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第四書・第八章

エジプトへの御逃亡

 暗い静かな夜、聖マリアと聖ヨゼフは信仰と希望に強められ、旅をしました。しかし、御子に対する愛情のため、色々なことが心配になりました。この長旅に何が起こるか、いつまでかかるか、エジプトでの生活はどうなるか、見ず知らずの人たちとどうやって付き合うか、御子を育てるのに助けてもらえるか、それにしてもこの旅を御子がどうやって乗り切るかなど、見当もつかなかったのです。しかし、一万位の天使たちが人間の姿になって現れ、聖家族を元気づけました。

 ガザの町に着いて二日間休みました。御母と御子を乗せたロバも聖ヨゼフも疲労困悠の極みに達したからです。そこで会った聖エリザベトの僕に、聖エリザベトに伝言する以外、誰にも自分たちの居所を口外しないように言い含めました。聖エリザベトが送ってきた布地で、聖マリアは御子と聖ヨゼフのマントを作りました。この都市に逗留した二日間、聖マリアは多くの祝福を与え、瀕死の病人二人を癒し、不具の女を治し、人々に話して神について教え、生活を一新させました。人々は創造主を讃えました。聖マリアも聖ヨゼフも、自分たちの故郷や旅の目的について一言も話しませんでした。もしも、一般の人たちに知られたら、ヘロデ王のスパイたちに注目されるかもしれなかったのです。ガザについて三日間、この聖なる巡礼者たちはエジプトに向け出発しました。まもなく、パレスチナの人の住める地帯を過ぎ、ベルサベの砂漠に入りました。ヘリオポリス、つまり現在のエジプトのカイロまで約二七〇キロあります。砂漠を何日間も歩くのは辛いことですが、何む避難できる所がないのはもっと辛いです。色々なことが砂漠の旅の途中で起こりました。聖マリアも聖ヨゼフも不平不満を言いませんでしたが、聖マリアは自分のことよりももっと、御子と聖ヨゼフのことが気がかりになり、聖ヨゼフは御子と聖マリアの苦難に対し何もできないことが悲しくなりました。

 この二七〇キロの砂漠の行程の問、大空と渡しない空間があるだけで、避難できるような所はありませんでした。この旅は二日、御潜めの日から第六日目に始まりました。砂漠の砂の上に座り、御母は御子を抱きかかえ、聖ヨゼフと一緒にガザから持って来た備蓄食料をいただき、御子に哺乳しました。夜中、一万位の天使たちが人間の姿となって聖家族を守りました。御子は御自身の苦労を御母と聖ヨゼフの苦労に合わせ、永遠の御父に捧げました。御母にはそのことが判りました。御子の就寝中、御母は目覚めており、天使たちと話しました。聖ヨゼフは箱を枕にして砂の上に寝ました。翌日、旅している間に残っていた少しばかりの果物とパンはじきに食べつくし、聖家族は空腹になり、とても困りました。夜の九時までは何とかなりましたが、食物なしにはもうこらえ切れなくなりました。食物を得るあては全くありませんでしたので、御母はお願いしました、「永遠、偉大にして強力なる神、素晴らしく富める御身を祝し、感謝します。何の価値もない私、塵であり役立たずの私に生命を下さり、私を生き永らえさせて下さることを感謝激します。何もお返しできないのに、お願いしたいことがあります。御身の御独り子のことをお考え下さい。御独り子を助けるため、私と夫の命を保つために必要な物をお与え下さい。」 このお願いがもっと切実になるように、いと高き御方は自然が今まで以上に、過酷に聖家族をいじめることをお許しになりました。暴風と豪雨が聖家族を覆いましたが、御子は風雨に打たれ、泣き、寒くて震えました。心配な御母は、やっと被造物の女王としての力を発揮し、創造主なる御子に害を加えず、避難所と食物を与えるように命令しJ自分だけにはどんなに辛く当たってもよいと申し渡しました。直ちに暴風雨は弱まりました。幼児イエズスは、天使たちに最愛の御母を守るよう命じました。天使たちは、人となった神、御母と御母の夫を包む輝く美しい球を作りました。この事態は旅行中、四、五回起こったのです。聖家族は食物その他にも窮乏していましたので、御母は祈願しました。主は天使たちに命じ、おいしいパン、味つけの良い果物や飲物を持ってこさせました。天使たちは、時を移さず賞者に食物を施す主を賛美しました。この三人の流浪者たちが助かったこの砂漠は、カザベルから逃げたエリアが天使が持って来たパンで助けられ、ホレブ山に辿り着くまで歩いたベルサベ砂漠です。

 こうして幼児イエズスは、御母と聖ヨゼフと共にエジプトの人々の住む地域に到着しました。町に入る崎、御母に抱かれたイエズスは、御目と両腕を御父の方に挙げ、悪魔の捕虜となっている住民たちの救いを願いました。王としての神の御力は、偶像の中から悪魔たちを追い出し、地獄の底に投げ込みました。雲からでる稲妻のようにピカツと光って、地獄の闇の一番下の穴の中に落ちて行ったのです(ルカ10・18)。同時に多数の偶像は地面に崩れ請ち、祭壇は粉々に砕け、寺院は廃墟に変わりました。この素晴らしい事態の原因を御母は良くご存知でした。というのは、御母自身、御子の共賦者として御子と共にお祈りになったからです。聖ヨゼフも、これが人となられた御言葉のなさったことであると知っており、主を讃美しました。しかし、悪魔たちは神の力を感じたものの、どこから来たのか見当がつきませんでした。エジプト人たちは、説明のしようがないこれらの出来事に驚きました。もっと物知りの人たちは、エレミヤがエジプトに滞在した時から、ユダヤの王がやって来て偶像の祭られてある寺院を壊すであろうということを知っていましたが、どのようにして起こるかは知りませんでした。人々全員が恐怖と混乱に陥ったことは、イザヤが預言した通りです(イザヤ9・1)何人かの人々は、私たちの偉大なる貴婦人と聖ヨゼフのもとにやって来て、寺院と偶像の壊滅について話しました。これを良い機会に、智恵の御母は人々の誤解を訂正したのです。つまり、真の神は天地の唯一の創造者であり、この神だけしか崇めるべきではないことを教えました。その他の神々全ては偽で嘘の神々で、木、粘土か金属でできており、目も耳も力もないこと、こしらえた芸術家でも誰でも簡単に壊せること、人間の方がもっと高貴でむつと力があること、こしらえられた偶像が答える託宣は、中にいる嘘つきで蛎かし屋の悪魔たちが言っていること、偶像その物は何の力もないこと、たった一人の真の神だけがおられることを説明しました。

 天の貴婦人は、とても優しく、大変生き生きしており、とても魅力的であるので、貴婦人の一行の到着はたちまち町々に知れ渡り、大勢の人たちが押し寄せました。人となられた御言葉の力強い祈りは、人々を改心させました。偶像が崩れ落ちたので大騒ぎとなり、人々は真の神を知り、罪を犯したことを悲しみました。イエズス、聖マリアと聖ヨゼフは町々を通りながら、人々を改心させ、偶像や憑依された人々の体から悪魔を追い出し、大勢の重病人を治し、真理と永遠の生命について教えました。

 音の記録は聖家族がメンフィス、バビロン、マタリなどエジプトの町々に住んだことを示しています。私は聖家族がヘリオポリス(太陽の都市、現在のカイロ)に住んだことを書きましょう。守護の天使たちが御母と聖ヨゼフに、そこに定住するように指示したのです。ここでも寺院や偶像が壊れました。幸いなことに、名前のように、この都市の住民たちは正義と恩寵の太陽を仰ぎ見ることになりました。聖ヨゼフは都市から少し離れた所に、真相ですが何とか住める家を見つけ、御母に喜んでもらいました。三つの部屋の内、一つを幼子イエズスの部屋にして、揺りかごと剥き出しになっている長椅子を置きました。長椅子は御母の寝台になります。次の部屋は聖ヨゼフの寝室兼礼拝室です。三番目の部屋は聖ヨゼフの仕事部屋です。もともと賞窮している上、大工の仕事が見つからなかったので、御母は手仕事をして生計を立てることになりました。御母の針仕事が素晴らしいので、すぐに評判になりました。由具の神人である御子の細々とした生計の助けになりました。大事な保存食品や着物、家具を慎しく揃えるため、その他の支出を賄うため、御母は日中働き通しで、夜は霊的精進に励みました。普通の人たちと同じように働き、神の御子が食べていけるだけ働けるよう、永遠の御父にお願いしました。

 エジプトの酷暑と大勢の病人がいることが理由で、疫病が蔓延しました。ヘリオポリスや他の町々が、その当時、荒廃しました。幼子イエズスと御母による奇跡的治療が知れ渡り、国中あらゆる所から大勢の人々がやって来て、霊魂と身体の病気を治してもらい、故郷に帰って行きました。主の恩寵がもっと豊かに流れ、最も親切な御母が慈悲の業を助けてもらうため、神は聖ヨゼフを御母の助手に任命しました。聖ヨゼフは啓示の光と治療の力を頂きました。エジプトに来てから三年目のことです。聖ヨゼフは男性の癒しに当たり、祝された貴婦人は女性の手当てを受け持ちました。この二人の医療により、人々の霊魂に与えた影響は驚異的です。御母の絶え間ない恩恵と優雅な言葉は人々を惹きつけ、御母の謙遜と聖性は人々の心を献身的愛で満たしました。人々はたくさんの贈り物を持ってきました。御母と聖ヨゼフの稼ぎの足りない部分を補う他、貧者に施すため、贈り物を受け取りました。御母は御自分の手作りの品をお返しに人々にあげました。

 エジプトに滞在中の七年間、聖家族の行なわれた奇跡の全てを語ることは私にはできません。御母が全能者を最も敬愛するようになったのは、全能者が大勢の幼児の殉教の様子を見せて下さったからです。幼子イエズスを取り逃がすまいとして、ヘロデ王は生後八日の赤ちゃんから二歳までの幼児を虐殺しました。幼児たち全員は、神について高遠な知識、完全な愛、信仰と希望を頂き、神の信仰、崇拝と愛、自分たちの両親の尊敬と同情の英雄的な行為をしました。幼児たちは両親たちのために祈り、霊的生活を進展させるための光と恩寵が両線に下るように願いました。そして、喜んで殉教し、天使たちによりアブラハムの懐に運ばれました。幼児たちは聖なる先祖に会って喜び、古聖所からの解放が近いことを知らせました。幼児たちの幸せは、神の御子と御母の祈りのお陰です。御母は感極まって叫びました、「子供たちよ、主を讃えなさい。」

元后の御言葉

 私の娘よ、人間は高貴な被造物です。主の御姿に似せて造られ、神々しい性質を与えられ、神を知り、愛し、仕え、そして、永遠に神と共にいる幸福にあずかるべきです。それなのに、誰にも危険を加えない赤ちゃんたちを切り殺すという残酷で嫌悪すべき情欲により、品位を落とし、汚れてしまいました。汝は大勢の霊魂の滅びを思い、泣くべきです。汝の生活しているこの時代に、ヘロデ王を刺激したのと同じ野心が教会の子供たちの心の中に憎悪を起こさせ、無数の霊魂の滅びを引き起こし、私の至聖なる御子の御血を流させることになりました。御血が流れたことを心から悲しむべきです。

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