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頂いたご質問
FAQ

1(60代男性)

 数ヶ月前に総入れ歯を作りました。上は問題なく使えているのですが下が未だに痛く調整を続けています。きちんと合って使えるようになるのでしょうか?いっそのこと他の医院に行ったほうがよいのでしょうか?

お答え

 入れ歯が合わず痛むことはつらいものとお察しいたします。私自身の経験や一般論での回答になることをご了承ください。
 まず、入れ歯というものは歯の無い歯肉の部分、アゴの骨を覆っている粘膜の上に乗せて噛むものです。痛みを感じる場合というのは入れ歯を入れて咬んだときなどに噛む力が入れ歯を通してアゴ全体に均等に分散されればつらい痛みは出ません。入れ歯の床が接している粘膜は硬い入れ歯と硬い骨とに挟まれていますから噛む力が全体に分散されず局所に集中してしまえば結果痛むことになります。硬い入れ歯とやわらかい粘膜が接している環境である限り、どんな方でも、どんな精巧に作られた入れ歯であっても痛みが出てしまう可能性は持っているというのが正直なところです。ですから入れた後の調整も当然必要になります。
 このような理由があり、当たり、痛みが出るのですがもっと突き詰めて考えてゆくと噛む力が全体に均等に分散されない理由があるわけで、その原因ひとつひとに対しての対応が必要になります。アゴの型を取り、咬みあわせを決めて歯の大きさや並べる位置を決めて(いわば設計ですね)入れ歯の形に完成させる(施工から竣工ですね)それぞれの段階で、たとえば型取りをする材料の変形であったり、石膏が固まるときの膨張であったり、硬い合成樹脂に置き換える(重合)段階での収縮とか・・・目には見えないごくごく微細などうしても避けられないエラーが起きてしまいます。また、総入れ歯の患者さんはアゴの関節の自由度がかなり大きく、診療室で決めた咬みあわせと実際にその患者さんが習慣としている咬み合わせの位置が微妙にズレていることも多々あります。患者さんによって入れ歯を入れることでだんだんと咬み合わせの位置がその患者さんの本来の咬み合わせの位置にリハビリテーションされてくることさえあります。そのほか、アゴの形が悪く、骨にでこぼこがあったり、粘膜がぶよぶよしていたりするとそれだけでも型や咬み合わせが正確に取れない要因になったり、直接痛みを誘発する原因にもなります。
 このような理由でどうしても調整が必用になりますし、下の総入れ歯は馬蹄形のような形でり、上の総入れ歯よりアゴと接する面積が狭く、アゴ骨の状態も悪い患者さんが多く痛みが痛みが出やすいのが正直なところです。
 上下の入れ歯を外して手に持って咬み合わせたときに一番安定する咬み合わせ具合と実際にお口の中に入れて咬んだ時(入れ歯が痛みは別として)アゴ全体に収まっていて入れ歯の咬み合わせ具合が極端にずれていない状態で食事の時の痛みのみであればもう少しの調整で改善できると思いますが、どのようなアゴの形なのか、どのような咬み合わせなのか、どのような方法で型や咬み合わせを取っているのか、どのような調整をしているのかがわかりませんので具体的な調整の期間や転院に関してなんとももうしあげられません。申し訳ありません。
 私個人の経験から言えることは入れ歯を入れるまでの様々な処置と同様、もしくはそれ以上に調整は大切だし、時間をかけて行う必要のある医療行為だと思います。
 一日も早く快適にお使いいただけ、楽しいお食事が取れますようお祈りいたします。

2(30代女性)
 2歳4ヶ月の女の子のママです。以前市の検診のとき、まだ断乳ができていなくて虫歯になるから早くやめなさいと歯医者さんに言われました。2歳過ぎた今でも寝るときだけはおっぱいを飲みながら寝ています。無理やりでもやめさせたほうがよいですか?

お答え

 「おっぱいを飲みながら」とのことですので母乳だと思いますが・・・。
確かに検診を担当された歯科医師の言うとおり母乳であっても糖分が含まれていますから虫歯のリスクはあるといえます。ただ、「母乳」ということを考えれば、無理に嫌がるのを断乳させる必要はないではないでしょうか?理想は確かに1歳半ぐらいまでに断乳できればよいのですが断乳出来ていないからと言ってあまり焦らないほうが良いと思います。
 本来哺乳という行為は生きてゆくための免疫力を補ったり、栄養補給のためのものですが人間には他の哺乳類にはない複雑に分化した感情があります。赤ちゃんにとっておっぱいは生きてゆくために必要であるとともに心の成長の面でもお母さんの愛情を感じ取るとても大切な行動と思います。私は歯科医師という立場からも母乳育児をお勧めしています。
 三つ子の魂百まで、と言われるように3歳までの間に様々な成長をしてゆきます。極端な例えですが、人間はお母さんのお腹のなかで受精卵から胎児にと成長し、ヒトとして産まれるまでの間に、人類が海から進化して今の人間の形になったのと同じ進化を成長という形で経ています。そして産まれてからの数年で感情の分化まで起こります。このように身体だけでなく心も日々著しく成長している時期にお母さんの愛情は何事にも変えられないものを思います。母乳を飲みながらおっぱいを通してお母さんとスキンシップして、お母さんの愛を受け取っているのだと思います。眠りつく間だけというのであれば栄養的には毎食の食生活で足りていて眠りつくまでの精神的なよりどころをおっぱいを通してもとめていると考えてみてください。精神的に未熟だからこそ、お母さんの愛情が必要なのではないでしょうか?お子さんの長い一生の中でお母さんにそこまで依存する時期は3歳までです。幼稚園に行くようになればご自宅以外の社会性を身に付けてゆきやがて親離れしてゆきます。社会性を身に付けるまでの間の準備として断乳が遅れようが思いっきりギュッとハグしながらおっぱいを口にさせてあげてください。少しでたくさんの愛情をあげて下さい。
 とはいってもやはり、虫歯のリスクはありますので食事のあとや間食のあとの歯ブラシをきちんと行うこと(本人磨きも必要だし、大人の仕上げ磨きも必要です)や糖分のコントロールはしっかり行いましょう。そして断乳の準備もあわせて行ってください。ここでいう断乳はお子さんが断乳を理解して自らの意思で少しずつでも断乳することです。3歳を前後してだんだんと社会性を身に付けるだけの成長をしていますから感情の分化と共に大人の言う高度なことが理解できるようになっています。お子様とお話をして、虫歯になる危険性や自立の為に断乳が必要なことを話して理解させるようにがんばってください。一回や二回話しただけでは理解も行動もできませんから怒らず(これが大切)根気よく話してあげてください。歯科ではきちんと治療を受け入れられるようになる初めの通過点が3歳です。3歳であれば理解して自分をコントロールできるだけの成長があることからそう考えているのですが歯科治療という断乳よりももっと高度なことに対応できる年齢ですからその頃になれば自然と断乳できると思います。
 「聞いて理解して行動する」ということが将来の成長においても、虫歯の予防においてもとても重要になってきます。3歳くらいまでの期間がそのお子様の身体的にも精神的にも健全な成長に大いに関係していると思ってよい親子関係を作るよう気をつけてください。我が子は皆、3歳近くまで寝るときだけはおっぱいを口にしていました。
 母乳でなく、人工乳の場合で哺乳瓶が放せないような場合は、食事の量や栄養的な問題がないかどうかを点検し、問題がなければ哺乳行為を通して精神的な安心を求めているようなことが考えられますので添い寝や手を握ってあげたりというような形でお子様と関わって見られたらいかがでしょうか?
 お子様との3歳までの3年間は生涯に一度きりです。お母さんとしてたくさんの思い出を作ってください。



3(30代男性)
 歯槽膿漏とのことで歯石を取ったり、麻酔をして処置をしたりしました。治療は一旦終わりその歯科医院で売っている歯磨き粉が歯周病菌を殺す作用があるのでと使用を勧められつかったのですが歯が黄ばんでしまいます。接客業なので黄ばんだ歯は困ります。勧められたとおり使ったほうが良いのでしょうか?

お答え

 歯槽膿漏(歯周病)の治療を受けられたとのことですから治療の中で歯周病の原因などの話があったと思いますがもう一度おさらいしてみましょう。
 歯周病の原因に大きく関係しているのが歯についた汚れです。ブラッシングで歯の汚れ、すなわちプラークが取れればそれだけでリスクは減ります。
 プラークはお口に入れた食品が飲み込んだ後も汚れとして歯に付いているもので歯と歯の間や歯と歯肉の境目によく付着します。お口の中には様々な細菌が存在していて、ある菌は虫歯の原因となる酸をつくり、ある菌は歯周病の原因となります。これらの菌は食べ物を飲み込んだ後も汚れとして残っているプラークの中に多く存在しています。そしてプラークが多ければ多いほど虫歯や歯周病のリスクが高くなるわけです。
 このような理由から歯周病の原因となる菌を除・殺菌すればそれだけリスクを減らすことはできるわけです。このような理由からご質問にある歯磨剤(歯磨き粉)が勧められたのだと思います。一見何かの薬効を持つもので除・殺菌すれば効果があるように思いがちですが、細菌の増殖はすさまじい勢いがあります。そのような薬効のあるものを使用しても肝心のプラークが除去できなければすぐに細菌は繁殖してしまうでしょう。
歯周病は生活習慣病でありその患者さんの生活背景までも見ていかないとコントロールできませんしブラッシングがすべてとも思いませんし、一概にそのような薬効を持つものの使用を否定もしません。しかし基本はやはり徹底したプラークコントロールに尽きると思います。歯ブラシも語れば奥が深く、毛の長さや硬さ、植毛部の大きさや形、ハンドルの形状などで汚れを落とせる効率は変わってきますし、フロスや歯間ブラシなどの補助用具も多くあり、補助用具も含めいかにプラークコントロールをするかが歯周病の治療・コントロールでは重要です。私は来院の患者さんには歯磨剤の使用はお勧めしないどころか、むしろ使用しないようにお話しています。歯ブラシや補助用具だけでプラークコントロールが一番重要と考えています。
 つまり、きちんとプラークコントロールができれば殺菌効果を謳ったペーストなどは不要なわけです。そのような薬効を持つもので歯科医院専売のものは結構高いものですし・・・。ご質問にあるように接客業とのことで、歯の色が黄ばむようであれば使用はやめても差し支えないとでしょう。ただし、その前提としてしっかりとしたプラークコントロールは必要です。歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシ、場合によてはピンスポットをブラッシングするよな特殊なブラシなども必要になるかもしれませんし、かなりの時間をかけてブラッシングしないと十分なプラークコントロールはできません。しかし、正しい方法であればやればやっただけの効果があるのも事実です。ぜひ歯磨剤を使わず、徹底的な、100%磨きを目指してください。
 ご質問の方のような接客業で口臭などを気にされる方は、きちんと磨けていれば口臭はしないと理解いただくことと、さわやかさを求めるなら、歯磨剤を使用しないブラッシングを一通りした後、仕上げで歯磨剤を使用したブラッシングを行うか、洗口剤でのうがいをなどをおすすめします。そのときの歯磨剤の量はごくわずか、小豆大程度でも十分です。