうと昇るのもでも無ければ、雨は誰かを濡らそうと降るものでもありません。天行は人為の関わるところでは無く、四時淡々と進んで行きます。
その結果として自然は我々に豊かな稔りをもたらしてくれることも有れば、災害で苦しめることもあります。我々はそれをコントロールすることは出来ず、適切に対応するしかありません。
この卦は吉も凶も、良いも悪いも無いのですが、強いて言えば小吉というところです。
（概説）
「願いごと」ー自然の流れに任せること。成るようになる。
「商ごと」ー利不利は自然の成り行き。
「相場」ー高い。
「受験」ー真面目に取り組めば好成績。
「病気」ー養生すれば全快に向かう。無理な治療はせぬこと。
「就職」ー時間がかかるも成就する。
「天気」ー雨。
「旅行」ー無理せぬがよろし。思わぬ天災に遇うかも知れず。
「開業」ー無理せぬがよろし。
「転業、移転」ー無理せぬがよろし。
「失物」ー今は出ません。そのうちに見つかることもある。
「方角」ー東、西北。
「初爻変爻」の場合：
　　自然のままに進んでそれなりに願いが叶う。

「二爻変爻」の場合：
　　「無望」で、こうしたい、とか成果を上げたい、という考えを持たないこと。
　　自然の流れで行うことでは、それなりの成果を上げることができるでしょう。

「三爻変爻」の場合：
　　思いもかけない災難に遇うことに注意。
　　親切にしたことを疑われたり、ぬれぎぬを着せられたりします。

「四爻変爻」の場合：
　　じたばたしないように、自然のまま、の気持ちを忘れぬように。

「五爻変爻」の場合：
　　問題があっても成りゆきのままに解決するでしょう。
　　「薬無くして喜び有り」と書かれています。

「六爻変爻」の場合：
　　気の付かぬうちに強気になっていませんか？
　　「自然のままに」という過剰意識が自然のままで無くなっている、との忠告です。 　　

无妄は大いに亨（とお）り貞（ただ）しきに利（よ）ろし。それ正にあらざるときはわざわいあり。行くところあるに利（よ）ろしからず。

彖に曰く、无妄は、剛外より来たりて内に主となる。動きて健なり。剛中にして応ず。大いに亨（とお）りてもって正しきは、天の命なればなり。
それ正にあらざるときはわざわいあり、行くところあるに利（よろ）しからずとは、無妄の行くはいずくにか行かん。天命助けず、行かんや。

象に曰く、天の下に雷行き、物ごとに无妄を与う。先王もってさかんに時に対し万物をやしなう。

初九。无妄なり。往けば吉なり。
　　　象に曰く、无妄の往くは志を得るなり。
六二。耕穫（こうかく）せず、しよせざれば、往くところあるに利（よ）ろし。
　　　象に曰く、耕穫せずとは、いまだ富まんとせざるなり。
六三。无妄の災あり。あるいはこれが牛を繋ぐ。行人の得るは、邑人の災なり。
　　　象に曰く、行人の牛を得るは、邑人の災なるなり。
九四。貞にすべし。咎なし。
　　　象に曰く、貞にすべし、咎なしとは、固くこれを有（たも）つなり。
九五。无妄の疾（やまい）あり。薬することなくして喜びあり。
　　　象に曰く、无妄の薬は試（もち）うべからざるなり。
上九。无妄なり。行けばわざわいあり。利ろしきところなし。
　　　象に曰く、无妄の行くは、窮まるの災いあるなり。

（解説）
「天命を受け入れ、それに従う、その心がけであれば思うところ大いに通じる。心を正しく保たねばならない。
策を弄したりすれば災いを自ら招くことになる。
無理に進もうとしてもうまくいかない。」

彖伝（たんでん）に曰く、无妄の卦は「天地否」の初六の陰が陽にとって代り、中心となった形で、逼塞状態から転じ強く動こうとするときである。
天命に従えばこそ思うところ大いに通じるのであり、それに反すれば災いがある。
无妄の卦の時は天が進むにふさわしい時ではない、というのに何処へ進もうとするのか。
天は（邪魔はしないが）助けもしない。それでも進もうとするのか。

象伝（しょうでん）に曰く、天に雷、この自然の無心の行いにより万物が生育する。古来王たるものはこれに則り春には種を撒くなど自然の流れに応じて万物を育成してきた。

初九。无妄の意味に心して進めば吉。
　　　象伝に曰く、无妄の初九は剛健であり、天の助けがあるから進んで目的を達することが出来る。
六二。良い収穫を得ることを期待せずひたすら耕作に励み、良田になることをなることを期待せずひたすら開墾に励む、
　　　この心がけであればうまくいく。
　　　象伝に曰く、今は成果を求めず自然の流れに従うのがよろしい。
六三。思いがけぬ災難に遭う。牛を繋いでおいたら通りすがりの旅人が盗んで持って行ってしまう、
　　　旅人は儲けものだが、嫌疑をかけられた村人はとんだ災難、というようなもの。
　　　象伝に曰く、旅人が牛を手に入れ、村人が疑われて災難を被る。
　　　（このようなことにならぬよう気を付けろ。）
九四。无妄の意に心し、強気の心を抑えれば咎めはない。
　　　象伝に曰く、貞にすべし、咎なしとは、堅くその心を保つことである。
九五。病気になるのも天命であり、治るのもまた天命。薬など飲まずとも回復の喜びがある。
　　　天命とはこのようなものである。
　　　象伝に曰く、薬を飲まずとも治るように、無理に策を用いてはならない。
上九。无妄の時、進めば災難を招くことになる。何のメリットもない。
　　　象伝に曰く、无妄の窮まり、すなはち无妄であることに心を捉われ過ぎるのもまた災いがある。
　　　（柔軟な発想を忘れるな。）

＜実践的易語録＞
＜最初のページへ戻る＞