☆普天間移設問題で米政府のいらだちが高まってきた。
 SACO最終報告の海上基地構想が地元の反対で挫折、新たな移転先の模索が始まっている。稲嶺県政は海上案に代わる軍民共用の「陸上案」を公約している。

核心評論「米国の本音」

◎基地問題噴出の危険も
 難題抱えた政府と沖縄県

沖縄基地問題

 来年七月の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)に向けた米政府の「本音」がはっきりした。
 クリントン大統領が「基地問題が未解決な状態で沖縄に行きたくない」と語ったことは、米海兵隊基地、普天間飛行場の移転問題が、返還合意から三年がたちながら全く返還のめどさえ立たないことへのいら立ちを示すものだ。
 だが、代替施設としてのキャンプ・シュワブ沖の海上ヘリ基地計画が挫折した経緯やその後の政府や沖縄県の対応を見れば、国や県に「奇手」があろうはずがない。政府は「(大統領が)期待感を表明したのだろう」(野中広務官房長官)と冷静さを装うが、本心は「日本の事情が分かっていない」と考えているようだ。

 大統領発言には伏線があった。
 「沖縄サミット」開催決定に至る米政府との水面下の折衝で何があったか分からない。しかし米政府高官は、サミット開催を歓迎する一方で、大統領の沖縄訪問に際しての「環境づくり」や、サミットまでに普天間返還のめどをつけるよう再三言及した。そして、大統領は沖縄サミットに最大級の賛意を表明した。
 日本政府にとって「基地の島」でサミットを開くことの懸念材料が多かったことは言うまでもない。米政府にしても同じだ。だが米側に、深刻な沖縄の基地問題を前進させるてことしてサミットを利用する戦略があった、と見るべきだろう。最終的には小渕恵三首相の判断で沖縄サミットが決まったが、首相の思惑も似たようなものではなかったか。
 首相にとって、新たな日米防衛協力体制を確立するためには、沖縄の基地問題は避けて通れない。この基地問題が、日米特別行動委員会(SACO)最終報告から二年半たつが、返還対象の沖縄米軍基地十一施設のうち、返還が実現したのは一カ所だけだ。SACOの着実な実施が言われながら、日米間で合意した基地の整理・統合・縮小はほとんど進んでいないのである。
 普天間問題の進展を図るべく国も県も経済振興を中心に据えた「那覇軍港移転」に全力を投入しているが、「普天間」にたどり着くまでは相当な時間が予想される。

 沖縄サミットが、首相や官房長官が言うように、沖縄の歴史的背景に政府が十分意を尽くす配慮があったのは間違いない。同時に基地問題を視野に入れた高度な政治判断だったことも忘れてはならない。
 基地問題解決のめどが一日でも早く立つことが望ましいのは、そのとおりだ。だから首相も万難を排して沖縄サミットを決めた。サミット開催は、どんな経済振興のメニューも及ばない効果が期待できるのである。
 だが、クリントン大統領の発言で雲行きがおかしくなりはしないか。基地問題解決の道筋は、日本政府と沖縄県との折衝に加えて日米両政府間の外交で答えが出される。政府は「海上基地」の挫折を教訓に、沖縄県内での世論のまとまりを期待するだけで、表立った「介入」を避けている。稲嶺恵一知事も、普天間移転作業を早める考えはなさそうだ。早めようとしても、県内事情が許さない。

 米政府の言い分はサミットと基地問題、特に普天間問題は密接不可分という立場で、二つは関連しないとする日本政府との間で考え方が違っている。大統領発言は基地問題が前進しないことに対する米政府のいら立ちが限界点に近づいた印象を与える。
 しかし、沖縄県民が驚き、歓迎したサミット開催が、今後、日本政府の意図とは逆に、基地問題をあぶり出すことになるようでは、「サミット成功」もおぼつかなくなる。
 米政府の性急なまでの基地問題への言及は、決していい結果をもたらさない。

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