井戸の再生実験

 j実用化を目指したが、紆余曲折をしエコの実践と夢も膨らんだが、最終用途が決まらず、単に井戸汲みの実験になってしまった。


 平成23年夏の終わりに近づいた頃、地中に熱交換器を埋め込み対流を利用する空調システムを設置したエコ住宅が建てられるとの新聞記事を読んだ
ならば、我が家には深さ14mほどの井戸がある。「この井戸から外気温度より低い温度の空気を吸い上げ部屋に引き込めば」と考えた。確かに外気温度30度Cくらいの時、24度C位の空気を吸い出す事ができた。

    
   井戸の空気の吸い出し実験(最大9m迄パイプを入れた)

 冷気吸い出し実験の様子。75ミリΦの雨樋を井戸の中に6mほど下げて吸い上げて見た
 この時の外気温度29度C、吸い出した空気は温度24度Cだった。

 しかし、現実は厳しく、この空気をいざ部屋までと勇んで雨樋を利用した簡易ダクトを作ってみたが、温度の上昇が4度C程あり、また、簡易な断熱材をこの雨樋に捲いてみた。思いつき位の浅知恵では、実用にほど遠く首を傾げる結果となった。このままでは、収まりが着かず、今年の春まで昨年の秋から今年の冬の間を通じて、井戸内の空気を吸い上げて温度観測を続けることにしてお茶を濁していた。しかし、実用にできる断熱された空気ダクトを作ることは、費用が膨大になるものと想像され、興味本位の実験ではとても割に合う訳はなく「諦めた」というのが正しいが、未練たらしく、温度観測を週一位で続けていた。
 その気になって、ダクトを地下に埋めるとかしてダクトの断熱をしっかり施す工夫をするならば、実用になるであろう思いながらではあるが?。

 そんなある日、「空気ではなく水温は?」と思い立ち、バケツを井戸にほおり込み水を汲んで水温が18度Cを観測した。となると、「水を汲め」と方向を変えての井戸汲みである

 ここからポンプ探しが始まり、水道の無い山村に住む水道屋さんから野晒しになっていた中古のポンプをもらってきての実用実験
 10年以上使われお役ごめんとなった川本ポンプ製のN3-156SHである。(個々の部品は、まだまだ販売されていた)



  予備実験


  幸か、不幸か庭にアンテナ用に高さ12mのコンクリート柱が、そびえ立っている。こいつを井戸に見立てて、ポンプを釣り下げた実験をしてからと思い立ち準備を進めた。

    
  まず6mの実験                 ポンプ部分(地表から6m)            揚程8mの実験

まず6mの実験

 なにせ中古のポンプなので、6mの吸込み高さが可能か、否かを確認の実験
   これは、3mの吸込み実験を完了後、計画の吸込み高さ6mで作動するかを確認する為に実施
   (ダブレットアンテナ用の高さ12mのコンクリート柱が、庭に建ててあることでできた実験)

  まさか、このコンクリート柱で水道ポンプの実験をするとは露とも思わなかった
 この高さでの実験中にポンプが、不安定な挙動をしたことから、ポンプの分解清掃をしてみると、内部は錆の巣窟でこれが不安定にさせていたことが解かった。
 (中古の破棄処分のポンプなので、まず、分解清掃をするのが当たり前!と 反省しきり)


ポンプ部分(地表から6m)

 コンクリート柱で地上6mにぶら下げたポンプの状態
 吐出側は、配管にして閉じてしまうとサイフォン効果で吸い込みを助けてしまい、ポンプが吸い込んでいるのか判らなくなってしまう。
 その為、大気中に開放し、回収する為に雨樋の中に吐き出した。これは昨年、井戸から冷気の吸い出し実験に使った雨樋を再利用した。



揚程8mの実験


 ポンプ位置を地上6mとし、吐出側に8mのパイプを繋いで押し上げることが、できるかを実験しました。
 画像のように庭に水を撒く事ができました
  (電柱の根元にたらいを置き、その水を汲んだ)




 実用化へ

 実験の結果、予定の吸い上げ高さと押し上げ揚程を可能であることが確認できたので、いよいよ実用を目指して設置開始



ポンプの組み立ての様子

 水面までの距離、ポンプの性能、材料費などから下図のように決定した。
  ポンプは、ビニールコーティングされている6ミリΦのステンレスワイヤー2本で予定の位置に吊下げてある。
    
       ポンプの配置計画               ポンプ部分の配管             吸い込み側の配管

 ポンプは、ステンレス製の4角のバットを逆さまにした取り付け台を準備し、その四隅に直径6mm1mの長ネジを配置し、このボルトを吊り金具としてワイヤーロープで吊り下げる構造とした。

 ポンプの吸込み側の配管は、ユニオン継ぎ手の下が吸込み側でパイプの荷重を 受ける為にチーズ配管の水平部分を吊りバンドで支え、吸い込み側のエンピ配管の重量を受ける用にし、念の為、4ミリのワイヤーロープでも吊っている。
 配管は、上下方向となり、更にワイヤーロープで吊り下げる為、吸い込み配管、吐出側配管共に中心になるように配管を組み立てている。また、組立、点検、修理を考え、適当な位置にユニオン継ぎ手を配置してある。


 
 いざ井戸の中ヘ下降中。(井戸の内径は、75cm程ある)





   
  きれいな水が、汲み上げられたが?     吸い上げた水の温度(18.6℃)      この時の外気温度(26.9℃)

 小学校3年の時、この家に引っ越してきて以来、60年ほどこの井戸を汲んだ記憶は無い。写真の様にきれいな澄んだ水であったが、これが苦労の始まりとは微塵も思わなかった。
 おおよそ20分ほどでポンプは、空転を始め水を汲まなくなった。そこで、空転した位置の下側にはまだ水があるはずと考え、ワイヤーロープを20センチ程緩めてポンプを下げてみた。 ポンプを運転してみると汲んだことは汲んだのだが、泥水混じりの澄んだ水とはとてもいえない状態になり、やはり15分程でポンプは空転してしまった。

 その後、、15分間隔でオン、オフできる手持ちの24時間タイマーがあったので、2時間で15分運転する様にタイマーをセットして、水を繰り返し汲んでいるが、なかなか改善されないでいる。上記の様に60年も汲まなかったので所謂「みず道」が、確保されていない状態となり、突然、流れだしたので汚れを巻きこんでくるのだろうと想像している(現実には、井戸底部分に溜まったヘドロ層らしいことが判ってくる)
 一般の公共の水道でも断水すると暫くは、汚れた水がでる。きれいになるまで水道を出し続けるようにと連絡がある(数年前に経験済みである。勿論 その料金は無料)

通路に隣り合わせていて仮配管が、地表に剥き出しでは邪魔になる為、きれいになるまで汲み続けることして床に排水管を埋め込んで排水路を作った

 さて、井戸水を汲み続けるということは、満水時と渇水時の水位を知る必要があるので、単に位置表示の水位計を作った。井戸の中には、2リトルのペットボトルを4本束にし1リットル程の水を入れ、重しとして、井戸の外には水を入れた500ccのペットボトルをつり下げて、井戸の蓋からの位置を計れる様な仕掛けを作った。これらは、釣瓶状態になっているので両者が同じ重さでは釣り合ってしまい位置表示はできない。従って、浮き子の方が重くなくてはならない。500ccのペットボトルは、水位表示の為に、ロープにテンションを加えるだけの重さで浮き子より軽い必要がある

   
  2リットル×4本が浮き子、500ccが水面位置表示のペットボトル  失敗とは言えないが、ハッポースチロールに水が浸透した浮子


 この水位計を使い、水面の相対高さを観測しながら、井戸水の汲み出してみるとおおよそ40分程くみ出すと井戸は、「涸れる」ようでポンプは空転を始める。実測の結果、毎分6リットルで40分、つまり240リットル程しか汲めない様で回復に4時間ほど必要とすることが判った。安全を考え、4時間で15分間のポンプ運転するようにタイマーをセットして汲んでみた。

  
 水位計のペットボトル (ペットボトルの底面と井戸蓋の距離を測定する)
 水位の変化が、大きい為、動滑車を入れて変化を2分の1にして計測し易くしてある

 現在の水の使用量からは、この程度の水量では実用にはならない。しかし、昔の、「つるべで井戸水を汲む生活」ならば、これでよかったのかも知れない。
 でも、この水量での、「風呂」は?と考えた。

 更にポンプ位置を調整して、汲み上げていると、満水と吸い上げ不可のとなる水面の差が、1,5m位になり、実験の結果、15分でおおよそ500ccのペットボトル1本分位水面が、下がることも判った。 直径0.75m 高さ1.5mとすれば、約2.6立方mなるが、水位が低下すると濁りがひどくなってしまう。

  このような汲み上げ実験の結果、24時間で1時間ポンプを運転する周期で水の汲み上げを続けることとして、古井戸の復活を図ってみた
 しばらくこの状態で汲み出したが、当然ではあるが後半の12時間の水面回復のほうが緩やかになることに気が付いた。このことから、汲みだしにパターンを12時間で30分に切り替えて汲みだしを続けることにて様子を見ることにした。今後、時間によるものではなく、水面の位置でのコントロールするように切替える予定だ。そうすれば、水位の変化をもう少し大きくできるだろうを思っている

 低水位になった時、井戸底の部分にあるヘドロ層まで吸い込み口を降ろしていた為、吸い込みフートバルブのバルブ面に砂を噛みこんでしまい、チャッキ弁の機能が失われてしまった。中古のポンプ故に汲み上げ不能になってしまい、井戸から全てを引き上げ、フートバルブの交換を余儀なくされた。価格の安いプラスチック製の分解不能のバルブから金属製の分解可能なバルブに交換した。(ポンプの性能曲線からは、フートバルブがなくても吸い上げ可能のはずだが?)

  理論上、ポンプの吸引力の効率が、100%で「漏れ」がないのであれば、水面の気圧が1気圧、液体が水でρ=1g/cmならば、 1kg重/cm=約1000g重/cmであるから 1000=1×h から h=1000cm=10m となる。
 このことは、どんな高性能なポンプを使って水を吸い上げても、水の上の空間の圧力は(真空の時で)ゼロが最小なので、吸い上げることのできる水の柱の高さは10mが限界である」を物語っている
 と言う事は、ポンプの効率がすこぶる悪いと言うしかないが、呼び水さえ保てば、十分汲んでくれるので「よし!」としている

 この古井戸の水が、飲料水に適しているか?、否か? の水質調査をするにはと、所管の保健所に問い合わせてみると「検査費=9,000円也」との回答があり2の足を踏んでいる。災害時の為の井戸としてもその水量が少ない。道路1本離れた小学校が避難所になっているので、自治会に災害時の水源として利用しても良いから水質検査をしてくれとはとても言えそうもない.・・・・・・・・?。

 いろいろと汲み揚げ実験をしていると地表下15m付近から下には、半世紀以上よどみ続けた結果として、泥層が存在するらしく、吸い込み口のフートバルブが泥層に入ってしまい吸い上げ不能になってしまう事が、判ってきた。 また、中古のポンプ故にその吸い込み能力は、著しく悪いので直ぐに空転してしまう。思案の結果、ポンプ吸い込み口のパイプにチーズつけて、地表まで細いパイプを接続して、空転時にはこのパイプから呼び水を押し込める様にした。
 この仕掛けは、うまく働いたが泥水を汲み上げた後に休止すると吸い込み側パイプ内で沈殿した泥がフートバルブに挟まれてしまい、やはりポンプが空転してしまった。

 2013年12月の初めでは、井戸底にある泥水の汲み上げに奮闘している。井戸底迄、13ミリのピ管を17m程降ろして、地上からヘドロ層中までパイプを差し込み、水道水を供給しながら、水位をある程度保ちポンプが空転しないようにして、ヘドロを攪拌しつつこの泥水の汲み上げている。
 現在では、直径0.75m×高さ1.5m=0.66立方程の汲みだしができるようになり、初期に比べ改善されている。


 「災害時の水源」として利用をとも考えていたが、水量を考えると無理がある。ではどうするかと考えた時、この水の最終的な用途をしっかりと考えている訳ではないが、とにかくもっと連続で汲み揚げることができるようにすることのみで、 実用にできる日を楽しみにして、泥水の汲み上げにかなりの期間を要するだろうと腹を決めて気長に取り組むことにした。


 この水の年平均温度は、ほぼ18度C位であると推測される。従って、空調機の前処理として室内機の吸気側にもう一台の熱交換器を置き、この熱交換機で空気を予熱してやれば、冷房、暖房時に一定の温度の空気を供給できることになる。つまり、夏には、気温より低温の空気を、冬には気温より高い温度の空気を供給するから本来の空調機の熱交換する温度差を小さくできる。故に空調機の必要な電力が少なくなることが予想される。

 ヒートポンプ方式の空調機の室外機と室内機は、逆の熱交換をしている。つまり、室内を冷房する為に室外では暖房していることになるから「同様な効果」を期待できる。こちらの方が、建物の中さずに配管できるだろうから工事的には楽になるものと思われる。

 だが、ここにジレンマがある。本来の空調機が、室内の温度が設定値になった飽和運転時の電力と、予熱源の井戸ポンプの運転電力との合計が本来の空調機の運転電力より小さくないと意味がないことだ。この飽和運転になったらポンプは、運転停止とする仕掛けはそんなに難しくないとは思うが?。



 あれや、これやと考えてはみるが、「よし! こうしよう」とは思いつかない。
 前途用のようにもっと水量が多いものとして始めたが、水量の少なさに足元をすくわれた感があり、かろうじて「取り敢えず汲み続ける事」に意義を見出している

 朝,夕おおよそ12時間で1時間程度を汲み出し、水量の増加と濁りの消滅を狙っているが、今後はどうなるか おてんとう様にまかせよう


      しゃーない 気長にやろう・・・・・・・・・・。






 気長にやった (2015.6.26)

  結果 飲料水には、適さない


 ポンプを稼動しては、水温を測定すると年間を通じ18℃〜19℃であることを確認したが、どうも雨が降ると水が濁るように感じ始めた。
 じっくり観察すると「雨が降ると水が濁る」事が確認できたので、飲料水としての使用を諦めることにした。


 残る用途は、庭への水撒きくらいしかなくなったが、初期の目的の空調に使うかを再検討するのも面白いと思うようになった。
 これは、井戸水を空調機の冷媒(?)に使ってみる事になる。
 市販の空調機の室内機にこの井戸水を流し、夏または冬の基礎空調に使えるかも?




  後日談

  この実験をヒントにした知り合いからの報告

  刺激を受けて、庭に深さ20m程の井戸を掘削して水を汲み上げたとの事。そして、水質検査を保健所に依頼し、「飲料水」としても
  大丈夫との判定を受けたそうだ。
   その後、空調の冷媒として使おうと考え、部屋の中にその様に配管し、通水して確かに「冷房の効果がる」事を実感した。

   しかし、ここに大きな落とし穴が有り、周りより低い温度の冷媒(水)を流すとその配管(ラジエータになる)には、空中の水分が、
  結露する事をすっかり忘れていて、配管に勾配を着ける等の排水(?)対策をしなった為、部屋の中に「水滴が降る」ことになり、
  「部屋の中で傘がいる」と家族のヒンシュクを買ったそうだ。

   最高の対策は、その使用を止めることで「対策を、考えています」との事だった。その後の報告は無いが・・・・?。
  




                           
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