余呉町坂口の北国街道沿いに朱塗りの大鳥居が建っており、これが菅山寺の参道の入口である。里坊である弘善館を過ぎると山道になり、針葉樹のなかを登っていく。 途中まで展望はきかないが、道ばたに幾体もの小さなお地蔵さんがおられ、疲れをいやしてくれる。ふもとから一時間足らずで、尾根上に広がるブナの林に着く。 木々のあいだからは、びわ湖や余呉湖が一望である。尾根を越えて反対側へ下りていくと、陽光に輝く池が見えてくる。池は、ブナ林に抱かれるように、新緑を映して静まっている。 菅山寺と天満宮の堂宇は、池のそばに点在するように建っている。五月ころ、朱雀池のほとりにある草木を見ると、白い綿のようなものが一面に付いているのを見つけることができる。 モリアオガエルの卵である。菅山寺は、天平年間の開基という古刹である。菅原道真が幼いころ当寺で学び、再興したと伝えられ、往時は三院四十九坊からなる大寺院であった。 山門の前に立つ二本の巨木は、道真公お手植えのケヤキといわれ、幹回り六メートル以上もある。千年以上を、この森のなかで生きてきた歴史の重さに圧倒される。
標高:459m
参考タイム:弘善館(45分)呉枯の峰分岐(10分)菅山寺
アプローチ:坂口へ、北陸自動車道木之本ICから車で10分
周辺の見どころ:朱の大鳥居のそばに菊水飴という伝統的な水飴を製造販売するお店がある