連載企画「カウントダウン 沖縄サミット」
3回続きの(下)「軍民共用空港」

◎政治的結論の危うさ
 不透明な民間空港機能

 沖縄県の稲嶺恵一知事が普天間飛行場の代替施設を、民間機も乗り入れ可能な軍民共用空港にするよう求めるのは、空港を核とした「臨空型」の経済圏域を完成させ、県北部全体の経済振興の拠点とする青写真を描いたからである。
 昨年暮れ、名護市の岸本建男市長が普天間移設を正式に受け入れ、政府は「軍民共用空港を念頭に整備を図る」旨閣議決定した。名護市・辺野古沿岸域の代替施設の性格は決まったが、難問が潜在する。

 軍民共用空港計画は、稲嶺氏が一昨年十一月の知事選で打ち出した選挙公約にすぎなかったが、現実の計画に変わった。
 共用空港の形態は、今後設置される政府、県、地元の協議会で議論される。政府は七月の主要国首脳会議(沖縄サミット)が閉幕すると、代替施設の工法、規模を含め具体化の作業を急ぐ。現在は、そのための「助走」段階だ。
 いずれ県側から共用部分の考えが提示される予定だが、県は大規模施設を求め、地元名護市はできる限り小さなものにするよう主張、まとまっていない。率直に言って、県の作業は進んでいないようだ。
 だが協議会が発足すれば、共用空港が果たして機能するか、という現実的な問題に議論は直面せざるを得ない。十年間で千億円を投入する北部振興計画の中心となる空港だから、空港機能が発揮できるか否かは決定的要因だ。

 空港機能を考えた場合、最も重要なのは、軍民共用という制約はあるが、民間施設がどの程度の需要を見込めるかに尽きる。
 主力の観光に加えて県北部特産品の物流増の可能性調査が欠かせない。需要予測が明確でないまま計画が進むようだと、施設が遊休化し、全体が基地化してしまう可能性も否定できない。
 近年、地方の新設空港は地域活性化を目指しながら失敗している例が多い。過大な需要予測をしたためだ。コミューター空港の失敗、生鮮食料品の物流活発化を狙った、いわゆる「農道空港」は、無駄な公共事業の典型として批判されている。

 沖縄県は北部地域の定住人口を、現在の十二万人から十五万人に増やす計画を決めている。観光資源に恵まれながら過疎化が進む北部地域に空港設置は長年の夢だった。その意味では、基地問題の「緩衝」と、夢を実現する可能性を軍民共用空港は持っている。
 稲嶺県政がスタートして以来、政府の沖縄振興策は着実な広がりを示している。沖縄振興二十一世紀プランは将来を見据えた計画である。このプランで注目されるのは、現在の那覇空港に平行滑走路を造る沖合展開事業が柱として現実味を帯びていることだ。
 県の予測では、十年後には那覇空港は旅客増で機能マヒに陥るという。県は昨年八月、専従チームを発足させ、経済界も加わった建設促進の動きが活発になっている。
 ところが軍民共用空港と那覇空港の増設計画の整合性がはっきりしない。沖縄国際大学の富川盛武教授が言うように、軍民共用空港は「代替施設受け入れのために政策上の優位性から決まった」とすると、需要とは関係なく完成させることに意味がある、という見方ができる。

軍民共用空港は、地域振興と県民の基地アレルギーに配慮した政治的帰結である。この帰結が将来の経済的果実につながる保証はない。軍民共用空港に過大な期待を持つことは危うい。
 政府関係者も共用空港の将来性に否定的だ。実務的に考えれば、現段階ではそうなるのかもしれない。
 県経済界首脳の一人は「そう遠くない時期に米海兵隊は沖縄から撤退する」と自信たっぷりに言った。だから「名護の代替施設は県民の財産になるようにしないと駄目だ」と、秘密資料をめくった。

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