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高祖、沛豊邑中陽里人。 姓劉氏、字季。 父曰太公、母曰劉媼。 其先、劉媼嘗息大澤之陂、夢与神遇。 是時雷電晦冥。 太公往視、則見蛟龍於其上。 既而有身。 遂産高祖。 |
高祖は、沛の豊邑中陽里の人なり。 姓は劉氏、字は季。 父を太公と曰ひ、母を劉媼と曰ふ。 其の先、劉媼嘗て大澤の陂に息ひ、夢に神と遇ふ。 是の時雷電して晦冥たり。 太公往きて視れば、則ち蛟龍を其の上に見る。 既にして身める有り。 遂に高祖を産む。 |
現代語訳/日本語訳
高祖は、沛県豊邑中陽里の人である。
姓は劉氏で、字は季であった。
父は太公と称され、母は劉媼と称された。
大昔、劉媼が大きな沢の堤で休んでいると、夢で神に出会った。
このとき雷が落ちてあたりが暗くなった。
太公が行って見てみると、劉媼の上に蛟龍がいた。
まもなく、劉媼は身ごもった。
そして遂に高祖を産んだ。
解説
★高祖、沛豊邑中陽里人。
こうそは、はいのほうゆうちゅうようりのひとなり。
今の江蘇省沛県。
★姓劉氏、字季。父曰太公、母曰劉媼。
せいはりゅうし、あざなはき。ちちをたいこうといひ、ははをりゅうあうといふ。
媼の字には、老いた女性に対する敬称や母親などの意味があるので、
まとめてひとつの固有名詞で無い可能性もある。
★其先、劉媼嘗息大澤之陂、夢与神遇。是時雷電晦冥。
そのさき、りゅうあうかつてたいたくのはにいこひ、ゆめにかみとあふ。このときらきでんしてかいめいたり。
「其の先」は"ずっと以前"の意。
「陂」は堤。「澤」は「沢」と同じ。
「晦冥」はいずれも"暗い"の意。
★太公往視、則見蛟龍於其上。既而有身。遂産高祖。
たいこうゆきてみれば、すなはちこうりゅうをそのうえにみる。すでにしてはらめるあり。つひにこうそをうむ。
「蛟龍」は鱗のある龍。水中に棲む。
「身」はみごもった体を表す。
「遂に」は1.そのまま 2.結局・とうとう 3.以外にも の意である。