1.はじめに

   数論を理解するにあたり障害になるのが数論特有の専門用語ではないでしょうか。
   まず普通今までガッコーでは聞いた事も無いような言葉が多いと思います。
   そこで独断でいくつか用語を選び私見を加えつつ説明を試みる事にしました。
   或る物は話題が膨らみ、また或る物は広がらない知れませんが、そのへんはご容赦あれ。
   尚、「小さく産んで大きく育てる」をモットーに出来上がったものからスタートし
   順次増やしていく予定です。
   

  「神は幾何学をやり、人は数論をする」

  「数学は科学の女王であり、数論は数学の女王である」
                       ガウス
  「毒蛇はいそがない」
         タイのことわざ

    「愚者は食べ物の話をし、賢者は旅の話をする」
                   蒙古古諺

2.解説

   ・1次不定方程式

            ax+by=c の形式を1次不定方程式と言います。
      (a,b,c,x,y)は整数とします。
      解(x,y)はユークリッドの互助法を用いて得る事が出来ます。
      c がgcd(a,b)で割り切れる時に解が有ります。
      何故なら、左辺はgcd(a,b)で割り切れるので、右辺も割り切れなければならないからです。
      
      ここで合同式を利用して解を求めてみましょう。

            gcd(a,b)=1 とすると
      ax+by=1 の解は ax≡1 mod b で、x≡a^(φ(b)-1) mod b (オイラーの定理より)で求められる。

      例: 5x+14y=1
                 x≡5^(6-1)≡3 mod 14
                 x=3+14m を上式に代入すれば y=-1-5m となります。
                 即ち、x= 3,17, 31,....
                       y=-1,-6,-11,....

   ・ウィルソンの定理

            P が素数ならば (P-1)!≡-1 mod P が成り立つ。

            証明は原始根を使えば簡単です。
            a を P の原始根とする。

            (P-1)!=1*2*3*...(P-1)≡a*a^2*...*a^(P-1)=a^(P*(P-1)/2)≡a^((P-1)/2) mod P
            ここで、a は P の原始根だから a^((P-1)/2)≡-1  mod P となるので
            結局、(P-1)!≡-1 mod P となります。


   ・オイラーの基準

            P を奇素数、a を gcd(P,a)=1 なる整数とする時、(a/P)≡a^((P-1)/2) mod P が成り立つ。
 
            要は、a が P の平方剰余であるかどうかは、a^((P-1)/2) を計算すれば判ると言う便利なものですね。

            例: P=13 の場合
                2^6=64≡-1 mod 13 なので (2/13)≡-1 である事がわかる。

                3^6=27^2≡1 mod 13 なので (3/13)≡1 となります。
             



   ・オイラー関数

      自然数N に対しN を超えないNと互いに素な自然数の個数をφ(N)と表し、オイラー関数という。
       
           例:
      N    2 3 4 5 6 7 8 9 10
         φ(N)   1 2 2 2 2 6 4 6  4

            N を素因数分解して N=p1ap2bp3c...... とするとφ(N)は次の様に計算できる。

           φ(N) = N(1-1/p1)(1-1/p2)(1-1/p3)......

      例:  N=10 とすれば φ(10)=10(1-1/2)(1-1/5)=4

      オイラーの定理:

             Nを自然数,aをgcd(a,N)=1なる整数とすると、aφ(N)≡1 mod N となる。

           N=素数=P とするとφ(N)=P-1 となるので、フェルマーの小定理はオイラーの定理の
      特別な場合になる事がわかります。

      例:  N=15 とすれば φ(15)=15(1-1/3)(1-1/5)=8, a=2 とすると
         2φ(15)=28=256≡1 mod 15  

   ・オイラー予想

      オイラーがフェルマーの最終定理を拡張した予想である。
      現在では、反例によってこの予想は正しくないことが証明されている。

      予想の内容

            n > 3 の時
      x1^n + x2^n +......+xn-1^n= y^n を満たす自然数の解 (x1,x2,..,xn-1,y) は存在しない。



           オイラーの発表以降、長い間正しいと信じられてきました。
           しかし1966年、ランダーとパーキンによって n = 5 の場合の反例として、
           27^5 + 84^5 + 110^5 + 133^5 = 144^5 が成り立つことが確認されました。

           その後 n = 4 の場合、1988年エルキーズが楕円曲線理論を用いて発見した。
           その反例は 2682440^4 + 15365639^4 + 18796760^4 = 20615673^4 というものでした。

       その後1988年ロジャー・フライが、n = 4 の場合の反例の最小解として
       414560^4+217519^4+95800^4 = 422481^4 を発見した。

       2004年ジム・フライによって、n = 5 の場合の第2の反例として
       85282^5+28969^5+3183^5+55^5 = 85359^5 が発見されました。

            n > 5 の場合の反例は今現在、発見されていないようです。





   ・完全数

      完全数とは、その数自身を除く約数の和が、その数自身と等しい自然数のこと。
      6 = 1+2+3, 28=1+2+4+7+14 など。
      ではどの様な数が完全数になるのでしょうか。
      この答えもまたまたオイラーが証明をしているので紹介しましょう。


            n が自然数、2^(n+1)-1 が素数のとき、2^n(2^(n+1)-1) は完全数である。
       偶数の完全数は全てこの式により与えられる。

       2^(n+1)-1 が素数であるためには、P=n+1=素数で2^P-1 が素数になれば良い。
       即ち、2^P-1 がメルセンヌ素数になればいいことが判りました。
       先ほどの、完全数6,28 は 6=2^1(2^2-1), 28=2^2(2^3-1) と得る事ができます。

             P          メルセンヌ素数            完全数

                    2           2^2-1                    2(2^2-1)
                    3           2^3-1                    2^2(2^3-1)
                    5           2^5-1                    2^4(2^5-1)
                    7           2^7-1                    2^6(2^7-1)
                   13           2^13-1                   2^12(2^13-1)
                   .
                   .
                   .
                  30402457      2^30402457-1(9152052桁)  2^30402456(2^30402457-1)
                  32582657      2^32582657-1(9808358桁)  2^32582656(2^32582657-1)

            2006年9月に、44番目のメルセンヌ素数が発見されました:2^32582657-1
            従って今現在で最大の完全数は、2^32582656(2^32582657-1) と言う事になります。

            また、奇数の完全数については存在するかどうか判っていません。
       もし存在するならば次の様な条件を満たす必要がある事が知られています。

            ・奇数の完全数は300桁よりも大きい。
       ・奇数の完全数は少なくとも9個の異なる素因数を持つ。

   ・原始根

             フェルマーの小定理により
             P が素数で、gcd(a,P)=1 ならば a^(P-1)≡1 mod P が成立する。
             ところが、x < P-1 で a^x≡1 mod p が成立する場合があるのです。
             そこで 
             a^x≡1 mod p なる最小値がP-1の時に、a をPを法とした原始根という。

             例
               2^4≡1 mod 5, 3^4≡1 mod 5 となるので2,3 は 5を法とした原始根。
        3^4≡1 mod 7, 5^4≡1 mod 7 となるので3,5 は 7を法とした原始根。  

             原始根のべき乗 a,a^2,a^3,....,a^P-1    mod P を考えると
             順番は異なるが1,2,3,....,P-1 と同じ集合となります。
            つまり原始根のべき乗によりPの剰余達が表現できてしまうのです!
             この美しい性質によって原始根は色々な所に顔を出します。
             今回はウィルソンの定理の証明に使っています。

   ・合同
      2つの整数a,b が整数c を法として剰余が同一の時、2数a,b は c を法として合同という。
      a≡b mod c と表します。
      例 65≡2 mod 7, -5≡2 mod 7

      次に合同式の基本的演算を示します。

      (1) a≡b mod m, b≡c mod m の時は a≡b mod m

      (2) a≡b mod m, c≡d mod m の時は a+c≡b+d mod m

           (3) a≡b mod m の時は ca≡cb mod m

           (4) a≡b mod m, c≡d mod m の時は ac≡bd mod m

   ・剰余
      a,b を整数とする時、a からb の任意の倍数を引いた差の事をb を法としてa の剰余という。
      b を法としてa の剰余は a+bm の形に表されます。
      m は任意の整数とします。

      例 7 を法として65 の剰余は、通常の意味では65-7*9=2 となるが
        ...,-12,-5,2,9,16,....も剰余とみなします。



   ・

      「カラダ」ではありません、「タイ」と読んでください。
      加減乗除が出来る数の体系を体と言います。
      身近な例ではa+biという複素数は、実数体にx^2+1=0の根を添加した拡大体なのでした。
      また、ある素数の剰余類(余りの集合)は集合の個数が有限なので有限体と呼ばれます。
      「有理数体に或る特殊値を添加した拡大体の素イデアルの分解法則は・・・」等と
      言うと通っぽく見られる事ができます。
 
   ・位数

      ある体の元の個数を体の位数と言います。

   ・素数

      1 と自分自身しか約数を持たない整数を素数と言います。
      逆に素数ではない整数は合成数と言います。
      素数の数や分布状況を調べるのが数論の一分野になっていて、大事な概念です。
      素数は無限に存在します。
      ユークリッドによる素数の無限性の証明を紹介します。

      或る素数をP とします。
      P 以下の全ての素数の積に1 を加えた式は次のようになります。
                f=2*3*....P+1
           f は素数だとするとP より大きい素数が得られた事になり、
      f は合成数だとすると2〜P以外の素数で割り切れる事になるので、
      結局、どのような大きい素数が与えられてもそれよりも大きい素数が得られるので
      素数は無限に存在する事になります。

   ・素因数分解

           整数を素数の積に表すこと。
            小さい整数なら簡単に分解できますが、大きい整数を分解するとなると原始的な
            方法でするととんでもない時間がかかってしまいます。
            キョービの暗号理論のベースはまさにその事に依存しているわけです。
            古来より色々な因数分解法が考えられてきたわけですが、いくつかを紹介します。
                  フェルマ法
                  モンテカルロ法
         P−1法  


   ・素数定理

      x が大きいとき、x より小さい素数の個数π(x)は近似的にx/log(x)に等しい。

                      π(x)〜∫(1/log(t)dt,t=2..x)〜x/log(x) (x→∞)

      かのガウスが最初に上記の式が成り立つ事を予想しました。
      その後100年後にアダマールとプーサンにより複素関数を駆使して証明されました。
           π(x)とx/log(x) の誤差項があの有名なリーマン予想と関係しているのです!

           次に10^8 迄の π(x)、x/log(x)、∫(1/log(t)dt,t=2..x)の値を示します。
       当然のことながら∫(1/log(t)dt,t=2..x)の方がx/log(x)より近似が良い事が判ります。


                              x    π(x)   x/log(x)   ∫(1/log(t)dt,t=2..x)
                           1000      168       145           177
                          10000     1229      1086          1245
                         100000     9592      8686          9628
                        1000000    78498     72382         78627
                       10000000   664579    620420        664917
                      100000000  5761455   5428681       5762208



   ・中国の剰余定理(CRT:Chinese Remainder Theorem)

          m1,...,mr を i≠j ならば gcd(mi,mj)=1 であるような r個の整数とする時
          次の合同式を満たす整数xが存在する。

            x≡a1 mod m1
                .
                .
                .
            x≡ar mod mr

          整数x0が上記の連立合同式を満たす時、一般解は、x≡x0 mod (m1*m2*...mr)で与えられる。

          例: 次の連立合同式を解いてみましょう。

            x≡2 mod 3
            x≡4 mod 5

            x=2+3*t を2番目の式に代入すると、
      2+3*t≡4 mod 5
            3*t≡2 mod 5 より t≡4 mod 5 である事がわかる。
            t=4+5*s を x=2+3*t に代入すると
            x=14+15*s となるので

            x≡14 mod 15 となる。

        一般解の公式

           M=m1*m2*...mr
           Mi=M/mi
           niMi≡1 mod mi とすれば

           x≡a1n1M1+a2n2M2+......+arnrMr  mod M で与えられます。

     先程の例を公式を使って解いてみましょう。

          n1*5≡1 mod 3 ===> n1≡2 mod 3
          n2*3≡1 mod 5 ===> n2≡2 mod 5

          x≡2*2*5+4*2*3=44≡14 mod 15 と先程と答えが一緒になりました。


   ・ディオファントス方程式

           整数係数の多項式から定まる方程式を不定方程式またはディオファントス方程式と呼びます。
           本家のディオファントスは有理数解を求めることが多かったのですが、フェルマ当たりから
           整数解を求めるようになったようです。
           具体的な例ではフェルマの最終定理で有名な、x^n+y^n=z^n の方程式や
           後述するペル方程式は不定方程式という事になります。

           1900年にヒルベルトは有名な第10問題として「任意の与えられた不定方程式が整数解を
           持つかどうかを有限回で判定するアルゴリズムを求める」問題を提出しましたが
           1970年マチヤセヴィッチ等によって否定的に解決されました。

           x^2+y^2=z^2 の整数解を求める問題は、古代バビロニアの粘土板(B.C.1900〜B.C.1600)に
           すでにいくつかの解が書かれていたようですから、歴史がある問題と言って良いでしょう。
           このピタゴラス問題について以前に採りあげています。
           
   ・楕円曲線

           これから述べる楕円曲線は有理数体上の楕円曲線とします。

        y^2=ax^3+bx^2+cx+d は楕円曲線と呼ばれます。
           但し、a≠0、3重根を持たないとする。

           一般に、ジーゲルの定理により「有理数体上の楕円曲線の整数解は有限個しかない」事が
           知られています。

           また有理点は、モーデルの定理により、「判別式≠0の楕円曲線は有限個の有理点によって、
           全ての有理点がこれらの点の和で表す事ができる」事が知られています。

           とまあ抽象論ばかりだと「Computer数論」の名が泣くのでこの辺で具体例を示しましょう。

           y^2=x^3-2 の楕円曲線(E)には(x,y)=(3,±5)しか整数解が存在しない事をフェルマが証明した
           ことで有名ですが、それでは有理点はどの位あるのか?、答えは無限なんですね。
           既知の有理点Pから出発して2P,3P,...と次々に求める事ができます。
           その方法は2PはPの接線とこのEとの交点の鏡映から求め、3PはPと2Pを結ぶ直線とEとの
           交点の鏡映から求められます。

           ここで鏡映な点とは或る点のx軸に関して対称となる点の意味です。

           2P=(129/100, -383/1000)
           3P=(164323/29241, -66234835/5000211)
           4P=(2340922881/58675600, 113259286337279/449455096000)

           とまあこんな調しで幾らでも続ける事が出来ます。
           確かに、(113259286337279/449455096000)^2=(2340922881/58675600)^3-2 となっています。

           楕円曲線については述べたい事が一杯有ってとてもこの欄では足りません。
           別の機会に詳しく述べる予定です。

   ・双子素数

           自然数をNとした時、NとN+2が共に素数であるような対を双子素数という。
           N < 100 では (3,5),(5,7),(11,13),(17,19),(29,31),(41,43),(59,61),(71,73)等がある。
           現在最大の双子素数は2007年1月に発見された、2003663613*2^195000±1で58711桁ある。
           双子素数の個数は無限であるとの予想はあるが証明されてはいない。
           双子素数の個数に関する次のHardy-Littlewoodの予想は有名である。

          2Πp(p-2)/(p-1)^2∫(1/(log(t))^2dt,t=2..x)≒1.320323632∫(1/(log(t))^2dt,t=2..x)

   ・フェルマーの小定理

           p が素数で、gcd(a,p)=1 ならば a^(p-1)≡1 mod p が成立する。

     この定理は便利で色々な場面で利用されています。
     例えば素数判定に次のように使用します。
     素数かどうか判定したい数をN として、gcd(a,N)=1 なる整数a を選び 
     a^(N-1)≡1 mod N でなければN は素数でない事が判定できます。
     何故なら、定理の対偶もまた真であるからです。
     しかしながら、a^(N-1)≡1 mod N が成立してしまうとN が素数であるかどうか
     判定する事はできません。何故だか判りますか?
     終わりにこの定理の証明を紹介します。驚くほど簡単です!

     gcd(a,p)=1 なるa を選ぶと次の式が成り立つ。

     (a*1)*(a*2)*(a*3)*.....(a*(p-1)) ≡ 1*2*3*.....(p-1)  mod p

           a^(p-1)*(p-1)! ≡ (p-1)! mod p

           故に、a^(p-1)≡1 mod p が成立する。



   ・フェルマーの最終定理

         x^n+y^n=z^n は n>=3 の時に整数解を持たない。
     「私は驚くべき証明を発見したが、それを記すにはこの余白は小さすぎる」
    とフェルマーが本に書いた為有名になった定理(最近までは予想だった)です。
    オイラーをはじめディリクレも個々のn について証明しましたが、n は無限にあるので
    限がないわけです。その様な時に一気に多数のn について証明したのがソフィー・ジェルマンや
    ヴィーフェリッヒやクンマーでした。 

    ソフィー・ジェルマンの定理(1823)
              P が奇素数で2P+1も素数の時、x^P+y^P=z^P は gcd(P,xyz)=1なる正整数解を持たない。

    ヴィーフェリッヒの定理(1909)
       P が奇素数で2^(P-1)≡1 mod P^2 でなければ、x^P+y^P=z^P は gcd(P,xyz)=1なる正整数解を持たない。
              今現在、P=1093,3511 の時だけ、2^(P-1)≡1 mod P^2 が成立する事が知られている。

    クンマーの定理
       P が奇素数で正則な素数の時、x^P+y^P=z^P は正整数解を持たない。
       
       正則な素数は100以下では37,59,67 以外は全てと言うことですから、左の3つ以外は
       x^P+y^P=z^P は整数解を持たない事が証明できた事になるわけです。
       正則な素数とは何かと聞かれても、説明するのが難しいですね。
       ベルヌーイ数の分子と関係しているとだけ言ってお茶を濁します。

    アンドリュー・ワイルズが最近(1994)になってついに、フェルマーの最終定理を完全に
    証明したのでした。フェルマーが書き込みをして350年ぶりの事でした。
    ワイルズの証明には楕円曲線理論や代数幾何学の様様な定理を駆使して証明
    されていて、私どもにはとても解説不能ですので悪しからず。

   ・フェルマー数

     フェルマーは2^m+1 の形の数が素数になる条件を探し、m=2^n である事を見つけました。
              n=1,2^2+1=5
              n=2,2^4+1=17
              n=3,2^8+1=257
              n=4,2^16+1=65537
     とこんな感じで素数だったので n > 4 についても素数ではないかと思ったのでした。
     ところが大間違い、後年かのオイラーが n = 5 の時に素数ではないことを証明してしまいました。
         n=5,2^32+1=4294967297 の約数を見つけたのですが、そこはオイラーの事ですから無闇に
         計算した訳ではなく、次のように考えたのでした。
  
         2^m+1 の素因数は全て 2mk+1(kは自然数) の形式をしている。   

            素因数をP とすれば 2^m≡ -1 mod P なので 2^(2m)≡ 1 mod P となる。
      ここで2m は 2^x≡ 1 mod P が成立する最小値であることがわかります。
      一方フェルマーの小定理より、2^(P-1)≡ 1 mod P なので
      2m は P-1 の約数にならなければならないので P-1=2mk となり
      P=2mk+1 の形式となります。

     さて、この結果を n=5 の場合に適用すると P=64k+1 の素数だけで2^32+1=4294967297を
     割ればいいので、P=193,257,449,577,641,....と順番に試してみると P=641 で割れる
         事が判明します。
       即ち、2^32+1=4294967297=641*6700417 と素因数分解されたのでした(目出度し!目出度し!)
        
         その後は n > 5 で合成数のみで素数は1つも見つかっていません。
         フェルマー数はFn と表すと

            F6 = 274177 . 67280421310721  
            F7 = 59649589127497217 . 5704689200685129054721 
            F8 = 1238926361552897 . P62 
            F9 = 2424833 . 7455602825647884208337395736200454918783366342657 . P99 
            ここでPXX は XX桁の素因数を表す。

         フェルマー数に関する予想をいくつか。

      ・フェルマー数で素数となるものは無数にあるか?
          
      ・フェルマー数で合成数となるものは無数にあるか?
          


   ・平方剰余

           P を奇素数、a を gcd(P,a)=1 なる整数とする時
          x^2≡a mod P の解が有るとき、a は P を法として平方剰余であるといい、そうでなければ
          平方非剰余という。
          我が心の師であるオイラーは、平方剰余の相互法則をすでに発見しておりましたが
          証明する事が出来ませんでしたが、ガウスが初めて完全な証明をしました。
          ガウスは生涯7通りの平方剰余の相互法則の証明を与えています。
          それは3次剰余や4次剰余の相互法則を証明するために、参考となるような平方剰余の相互法則の
          証明を探していたのではないかと言われています。

                     第1証明:帰納法による難解な証明。
           第2証明:2次形式論による証明。   
                     第3証明:ガウスの補題によるガウス記号を使用する証明。
           第4証明:ガウスの和を使用する証明。 
                     第5証明:組合わせ論的な証明。   
                     第6証明:ガウスの和を使用する亜種の証明。
           第7証明:有限体上のガウスの和を使用する証明。 



          第1補充法則

              (-1/P)≡(-1)^((P-1)/2)= 1 : P≡1 mod 4
                                    =-1 : P≡3 mod 4

          第2補充法則

              (2/P)≡(-1)^((P^2-1)/8)= 1 : P≡±1 mod 8
                                     =-1 : P≡±3 mod 8

         相互法則

              (Q/P)(P/Q)≡(-1)^((P-1)/2(Q-1)/2) 
                                     
         上記の符号の決定は簡単に出来ます。例えば第1補充法則については
         (P-1)/2=2m ==> P=4m+1≡1 mod 4 であれば(-1)^((P-1)/2)= 1 になるからです。
         同様に(P-1)/2=2m+1 ==> P=4m+3≡3 mod 4 であれば(-1)^((P-1)/2)= -1 となります。

         相互法則の証明は長くなるので此処では述べませんが、具体例で感じを掴んで下さい。

                    x^2≡365 mod 1847 は解が有るでしょうか?

                    (365/1847)=(5/1847)(73/1847)
                    
                    5≡1 mod 4 なので  (5/1847)=(1847/5)=(2/5)=-1

                    73≡1 mod 4 なので (73/1847)=(1847/73)=(22/73)=(2/73)(11/73)

                    73≡1 mod 8 なので (2/73)=1 

                    (11/73)=(73/11)=(7/11)=-(11/7)=-(4/7)=-(2/7)^2=-1

                    従って、(1847/73)=(2/73)(11/73)=1*(-1)=-1

                    (365/1847)=(5/1847)(73/1847)=(-1)*(-1)=1

                    結局(365/1847)=1 となったので、解がある事が分かりました。

                   また、オイラーの基準を使用しても解の有無は分かります。
                   365^((1847-1)/2)=365^923 mod 1847 を計算すると
                   365^923≡1 mod 1847 となるので解がある事が分かります。

           x^2+1 の素因数について
                  x^2+1 の数の素因数分解をするとある特定の素数しか表れない事に気がつきます。

                  1^2+1=2                     11^2+1=2・61
                  2^2+1=5                     12^2+1=5・29
                  3^2+1=2・5                  13^2+1=2・5・17
                  4^2+1=17                    14^2+1=197
                  5^2+1=2・13                 15^2+1=2・113
                  6^2+1=37                    16^2+1=257
                  7^2+1=2・5^2                17^2+1=2・5・29
                  8^2+1=5・13                 18^2+1=5^2・13
                  9^2+1=2・41                 19^2+1=2・181
                 10^2+1=101                   20^2+1=401 

                 P=2 または P≡1 mod 4 の素数しか表れないことが分かります。
                 何故かと言うと、x^2+1≡0 mod P なる素数は (-1/P)=1 でなければならないので
                 第1補充法則より P≡1 mod 4 の素数となるからです。
                 この例の様に一般にx^2+m の数の素因数分解に現れる素数は、例外を除けば
                 (-m/P)=1 を満足させるような素数に限られます。




   ・ペル方程式

           x^2-Ny^2=±1,x^2-Ny^2=±4 の形の方程式をペル方程式と呼ぶ。

           N を平方数でない正整数とする時、x^2-Ny^2=1 は無数の整数解を持ち、(x1,y1) を最小解
           とした時、全ての解はxk+Nyk=(x1+y1sqrt(N))^k,k=1,2,3... で得られる。

           例:x^2-3y^2=1 の最小解は (x1,y1)=(2,1) だから

               (2+sqrt(3))^2=7+4sqrt(3)    ====> (x2,y2)=(7,4), 7^2-4^2*3=1

               (2+sqrt(3))^3=26+15sqrt(3)  ====> (x3,y3)=(26,15), 26^2-15^2*3=1

               (2+sqrt(3))^4=97+56sqrt(3)  ====> (x4,y4)=(97,56), 97^2-56^2*3=1

               (2+sqrt(3))^5=362+209sqrt(3)====> (x5,y5)=(362,209), 362^2-209^2*3=1 



           最小解は連分数を用いると簡単に求める事ができます。(連分数の項を参照)
           理由は、x^2-Ny^2=(x-sqrt(N)y)(x+sqrt(N)y) でx-sqrt(N)y≒0 となるような (x,y) を
           探す事になるので連分数の出番があるわけです。

                x^2-Ny^2=1の最小解

                N   x   y
                2   3   2
                3   2   1
                5   9   4
                6   5   2
                7   8   3
                8   3   1
               10  19   6

           例えば、x^2-61y^2=1 の最小解は(1766319049,226153980) となるのですが,
           何故このような大きな数になるのか、最小解に関する法則は誰にも知られていないのです。

   ・メルセンヌ素数
         以前、メルセンヌ素数について詳しく紹介しているのでこちらを御覧ください。

      ・ルジャンドル記号

          P を奇素数、a を gcd(P,a)=1 なる整数とする時
          x^2≡a mod P の解が有るとき、a は P を法として平方剰余であるといい、そうでなければ
          平方非剰余という。

          平方剰余の時 : (a/P)=1
             平方非剰余の時: (a/P)=-1

          上記の様にルジャンドル記号で表す。

          また、 a,b を gcd(P,ab)=1 なる整数とする時 (ab/P)=(a/P)(b/P) が成り立つ。
        
   ・連分数

     まず連分数は実数(有理数、無理数)を有理数で最良に近似する方法として考えられた。
     古くはアルキメデスあたりも知っていた様でsqrt(3)の近似値として265/153,1351/780等
     を得ています。
    
     実数xの連分数を求める手順

         
                N=x 

                i=0,1,2,3,... と以下を繰り返す

                q(i)=[N]:Nを超えない最大の整数

              N=1/(N-q(i))


     例題:sqrt(3)の連分数を求める

                N=sqrt(3)=1.732050808
                q(0)=1
                N=1/(sqrt(3)-q(0))=(sqrt(3)+1)/2
                q(1)=[(sqrt(3)+1)/2]=[1+(sqrt(3)-1)/2]=1
                N=1/((sqrt(3)+1)/2-q(1))=sqrt(3)+1
                q(2)=[sqrt(3)+1]=2
                N=1/(sqrt(3)+1-q(2))=(sqrt(3)+1)/2
                          .
                          .
                          .
                          .
               結局,sqrt(3)=(q(0),q(1),q(2),....)=(1,1,2,1,2,1,2,....) となる。
       これを有理数の形に表せば、次のようになる。

                               1
                        1+1/1=        2
                  1+1/(1+1/2)=      5/3   =1.666666667
              1+1/(1+1/(2+1))=      7/4   =1.750000000
                         .   =    19/11   =1.727272727
                         .   =    26/15   =1.733333333
                         .   =    71/41   =1.731707317                       
                         .   =    97/56   =1.732142857                                          
                         .   = 265/153   =1.732026144
                         .   =  362/209   =1.732057416                       
                         .   =  989/571   =1.732049037
                         .   =1351/780   =1.732051282 
                         .   =3691/2131   =1.732050680 

            アルキメデスの近似値265/153,1351/780が現れている、流石 アルキメデス!

            連分数の実数に対する近似の精度が次の様に評価される。

            実数α、連分数p/q とすると、 |p/q-α|<1/q^2 
            この式の意味は、実数αとの誤差が連分数の分母を大きくすれば2乗のオーダーで
      どんどん小さく出来るってことですね。

   ・有限体

            元の個数が有限な体を有限体という。
            簡単な例では、P を素数とするとき法P による剰余類={0,1,2,...,P-1}はP個の
            元からなる有限体です。

   ・有理点

           (x-y) 平面上の点が両座標共に有理数である時、その点を有理点という。

           有理2次曲線(係数が有理数)に有理点が一つ有れば、実は有理点は無限に有る。
   
           楕円曲線(係数が有理数)の有理点の数はは有限または無限である。
 

 


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