ダブレットアンテナの破損 復旧とAWX化の顛末



 平成23年9月21日、午後2時ごろ、上陸した非常に強い台風15号の中心が、かすめて行ったようで、上陸時の中心気圧950hPaと報道されいて、我が家にある往年の貨物船で活躍したであろうアネロイド気圧計は、最低値953hPaを示していた
 暴風警報の中、業務を中止し、自宅に戻ってよいとの社命から自宅待機状態になったのでじっくり観察した。幸い、我が家では、車庫代わりのビニールハウスのビニールとこのアンテナの被害だけで済んだ。

     
    アネロイド気圧計(十二分に年期が入っている)         953hPa

 テレビ放送で台風は、浜松付近に上陸したと放送していたので、中心は南側を通った行ったと安心していた。そこで、無線機の電源をいれワッチしてみると普段と変わりなくノイズも聞こえ、SWRの指示もアンテナカプラのバリコンを少し回すだけで今まで通りの状態なので安心していた。台風直撃なので、おなじみの局長さんからも「大丈夫か?」と夜になるとメールが入るから、「大丈夫と返事をしなちゃあな」と思いながら庭にでて目が点になった。私が、帰宅したときは、無事であったのでよっしゃ、よっしゃと思っていたのが打ちくだかれた。

 吹き返しの風はとんでもなく強烈で、80m用のダブレットのマストは東側にへし折られてしまっていた

 このマストは、平成21年10月8日未明に台風18号の直撃を受けた時、その強風で西側にベンダーで加工した様にきれいにカーブを描いて曲げられていた。

  写真の状態になっても一応絶縁は保たれていたので電波を発射でき、なげきのQSOをしていた。もちろん、アンテナカプラのカバー範囲にあり、バリコンをすこし回すだけで対応できていた。

     
 今回 東側にへし折られたマストパイプ(これでも電波はでる) 2年前から西側に曲げられていたマストパイプ(電波は十分でた)

 そろそろ2年になるので涼しくなったら交換しようと思っていたところなので少し早くなったと思い直した。 どうせ補強をしなくてはならないので、完全に90度方向ではないけれど、エレメントと直角方向にステーを取り、それならば、いっそエレメントにしてAWXもどきにするつもりでいたので、「ちょっと早くなったか」と思い、以前に使っていた5.5スケの硬銅線を引っぱり出した。

しかし、北東のパンザのエレメントは、その下にある430MHZ帯の八木アンテナにひっかかってかろうじて地上に落ちないでいた。

     
  へし折られたマスト                                引きちぎられた波碍子

 このマストにかかった力のすごさは、北東のパンザのトップに取り付けてある波碍子が引きちぎられていることで物語られている

 そこで、昔取った杵柄(?)とばかりに、このアルミパイプ同軸のエレメント受ける風圧荷重を単純計算してみた
 コンクリート製の電柱は、大丈夫として、ここから上方に4m足されているパイプを片持梁として考えた
  (卒業証書は、もらった! 世間は狭いもので先輩方が周りに何人もいらっしゃって頭が上げられない その逆もある)




*****************<風圧の計算>*****************

   計算条件 

   風速60メートル
   エレメント径 15.3mm 全長 38M 地上高16m
      (極端に単純化して 、幅15.3mm×38000mmの長方形として計算する)
  パイプは、長さ4mで先端部に集中荷重が作用する片持梁とする

    (これにも風圧荷重が、作用するがここでは考えていない)

 計算ホームページ検索し、それなりの条件を入力し、その答えを得た


   単位面積あたり風圧q(kg/m(2)) 

         q= (1/2)・ρ・v(2)・C   (注:(2)は、自乗を表す)
         空気密度|ρ|;1/8 (kg/m(3)・<s(2)
         風速v;(m/s)
         風力形状係数C;丸棒の場合は 0.7

 計算条件から荷重点にかかる力は
  ・丸鋼管 P=60*60)/2×1.23×0.7= 1771.7 [N/u] 1 kgf =9.80665 Nなので
       1771.7÷ 9.80665=180.66457821 kgf
 かなり強引な計算であるが、給電点付近に約180Kg程の曲げ荷重が、加わる事になる

このマストパイプに加わる曲げモーメントは、

丸パイプの断面性能計算
  寸法  外径D=3.8cm 肉厚=0.1p

  断面2次モーメント(Ix) Ix=π(D^4−(D−2T)^4)/64=1.990591645Cm^4
  断面係数(Zx) Zx=πD^3/32 外側=5.387046003Cm^3  内側=4.580442089Cm^3
         外側−内側=0.806603914Cm^3

片持ち梁の強度計算
     コンクリート柱から4m突き出ているから
    梁長さ(L): 4000mm
    断面係数(Z): 806.603914mm3
    断面2次モーメント(I): 19905.91645mm4
    荷重(F): 1771.7N
    計算点(x): 4000mm
    材質: 鉄 ヤング率(E): 206000MPa

計算結果
    反力(R): 1771.7N
    たわみ角(θ): 198.04deg
    たわみ(ω): 9217.211mm
    モーメント(M): 0Nmm
    曲げ応力(σ): 0MPa

   (ラジアン - 平面角: 1 rad = 360/2pi  deg = ≒57.29578°≒57°17′44.8″)


この計算の結果は、明白でたわみ角(θ)、およびたわみ(ω) は、「破壊された」ことを示している

 学生の頃は、これらの計算は、計算尺片手に計算式とメモ帳とをにらめっこで計算したものだが、今は、インターネットで計算条件を入力すれば、ただちに計算してくれる。

      隔世の感を否めないのは、私だけだろうか



     壊れたならば、再建しなければならない。


 ホームセンターで売っている単管48パイの6m物では、重すぎて持ち上げられない事は、判っているので折れたパイプと同じ物を使って、ステー線を90度方向に追加すれば、強度は十分になる。そこで、どうせステー線を張るならば、これもエレメントとして給電してAWXにしてやればおもしろいと前々から思っていたので図のように仮復旧した


 このAWX化が、とんでもないことになるとは夢だに想像していなかった


 
 敷地の都合で片方のエレメントを折り曲げざるを得ないので図のようになった。勿論、フィーダーは、アンテナカプラに繋がっている

   
  仮復旧させ、変形AWXと変更なったアンテナ

 デジタル化に伴い他の場所にあるテレビアンテナを使用することになり、テレビアンテナを撤去してすっきりさせた。

 電波が、出せる状態になったので、勇んで無線機の電源をオンにして、SWRを診て愕然となった。帯域幅が、極端に狭くなっている。モービル用とは言わないが、3.5Mhz帯の中で再度チューンをし直さなければならなくなっている。3560KHz付近に調整しておけば、3600KHz位まで何もせずにバンド内を駆け巡って運用できたが、運用周波数ごとにチューンを取らなければならない状態になってしまった

 アンテナカプラの再調整は、覚悟していたけれども、この状態は想像を遙かに超えていて「はやりの想定外だ。何か、起きている?」と思わず考え込んだ。 梯子フィーダーへのコイルタップは、コイルのホットエンド側に数ターンも移動しないとチューンがとれなないし、この為、7Mhzも運用できる様に2バンド化してあったが、不可能な位置にフィーダーへのタップが移動していた。このことは、手持ちの文献によるとアンテナ給電点のインピーダンスが、かなり高くなったらしいことが想像される。資料によれば200Ω位とあることから想像は正しいと言える


 最初の状態では、100kHz位の実用帯域幅を誇っていたが、何のことはないモービル用とは言わないけれど20KHz位になってしまい、帯域幅が広くする為にアルミパイプ同軸を使った意味が全く無くなってしまっている。
 元々の狙いは、できるだけ垂直方向に打ち上げる輻射を多くしたいとの淡い期待もあったのだが、この状態でも普段のラグチュウ局から相対的に強くなっていれば、広帯域の魅力は無くなってしまうが、それはそれで評価もできるかも(?)。


 このステー兼用のエレメントの支柱用にとパンザマストR0−3とR0−4の2本を準備してあるが(?)。 エレメントにしないステーならば張れる様に張ればよく考えなくても済みパンザマストは不要になってしまう

 このアンテナは、敷地の都合で両端を折り曲げている。従って、エレメントに使っているアルミパイプ同軸を曲げる為のベント滑車なる物を使って同軸の外形の数倍の曲率で曲げてある。パイプは、その外径の数倍の曲率で曲げてやらないとつぶれてしまい、折れ曲がってしまう。この滑車に使ったシーブ部分は、百均で買ったプラスチックの取り皿を加工した物だった。約2年半で紫外線によりボロボロになっているところに今回の台風でシーブ部分は、破壊され中心の軸だけになってしまっていた。これでは、折れ曲がってしまう。

  
  紫外線でボロボロになり台風でとどめをさされてローラがなくなった   紫外線でボロボロなった。

  ホームセンターでステンレス製と銘打って売られているボル、トナットと平ワッシャー 確かにステンレス製であるが、赤錆が浮かんでいる。ステンレスの謂われは、その錆が透明で保護膜となることであたかも「錆びない!」ように見えるだけで、「錆びない!」のでは無いので、違うじゃないかとは言えないか?と、その価格から変に納得した
  ほとんどのプラスチックは、紫外線に対して脆弱なことは判っていたが、ここまでとは
   取り敢えずアルミパイプは潰れてはいないようなので安心した。

 そこで、懲りずに同じく百均でステンレスらしい光沢をしていてステンレス製とうたわれているお玉を買ってきて、その杖を取り、お玉部分を背中合わせにしてローラーを制作することにした
   
   百均のステンレス製のお玉                         杖を取って
     取っ手は、リベットでカシメられているからグラインダーで削って外した

  構造は、全く同じでローラー部分が金属になっただけ

   
  再度、制作したベント滑車 お玉の柄取り中心に穴をあけただけ ただし、中心に大きなワッシャーを当ててある
   前回は、皿にこだわり、適当な大きさの金属(ステンレス)製の物を見つけられなかったのでプラスチックの皿を加工したが、
  丸い物はお皿だけではないからもう少し、やわらかく考えていれば と反省している


         
  エレメントにベント滑車を組み付ける パンザに登り、上下ワイヤーを緩め、滑車に通す

    
  パンザ0番のトップに引き上げる 上下するには、4ミリのステンワイヤーを使ってある。同軸のパイプにもそれなりの強度があるので滑車のシーブの曲率には曲がらずに大きな曲げ半径になっている
 アンテナを上下する滑車は無くても良いと思うが、細かい作業を0番に抱きついて行うのは大変なのでこうした。

 今度は、大丈夫だろう?

 「敵を知り、己を知り、百戦危うからず」の諺にならって、梯子フィーダー端末点のインピーダンスを測定してみる気になった。
 とは、言うものの測定器は?から始り、「ノイズブリッジ」を使ってみることにした。しかし、これに接続する接栓は、M型なので平衡不平衡を変換しなくてはいけなくなった。そのため、受信専用として1:1の平衡不平衡のバランを急遽作った。


         
          1:1 平衡不平衡バラン              タッパーに組み込んだ

   
 パロマ製ノイズブリッジ                      測定中 
 1:1のバランを通したノイズブリッジでは、3550付近ではリアクタンス分はほぼ零で、抵抗分は25Ω以下となる
 アンテナアナライザーでは、リアクタンス分が残り、表示されている

    
  ローカルが、これで調べろと貸してくれたアンテナアナライザーでの測定
    3.5帯中心付近で送信機(TS−480)でベストSWR(限りなく1:1を表示)点でアンテナカプラ入力コネクタ部分にて測定
  R=27 X=20Ω  SWR=2.2    XL =誘導性リアクタンス=20         XC =容量性リアクタンス=20


 確信はないが、一次側の結合コイルの巻数、結合量を調整すれば、もっと追い込めるだろうと思う。しかし、このアンテナカプラの構造上不可能なので今回は見送ることにした。リンクコイルと直列にそれなりの容量のバリコンを入れてみるのも一案かもしれない。
 
 アンテナカプラから送信機までは、2分の1波長×0.66=26m長の同軸ケーブルで接続しているが、アンテナカプラの製作の章で紹介してあるようにコネクタごと編線で包まれているので脱着が面倒なのでこうしてみたが、この結果はどうなんだろうといえる

 測れば測る程不思議な答えとなるので考え込むことになる。こうなるとノートパソコンとカプラコントローラを倉庫に運んで調整しながら調べれば面白いのかもしれない

 こうしているうちにアンテナカプラのコイルのタップ位置を勘違いをして接続したことに気づかずに測定してみたところ何と「帯域幅70KHz」を測定できた。「何だ!」 測定間違いじゃないかと測定結果を見直したが、やはり間違いない。SWR=1.5迄許せばおおよそ100KHzの帯域幅を確保できていることになり、元の状態と同様になったかに思えるが、7MHZ帯が使えないことは、やはり治っていない。

 前の状態から、フィーダー位置はコイルのホットエンド側に移動し、バリコンは抜けた位置(小容量)に移動した。この為に、タップ位置からは7MHz帯は、使えない事になっている。これなら思惑どおりなので3.5MHz帯のみならこのまま使えると思うが、やはり。
 7MHZ帯も使えることを考えるとAWX擬きよりも、単なるステー線に戻した方がよいのだろう。


  ことのついでとは言っても大げさになるが、下図の様な3つの状態を実験してみようと考えている

 
 エレメントの極めて直下におおよそ90度方向に2分の1波長の導線がある事になる。
  直近に2分の1波長の導線があるのだから何らかの影響があるとはずで、「さあ?」と思うしかない


 
     上記同様に、極めて直近に4分の1波長の導線が、2本存在することになる。これが、一番簡単でステーエレメントの
     接続リードを切るだけ済む

 

 
  この3つの実験には、マストパイプの上げ下げが必須になる。そこでひと工夫として昇降装置というと大袈裟になるが、滑車を4つと
 シメラーを用意した。動滑車が2ヶ、固定滑車2ケとすれば、1mの引き上げで4m引き上げられる事になる。荷重は、アンテナを張った
 ままでの上下となるが、とんでもない力にはならないだろうし、シメラーの能力は、1トンほどあるので大丈夫と思っている。

 マスト上下用の仕掛け(案)
  




 この3つの実験は、風の強さと天気と休日の組み合わせできまるので、来年の春、暖かくなるまでしないかもしれない



                                        
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