19. 米支密約と日支関係
ここに特に吾々が忽諸に出来ない重大問題があります。既に新聞紙上で御存知の、例の米支密約問題であります。米国は日本と戦うのには空海両方面から行かなくては勝目がないのであります。目下盛んに太平洋上に米国大西洋艦がのさばりだして示威運動をやっていますが、しかしあの大艦隊を引き連れて日本を襲う事は出来ません。それは、決行して幸いに我が国に(そんな事はあり得ないが)勝ち得たとしても、米海軍の戦闘力が夥しく殺がれてしまう。然るに今や欧州の天地はドイツの賠償金問題を中心に非常な危険を孕んでいる。米国が日本と戦ってそんな事にでもなれば、老獪な英国がほくそ笑みて、その野望は完全に伸ばされ得るのは明らかであります。だから空からやっつけるに限ると思うている。それには航空母艦に武装した爆撃機を搭載して、日本を襲う事も一方法でありましょう。しかし事実そんだけでは大した脅威にはならないし効果的でもない。そこで陸に飛行場を──日本を空襲し得る所に持つ事が必要となって来るのであります。
この必要に応ずるのが米支密約であるのです。これは米海軍の航空母艦が日本の極く近くの支那本土に上陸したと云う事になるので、殊に御承知を願いたいのであります。つまりこうした事実は米国の飛行場が支那沿岸に、福建、広東、浙江等に五つも出来、米国からどしどし飛行機を購入して本年中に38機になるそうであるが、3年後には1200機に及び、日米戦の未来に大脅威を加える事にしている。これは日本にとっては重大問題である。空襲の脅威を百パーセント受ける立場に日本は置かれている。
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