建設業許可の説明
1.建設業許可とは
軽微な工事を除き、元請・下請けに関わらず、建設工事を請負う場合には、該当する業種の建設業許可を取得しなければ、工事を請負うことはできません。よって、軽微な工事以外の工事を請負う場合には、建設業許可を取得しておく必要があります。
※軽微な工事とは
材料費・工賃・消費税を含み500万円未満(建築一式工事あっては、1500万円未満、又は木造住宅で延べ床面積150㎡未満)の工事。
なお、発注者側が材料を提供して工事を請負う場合は、材料の市場価格と運送費に相当する額を、当該請負代金に加えて、軽微な工事か、判断します。よって、工事内容によっては、請負代金が500万円に満たない場合でも、軽微な工事と判断されず、無許可営業に該当する場合があります。
※以下のようなケースは、請負工事に該当しませんので、建設業許可の取得は必要ありません。
・草刈り作業や植木の剪定作業のみ請け負う場合
・現場への資材や機材の搬入・搬出のみを請け負う場合
・建築資材の製造や販売のみを行う場合
→以上は工事ではありませんので、建設業許可は不要です。
・不動産業者様で、自社で販売するための建売住宅の施工を自ら行う場合
→この場合、自社販売の建築であり、第三者から受注しての請負工事ではないため、建設業許可は不要です。
2.建設業許可の種類(大臣許可と知事許可)、業種および許可の区分
◇建設業許可の種類(大臣許可と知事許可)
営業所の設置場所により、国土交通大臣許可か各都道府県知事許可のいずれかを取得することになります。
(1)国土交通大臣許可
営業所が複数存在し、複数の都道府県にまたいで設置される場合
(2)知事許可
営業所が1か所(本店等のみ)の場合と、複数の営業所であっても同一の都道府県内にのみ設置されている場合
※大臣許可、又はいずれかの都道府県の許可を取得すれば、全国で工事請負が可能です。
◇許可の業種について
許可業種は、29種類に分かれております。許可要件を満たせば、複数の業種の許可が取得可能です。
建設工事の業種はこちら(国土交通省のホームページ)
◇許可の区分
各業種の建設業許可は、特定建設業と一般建設業に区分され、業種ごとにいずれかの区分の許可を取得します。
(1)特定建設業とは
工事を元請として受注し、下請け業者に合計4000万円以上(建築一式工事の場合は6000万円以上)の工事を発注する場合は、特定建設業許可を取得する必要があります。
(2)一般建設業とは
元請・下請に関わらず500万円以上の工事を請け負い、特定建設業に該当しない工事のみを請け負う場合に、一般建設業許可を取得することとなります。
※特定建設業許可は、下請け業者保護のため、一般建設業許可より許可要件が厳しくなっております。
建設業許可(一般建設業)取得のための要件と準備
1.一般建設業許可(知事許可)を取得するための許可要件について
※ここでは、一般建設業の知事許可の取得要件について説明します。
特定建設業許可については、人的要件・財産的要件が厳しくなりますので、別途、ご相談ください。
建設業許可の取得には、申請書を作成・提出し、許可を受ける業種ごとに、主に以下の許可要件を満たしているか、審査を受けることとなります。
◇人的要件
(1)経営業務管理責任者を設置していること
法人の役員、もしくは個人事業主で、以下のいずれかの条件を満たし本店等に常勤する経営管理者をいいます。
①過去に一定年数(5年又は6年以上)の建設業の経営管理経験(建設業者の役員又は個人事業主の経験)を有する
②許可を受けようとする業種につき、過去に5年以上、取締役会の決議等を経て事業者より権限移譲を受け、建設業の経営管理業務に携わった経験(執行役員や建設業許可業者の令3条使用人等の経験)を有する
③国土交通大臣の認定を受けたもの(海外での建設業の経験など)
(2)営業所に専任技術者を配置していること
専任技術者とは、許可を取得する業種について、主に以下の条件のいずれかを満たす常勤の技術者をいい、営業所1か所につき業種ごとに1人必要です(要件を満たせば、同一営業所内で複数業種の専任技術者を兼任できます)。
①許可業種について、国土交通大臣の指定する資格を保有
②許可業種について一定年数(一般的に10年以上。学歴等により期間短縮)の実務経験を有する
③国土交通大臣の認定を受けたもの(海外での建設業の実務経験など)
※本店等の主たる営業所では、要件を満たせば、経営業務管理責任者と専任技術者を同一の方が兼務できます。
(3)事業主・役員等が欠格要件に該当しないこと
欠格要件とは、個人事業主や法人の役員等が、以下のようなケースに該当する場合となります。
①過去、一定の期間内に、建設業法違反やその他の法令違反で処罰や許可取り消しを受けたことがある
②破産者で復権を得ていない、成年被後見人など、能力制限者である
③反社会的勢力等の構成員や密接関係者などである
(4)本店以外に営業所を設置する場合、各営業所に建設業法施行令第3条に規定する使用人を配置していること
(令3条使用人)
令3条使用人とは、請負工事に関し、契約締結の権限等、経営管理業務を委譲された常勤の使用人をいいます。
一般的に、支店長等の地位にある使用人となります。
※経営業務管理責任者、専任技術者、令3条使用人は、常勤が条件となります。
常勤とは、休業日などを除く所定勤務時間内は、常時、事務所等に勤務している役員や職員をいいます。
他の条件を満たしていても、以下のようなケースのいずれかに該当する役員・職員の場合、経営業務管理責任者や専任技術者等として申請できなくなりますので、別の方の配置が必要となります。
・他の法人の代表取締役や常勤の取締役に就任している場合や、他に個人事業を営んでいる場合
・他の事業者において、専任の宅地建物取引士や管理建築士など、専従性を要する業務に従事している場合
専任技術者の場合は、同一事業者であっても、他の営業所で同様の専従性を要する業務に従事している場合
・営業所から極めて遠方に居住実態があるなど、常識的に常勤が難しい状態の場合
◇財産的要件
(1)建設業を営むに十分な財産的要件を有すること
申請時に500万円以上の預金を有すること、又は申請の直前決算期に500万円以上の自己資本を有していること
◇営業所の要件
(1)契約締結などの業務を行える営業所(事務所)を設置していること
建設業の営業所とするためには、主に、以下の条件を満たす事務所が必要となります。
①電話・FAXなどの通信機器の設置
②契約締結など業務のために必要な広さを有し、会議机や椅子、応接セットなどの設置
③他の法人の事務所や個人の居住スペースと混在せず、壁やパーティション等で明確に分かれた事務所であること
④建設業の営業所であることを外部に明示する看板や表札等の設置
④賃貸事務所の場合、契約用途が事務所となっているもの、又は事務所として家主の許可が得られるもの
⑤人的要件(経営業務管理責任者、令3条使用人(本店等以外)、専任技術者の設置)を満たしているもの
◇社会保険への加入
(1)法律で定められた適切な社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)に加入していること
(令和2年10月より)
建設業の許可取得のためには、法律で定められた適切な社会保険への加入が条件となります。
①法人の場合、健康保険および厚生年金への加入必須
②個人事業の場合、同居親族以外に5人以上の常勤従業員がいる場合、健康保険および厚生年金への加入必須
③法人・個人に関わらず従業員を1人でも雇用した場合(法人の役員および個人事業主の同居親族を除く)、
雇用保険への加入必須
2.申請をするための準備(申請書を作成する前の準備)
(1)許可要件を満たす準備
建設業の許可取得には、まず、許可要件を満たすように、人的・財産的な準備をしていくこととなります。
特に、経営業務管理責任者と専任技術者としての要件を満たす常勤の役員や職員が不在の場合、新たに採用をするなどの事前準備が必要となります。
(新たに採用をしない場合、現在の役員や職員が、条件を満たす業務経験年数に到達するか資格取得するかのいずれかまで、申請を延期することとなります)
また、営業所についても、条件を満たさない場合は、営業所の移転や、事務機器等を追加で設置するなどの準備が必要となる場合があります。
そのほかに、定款の変更、役員変更など、会社登記事項の変更申請や、社会保険への加入手続きなど、各種手続きが必要となる場合があります。
(2)証明書類の準備
都道府県庁に申請書類を提出すると審査が行われますが、審査では、申請書の記載内容が正しく許可要件を現に満たしていることを証明する書類を添付する必要があります。
一般的に必要となる証明書類には、以下のようなものがあります。
①区役所・市役所など官公庁等で取得する書類
例)法人の登記事項証明書、登記されていないことの証明書、身分証明書、経営業務管理責任者経営業務管理責任者や専任技術者等の住民票、健康保険証など
→主に、欠格事項に該当しないか、及び常勤性の証明
②金融機関、賃貸管理業者、資格試験実施団体など第三者に発行してもらう書類
例)預金残高証明書、賃貸事務所の家主と交わした契約書や事務所使用承諾書、資格の合格証書等の資格証明書など
→主に、財産的要件と事務所要件の証明、及び、専任技術者を資格者で申請する場合の資格証明など
③申請者自身で保管されている書類
例)過去の工事の契約書類・注文書・工事請書・請求書、および該当する工事代金入金記録のある預金通帳、過去の税務申告書の控えなど
→主に、経営業務管理責任者と専任技術者に関する業務経験・実務経験の証明
※申請者とは異なる事業者(主に建設業許可を有していた事業者)での、過去の勤務経験や役員経験がある場合、そのときの経験でも実務経験等の証明可能な場合があります。準備が必要な証明書類は、別途ご相談ください。
※過去に許可を取得していて再取得する場合や、許可期限を経過して更新を失念した場合の申請に関する証明書類の準備は、別途、ご相談ください。
※申請内容が虚偽の場合、許可取得後であっても許可取消しとなります。
新規建設業許可の相談・申請代行について
1.相談・申請代行について
建設業許可の取得には、申請のために様々な準備があり、申請する事業者様により準備の内容もそれぞれ異なります。許可取得をお考えの場合は、まずは、当事務所へご相談ください。
ご依頼をいただきますと、概ね以下のような流れで取得に向けてのご相談や申請代行の対応をいたします。
(1)必要な要件を満たしているか、要件の証明に必要な書類等が存在するかの確認など、許可取得に向けたご相談
(2)必要な書類の収集や準備など
※必要な人員の採用、事務所の移転や事務用品の準備、社会保険への加入などを要するする場合があり、これらをお客様にて対応いただく場合があります。
また、過去の勤務先やその役員さん等に証明書作成(実印押印・印鑑証明書添付)のお願いなどが必要となる場合があります。
(3)申請書の作成
(4)申請書の提出・審査および受理
※知事許可の場合、申請と同時に書類審査が行われ、申請書の記載や証明書類の内容によっては、受理されない場合があります。
この場合、指摘事項に対応の上、再提出、或いは、指摘内容によっては、申請自体が不可能となる場合があります。
記載内容・証明書類に不備が無ければ、申請書が受理されます。
(5)許可取得と許可証の発行
※知事許可の場合、申請書の受理から30日以上、かかります。
許可取得後(既に建設業許可をお持ちの業者様)の相談について
1.許可取得後の手続きについて
取得した建設業許可の有効期間は5年間です。許可を継続する場合には、更新申請が必要です。
更新申請時にも、新規申請時とほぼ同様の許可要件を、現に満たしてる必要があります。
また、既に取得している業種以外の業種の許可を新たに取得したい場合、業種追加申請を行うことになるほか、一般建設業許可から特定建設業許可に切り替えたい場合は、般特新規許可申請を行う必要があります。
そのほか、許可期間中に役員や専任技術者等に変更があった場合、商号変更をした場合、事務所を移転した場合等には、その都度、変更届の提出や許可替申請が義務付けられております。
このように、許可取得後も様々な手続きが必要となります。
当事務所では、許可取得後の手続きや許可の維持などに関しても、フォローをいたします。
※許可取得後の主な手続き
・毎年の事業年度終了後、4ヶ月以内に決算変更届(事業年度終了届)の提出
・役員・商号・事務所などに変更事項があった場合の、届出・申請
・5年毎の更新手続き
2.許可の更新ついて
建設業許可は、有効期間が5年となります。よって、建設業許可を継続して取得するには、5年ごとに更新申請を行う必要があります。
更新を行うためには、
(1)必要な変更届、毎年の事業年度終了届が全て提出されていること、
(2)5年間継続して、許可に必要な要件(主に人的要件)を満たし続けていること
(3)特定建設業許可においては、更新時に新規許可と同等の財務要件を満たしていること
が条件となります。
ごくまれに、更新時に要件を満たせず、更新申請ができないケースがありますので、許可取得後、このような事態にならないよう、注意が必要です。
※更新時の社会保険への加入について
令和2年10月より、建設業許可の要件として、法律で定められた社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)への加入が必須となりました。
これに伴い、令和2年10月以降の許可更新では、社会保険へ加入していない場合、建設業許可の更新ができなくなりますので、ご注意ください。加入していない場合は、更新期日(許可期限の1カ月前)に間に合うように、加入をする必要があります。
3.更新申請・変更届等の申請代行ついて
ご依頼を受けますと、概ね以下の流れでご相談と申請代行を行ってまいります。
(1)届出・申請の内容を確認
(2)過去の書類などを確認し、届出漏れがないか確認
※更新申請の場合、未届けの変更事項等がある場合、それらの変更届をすべて行う必要があります。
状況によっては、社会保険に関する申請や役員変更等の登記申請が必要となる場合があります。
(3)必要書類の収集
(4)届出書・申請書の作成
(5)申請書・届出書の提出・審査および受理
(6)更新申請の場合、新たな許可証の発行
※知事許可の場合、申請書の受理から30日以上、かかります。
主な建設業許可に関する申請の費用・報酬の目安
※報酬額については、全て
税込(10%)金額となります。
業務内容により、諸費用や報酬額が目安とは大きく異なる場合があります。
詳しくは、当事務所までご確認下さい。
1.新規建設業許可申請
◇諸費用
・申請手数料:知事許可の場合90,000円
(国土交通大臣許可の場合150,000円)
※一般建設業許可と特定建設業許可を同時に申請する場合は、2倍の手数料となります。
・登記事項証明書、納税証明書、身分証明書などの証明書類 3千円~1万円程度
◇報酬の目安
・新規一般建設業許可申請 報酬の目安
165,000円(専任技術者が実務経験者の場合)
※特定建設業許可申請、般特新規申請、複数営業所での申請及び大臣許可申請の場合、別途お見積りとなります。
2.建設業許可 更新申請
◇諸費用
・申請手数料 50,000円
※一般建設業許可と特定建設業許可を更新する場合は、100,000円です。
・登記事項証明書、納税証明書、身分証明書などの証明書類 3千円~1万円程度
◇報酬の目安
・建設業許可更新申請 報酬の目安 55,000円
※許可期間中に、必要な変更届出を行っていない場合には、報酬が加算となります。
3.業種追加申請
◇諸費用
・申請手数料 50,000円
※更新申請等、他の申請と同時に行う場合は、他の申請の手数料分が加算となります。
・登記事項証明書、納税証明書、身分証明書などの証明書類 3千円~1万円程度
◇報酬の目安
・業種追加申請 報酬の目安 110,000円
※必要な各種変更届出を行っていない場合には、報酬が加算となります。
また、業務内容により、目安とは大きく異なる報酬額となる場合があります。。
4.許可替新規申請(知事許可→ほかの知事許可の場合)
◇諸費用
・申請手数料 新規手数料に準じます。
・登記事項証明書、納税証明書、身分証明書などの証明書類 3千円~1万円程度
◇報酬の目安
・許可替新規申請 報酬の目安 88,000円
※必要な各種変更届出を行っていない場合には、報酬が加算となります。
また、大臣許可との許可替の場合、別途お見積りとなります。
5.変更届①(経営業務管理責任者の交代・専任技術者の交代など許可要件に関わるもの)
◇諸費用
・登記事項証明書、納税証明書、身分証明書などの証明書類 1千円~1万円程度
◇報酬の目安
・変更届 報酬の目安 38,500円~
※業務内容により加算となります。
6.変更届②
(役員変更、資本金の変更、商号変更、許可替を伴わない事務所移転など要件に関わらないもの)
◇諸費用
・登記事項証明書、納税証明書、身分証明書などの証明書類 1千円~5千円程度
◇報酬の目安
・変更届 報酬の目安 16、500円~
※申請事項により報酬が異なります。
7.決算変更届(事業年度終了届)
◇諸費用
・納税証明書 400円
◇報酬の目安
・決算変更届 報酬の目安(1事業年度) 33,000円
※2業種以上の場合、1業種につき3,300円の加算です。
5業種以上は、別途見積となります。