乾為天  乾下、乾上
「上り竜、下り竜」
天に向かって登る竜のように威勢よく、万事順調。発展の象。
ただし、登り過ぎた竜は下るように、調子に乗りすぎ、慢心、傲慢は要注意。

中吉
この卦は陽爻だけで出来た大変強い卦です。
易経では64卦の最初に出てきます。

「乾、元亨利貞」とあります。
「元亨利貞」にはいろいろ解釈がありますが、普通は「元(おおい)ニ亨(とお)ル。貞(てい)ニ利(よ)ロシ。」と読み、「願望するところは大いに通る。心を正しくするのが宜しい。」と解釈します。

にもかかわらず、大吉ではなく中吉とするのは、強すぎることがかえってマイナスになる危険を持っているからです。自信過剰、独善的、自己中心などにならぬよう常々心がけることが必要です。
また、運勢は今がピークでこれから段々悪くなる、とも考えられます。自重が肝心です。

この卦は威勢が良い割に内実が伴わない、という暗示も有ります。しっかりした心構え、着実な前進が大切です。
行くか止まるか、やるか止めるか、ならこの卦の判断は、GOです。
一旦決めたら、前進また前進、で後退はよろしくない。
しかし突っ走るのはいけません。慎重に、着実に、を心がけることです。

「天行ハ健ナリ。君子以ッテ自ラ強(つと)メテ不息(やまず)。」とありますから、気の抜けない状況が続く覚悟も必要でしょう。


(概説)
「願いごと」ー心正しければ、とおる。
「商ごと」ー成功する。ただし調子に乗りすぎぬこと。
「相場」ー短期的には上がる。高値圏なら売り。
「受験」ー優秀な成績を上げるが、慢心すれば失敗する。
「病気」ー医者の指示を守り、養生に専念すること。無理は禁物。
「就職」ーよろし。目上の人の意見を聞くもよし。
「天気」ー快晴。
「旅行」ー出立、よし。仲間と連れ立って行くによろしい。
「開業」ー時期を得てよし。
「転業、移転」ー現状維持がよろし。
「失物」ー見つかる。人に聞くのも良い。
「方角」ー西北
「色」ー白


「初爻変爻」の場合:
  まだ時期尚早、準備不足です。もう少し待つのが良いでしょう。

「二爻変爻」の場合:
  いよいよスタートです。先輩などの意見を聞いて慎重に進んでください。
  なお、病気にはあまりよろしくありません。医者とよく相談されることです。

「三爻変爻」の場合:
  更に一層の努力や慎重な検討が必要です。
  こんな筈ではなかった、ということが有るかもしれません。

「四爻変爻」の場合:
  いろいろ迷うことが有るかもしれませんが、その時々の状況を的確に判断し、てきばきと決断することにより物事は進みます。
  余り心配することはないでしょう。

「五爻変爻」の場合:
  順調に進みます。どんどん進んで良いでしょう。
  できるだけ人と相談するのが良いでしょう。

「六爻変爻」の場合:
  強気の運勢もぼちぼち折り返し点です。ぼちぼち事態の収拾を図ることを考えて下さい。
  新しいことは手控えるのが良いでしょう。   


「乾は元いに亨(とお)る。貞に利(よろ)し。」

初九。潜竜なり。用うるなかれ。
九二。見竜田にあり。大人を見るに利ろし。
九三。君子は終日乾乾し、夕べに擢若たり。危うけれども咎なし。
九四。あるいは躍りて淵にあり。咎なし。
九五。飛竜天に在り。大人を見るに利ろし。
上九。亢竜悔あり。
用九。群竜首なきを見る。吉なり。


(解説)
「乾の卦を得た時は、大いにことを遂げることができる。貞に(志の中心がぶれないように)すればよろしい。」

初九。地下に潜んでいる龍のように、まだ飛び出す時ではない。せっかちにならずゆっくり構えること。
   では何時まで待つか。場合によっては来月、数か月後、来年、といったこともある。
九二。地上に現われたばかりの龍。
   自分一存で判断せず、大人(立場の上の人、目上の人、あるいは識者など)の意見を聞くのがよろしい。
九三。君子は終日、乾乾(けんけん、剛健にして勤め励み)、夕べになればタ若(てきじゃく、おそれ慎み反省する)。
   それぐらいの心がけで何とか難を逃れるものである。君子で無い者は言うに及ばず、容易には進めません。
九四。龍が或は跳躍しようとし、或は淵に潜み、迷っている。グイっと進んで問題は無いが。
九五。龍が天に飛躍し、その勢いを天下に示す。独断に陥らないように注意。
上九。亢龍(こうりゅう、上り詰めた龍)。進む先が無くなり、悔いることになる。一旦止まれ。
用九。群がる龍が、自分が目立とうと競い合って首を出すようなことをしない。このようにすれば吉。


「常用字解」(白川静)によると、「乾」という字は車に立てた旗を長くたなびかせて進む形、と書かれています。
爽やかで元気が良い字ですね。
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