21「乾為天」(けんいてん)

威勢良いばかりが能じゃない

 能力に満ち溢れ、バリバリ仕事をしているあなた、目下絶好調で、当たるところ敵無しのあなた、羨ましいですね。素晴しいことです。だからといって、調子に乗りすぎない様に気をつけなさい。 易では竜を活力あるものの象徴とし、威勢のいいあなたに忠告しています。

君子は終日乾乾し、夕べにてき若たり。あやうけれども咎なし。

 力があるものは常に危険と隣り合わせになっているのだ、君子たるものそのことを肝に銘じ、明るい間は努め励み、そして夕べにはその日のことを反省しおそれ慎む、このような態度であってやっと危険から免れることが出来るのです。また、

飛竜天にあり。大人を見るによろし。

 天を駆けるように絶好調のときでも、黙って俺についてこい、と突っ走っていては駄目、 こういう時こそ人の意見を聞くことが大切です。それも、「大人」、有識者の意見を聞くことです。きっと辛口の意見でしょう。さもないと、

亢竜悔あり。満れば久かるべからざるなり。

 奢り高ぶる者はすぐに悔やむことになるヨ、人間、絶好調がそんなに長続きする訳が無いではありませんか。

 またこうも書かれています、

潜竜は用うるなかれ。

 いくら力のある竜といっても、ウオーミングアップ不足のものを慌てて引っぱり出してはいけません。例えば有能な若手を抜擢するのも限度があります。また、どんないい計画でも十分に練る前に提出したりすると、袋叩きにあって潰されてしまうでしょう。
 エネルギーを蓄えるときとそれを一気に放出するとき、この見極めが肝心です。

なお、この「乾為天」が、六十四卦の第一番目、最初に出てくる卦です。


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