「時言」

◎サミットの重圧

 沖縄県名護市の東海岸一帯は県の自然環境保全指針で最優先の保護ランクに位置付けられている。その一角が、米海兵隊基地の普天間飛行場の代替施設が造られる辺野古沿岸域だ。
 施設が陸上になるのか、海上なのか、あるいは陸と海にまたがるものなのか、今はまだ決まっていない。いずれ新たな基地が出現するのは間違いないが、静かな集落ときれいな海を見ながら辺野古の砂浜に立つと、どんな形態にしろ場違いな施設になるのは確かだ。

 辺野古漁港のそばにヘリポート建設阻止協議会の監視事務所がある。代替施設に反対する集落の人たちが、交代で小屋に詰めている。今月中旬、ここを訪ねた。 「サミットって世界の偉い人が来るんでしょ。なんで沖縄でやるの」「何を話すんですか。ここ(辺野古)に来て皆の話を聞いてくれないの」

 こんな素朴な質問が次々と口をついて出てきた。正直言って返答に困った。グローバルな問題を首脳が討議する、といった紋切り型の説明をしても分かってもらえない。主要国首脳会議(沖縄サミット)開催と普天間飛行場の移設は無関係という論を全く信じない。地元の関心とかけ離れた世界的な議題などは聞いても何の足しにもならない、という感じだ。

 沖縄サミットまであと三カ月、県内の準備は大車輪で進んでいる。道路工事、施設造り、イベントの準備と関係者は息のつく暇もない。静寂に包まれた辺野古のゆったりした雰囲気は、喧騒(けんそう)と無縁のようにみえるが、住民の気持ちは違う。事務所の壁や天井に張られた支援者の激励文や寄せ書きが住民の張りつめた気持ちを代弁している。
 年長のおばあさんから「山の恩・海の恩」の話を聞いた。貧しかったが豊かな生活を与えてくれた自然への感謝を忘れてはならないと言う。
 サミット熱と大掛かりな経済振興策は、辺野古の反対派住民に重くのし掛かっているのである。

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