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第七書・第四章

使徒たちや使徒らに対するマリアの配慮

 恩寵の新しい律法がエルサレムに広められ、教会の信者が日々、数を増して来ると、聖母の気配りも気道いも増えていきます。教会の礎石としての使徒たちに聖母は特別な世話をします。ルシフェルの激怒が、主の信仰者、特に永遠の救いの牧者である使徒たちに対抗してますます酷くなるにつれ、聖母の気配りも増えます。聖母が使徒たちのために多くの不思議なことをなさらなかった日はありません。これは聖母の愛と熱心を良く表しています。聖母は使徒たちの偉大な聖性や、司祭、牧者、説教者および福音の創立者としての威厳を心から敬愛しておられ、使徒たちに奉仕し、相談に乗り、教え導きました。教勢がエルサレムの外に進展しても、使徒たちはエルサレムに戻り、なるべくエルサレムに長居するようにして聖母にお会いしました。聖ペトロがリダやヤップァに行ぎ、死んだタビタを廻らせたり、他の奇跡を行った後エルサレムに戻りました。パレスチナ一帯で説教し、信仰を確立した使徒たちも絶えずエルサレムに戻り、聖母に柵報告しました。

 使徒たちの伝道旅行中、地獄の龍は未信者たちに反対させたり、論争を起こさせたりして御言葉の宣布を妨害しようとしました。聖母の直接の保護から離れている使徒たちは、悪魔の攻撃に対して弾かったからです。悪魔から見ると、孤立した使徒は武装解除され、悪魔に屈服し、誘惑され易くなっています。ヨブが言っているように(ヨブ41・18)、悪魔は最も丈夫な鉄鋼を弱い藁と考え、最も硬い青銅を腐った木の杖と見なすほど誇りが高いのです。悪魔は投げ槍も投石機も怖くはないのですが、聖母の御加護だけは恐ろしくてしようがありません。

 聖母は、天により高められた知識の歩哨塔から、あらゆる方向を見渡せます。いつも見張っている歩哨として、ルシフェルの攻撃を発見し、すぐに助勢に駆けつけます。または天使たちを派遣して応援させます。天使たちは使徒たちの心を密かに鼓舞しますが、最も美しい光り輝く人間の形で探れ、何をすべきか、聖母の御意向は何であるかを教えます。使徒たちの潔白な心の故に、また彼らが慰めと励ましを必要とするために天使たちが来ます。聖母はこのように使徒たちを助ける以外に、彼らのためにいつも祈り、主に感謝します。

 聖母は他の信者たちも同様の御世話をなさいます。エルサレムやパレスチナに多くの改宗者がいましたが、聖母は各人の必要としていることや苦難を全てご存知でした。霊魂のことばかりでなく、身体もご心配になり、大勢の人たちの重病を治しました。奇跡的に治さないことになっている人々を聖母は訪問し、個人的に串助けになりました。貧乏な病人には病床で食物を口の中に入れたり、ベッドの敷布を洗っておあげになりました。聖母は、謙遜、愛、気配りに於て誰にも負けませんから、どんな奉仕も、最も下級な司牧も、最も卑しいつまらないことも喜んでなさいます。同様な奉仕を天使たちに頼まなければならない時もあります。

 聖母の母性的なご親切は、死の苦悩にある人々にも示されます。人々が永遠の救いを確保するまで聖母はそばを離れません。煉獄の霊魂のためにも最も熱心な祈りと償いを捧げます。その後で天使たちを煉獄に派遣し、償われた霊魂たちを煉獄から引き上げさせ、天に連れて行かせ、御子に会わさせます。この恩恵は現世に於て聖母にまともな態度をとった人たちには現代でも与えられます。

 ここでは聖母が一人の少女を地獄の龍の口からお救いになったことだけを書きましょう。最初に改宗し、エルサレムで受洗した者たちの中に一人の貧しい卑しい出身の少女がいます。家事に精を出し、病気になり、何日間も良くなりません。他の人たちの例のように、熱心な信仰は冷め、幾つかの罪を犯し、受洗の御恵みを失う危険に近づきます。人々を滅ぼすため絶えず止めないルシフェルは、少女のそばに女の姿になって現れます。甘い声で、十字架に釘付けになった者について説教する人たちから離れるように、その人たちの言う嘘を信じないように勧めます。この勧めに従わないと、この対立新宗教の創始者を釘付けにした祭司たちや裁判官たちから罰せられると説明します。少女は答えます、「あなたの言う通りにするわ。でも、あの人たちと一緒に会った貴婦人にはどうしたら良いかしら。あの方は優しそうで落ち着いていらっしやる。」 悪魔は答えます、「この女は他の誰よりも悪い人です。一番先に避けるべき人です。この女の罠にはまってはいけません。」 古代の蛇の致死毒を受け、この単純な鳩の霊魂は永遠の死に近づき、体はもっと病気になり、臨終になりそうです。七二人の弟子たちの一人が少女の大病を聞き知り、訪ねますが無視されます。いくら熱心に勧告しても少女は弟子に背を向け、聞こうとしません。報告を受けた聖ヨハネも少女の霊魂が滅びに向かっていることを知り、すぐさま少女の所に駆けつけ、永遠の生命について話しかけますが、少女は頑固に抵抗します。聖ヨハネは少女の周りを大群の悪魔たちが取り囲んでいるのが見えます。聖ヨハネが近づくと後退しますが、悪魔たちはこの少女を取り逃がすまいとします。

 少女の頑固さが良く判り、聖ヨハネは聖母の所に急ぎ行き、御助けをお願いします。即座に聖母は病気の少女を幻視し、敵たちが少女の霊魂を引きずっているのをご覧になります。血に飢えた地獄の狼に騙されたこの単純な羊のことを嘆き、床に平伏し、少女の救助のために祈られます。しばらく祈り続けても主から何の御返事もありません。預言者エリゼオが少年を生き返らせるため、自分の杖を僕のギエジに持たせてやったのに効果なく、預言者自身が出かけ、少年を触り、少年の体の上に自分の両腕を延ばさなければならなかったこと(列王下4・聖を聖母は思い出されます。この少女を罪と悪魔による眠りから目覚めさせるために、天使も使徒も十分な力がなかったのです。従って聖母は御自身でお出かけになり、少女を治されることにします。聖ヨハネと共に少女の家に向かいます。天使たちが現し、輝く雲の玉座に聖母をお乗せし、少女の病室にお連れします。臨終の少女は惨めで、黙りこくりし全ての人たちに見棄てられ、彼女の霊魂を掴み取ろうとする悪魔たちに取り囲まれています。しかし、聖母が姿を現されると、悪魔たちは稲光の早さで逃げ、落胆してお互いの上に折り重なったかのようです。聖母は悪魔たちに地獄に戻り、聖母がお許しになるまでじっとしているように命令します。悪魔たちは従うしか方法がありません。聖母は少女の手を取り、名前を呼び、生命の甘美なる言葉をお語りになると、瞬間的に変り、もっと楽に息ができるようになり、聖母に申しあげます、「私の貴婦人、一人の女がやって来て、イエズスの弟子たちが私を欺いたから早く弟子たちとあなた様から身を引くようにと言いました。もしも、あなた方の道をとるなら、私は大いなる不幸に見舞われるというのです。」 聖母はお答えになります、「私の娘よ、女のように見えた者は、あなたの敵である悪魔です。私はいと高き御方なる神の御名により、あなたに永遠の命を与えるために参りました。神の本当の信仰に戻りなさい。あなたの救いと全世界の救いのために、十字架の上で御死去になられた神である救世主に心より告白しなさい。神を崇め、罪の赦しを願いなさい。」

 病人の少女は答えます、「このこと全てを以前は信じていましたが、それはとても悪いことであるし、私が告白したら、罰せられるとあの人たちは言いました。」 聖母は説明されます、「私の友よ、この嘘を恐れてはいけません。真に恐れるべき罰は地獄の罰で、悪魔たちはあなたをそこへ引っ張って行きたいのです。あなたは今臨終を迎えています。私があなたに勧める治療を受け、地獄の火から免れることができます。」 少女は涙を流し、悔いて聖母の助けを願い、聖母の言いつけ全てに従うと宣言します。聖母の助けにより、少女はイエズス・キリストの信仰を告白し、告白のための痛悔の祈りを唱えます。聖ヨハネが来ると少女はもう一度痛悔の祈りをし、罪を赦され、イエズスと聖母の御名を唱えて聖母の両腕の中で幸せに息絶えます。

元后の御言葉

 私の娘よ、もしも罰せられるべき人を誰でも救えるならば、拷問も死も私は拒みません。隣人に罪を犯させないために、あなたが祈り苦労することはあなたの義務です。目的が達成されなくても、または主があなたの祈りを聞き届けられたかどうか判らなくても、確信を持ち続け、忍耐し続けなさい。この祈りは全ての人の救いを望む主を決して怒らせないからです。この時、賢慮と愛徳に叶う手段を用い、祈り続けなさい。いと高き御方なる神は、人々が自由意志で破滅を追求しない限り、あらゆる人々の救いを求めます。あなた自身の霊魂に神は無限の価格をつけています。悪魔の誘惑やあなたの情欲が、あなたにいかに小さい罪でも起こさせようとする時、私がどれほど悲しみ、どれほど涙を流すか覚えておいて下さい。

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