シャトー酒折ワイナリー
〜篤農家との二人三脚〜
外観
住所は甲府市ですが酒折町は中心部より離れた場所に位置する町。さすが山梨の中心地近くだけあって道路はよく整備され、地方都市といった趣のある場所です。目的のワイナリーに向け、この酒折町の小高く急な斜面の丘を少し昇っていくと、山梨名物の巨峰などの畑に混じって垣根栽培の葡萄畑が。さらに上にあがると広い駐車場、そこに建つ円形屋根のシャトー酒折の工場がみえてくるでしょう。
4階建の威容をほこり、大型バスの留められる駐車場も完備と、設備は親会社である木下商事の名を汚さないもの。ワイナリーの最上階が入り口となっており、眼下には甲府市、遠くには南アルプスが見渡せます。
歴史
社名でわかるように、シャトー酒折は輸入ワイン事業大手の木下商事参加にある製造部門。創業は1969年で、明治初期に山の斜面を開拓して作られた古い段々畑を開発して、現在のワイナリーを1991年 6月にオープンしました。
木下商事の木下康光社長の弟である木下康永氏が代表をつとめ、生産本数25万本と中堅クラスの規模。
販売は木下商事が受け持っており季節限定で出すにごり甲州などは都心で広く見受けられるなど、かなりの販売網を誇っています。
原料はほとんどを契約農家などに頼っているのはいずこも同じですが、甲州、ベリーA、デラウェアを中心に自社畑の品種等などを加えたワインを製造。製造の社員は5人とあまり多くはないですが、農家の池川仁氏をアドバイザーの迎え、ベリーAを中心に完熟した葡萄を主体としたワイン造りを考えているなど、自社の個性を発揮しようと研鑚が続いています。


施設の概略

内装は木材を基調とした、販売所兼テイスティングルームが入り口から入ってすぐにあります。正面には自社のワインや木下商事が輸入しているワインがケースにいれられて陳列されています(販売しているもののなかにはフランスの高級ワインもちらほら)。
入り口から順路を通っていくと左側にカウンターがあり、ここで有料・無料の試飲が可能。自社製造のワインのほか、こちらもやはり自社で製造している梅酒なども試飲可能です。中には高級ワインと見まがう値段の高級梅酒も含まれていたりと、なかなかにユニーク。
なおここで輸入ワインと国産ワインのブレンドワインが販売されていますが、こちらはワイナリーのみでしか販売されていない商品。通常物販に乗っているものは全て純国産ワインとなります。これは珍しいパターンでしょう。

入り口が4階なのではるか下を降りて一階につくと、かなり大型のステンレスタンクが並んでいるのが見渡せます。生産本数をあらかじめ知っていると少し多すぎるという疑問をもつでしょうが、本当に大型タンクが多すぎるようです。もっともこれら全てが満杯になって醸造されるということは現在はないものの、その全てのタンクが繁忙期には使われ様々な種類と地区の葡萄が醸造されているのでフル稼働であることに変わりはありません。またワイナリーとしては珍しく圧力等の調節に便利なビール用の発酵タンクも所有しており、これは主に試験醸造に利用されているとのこと。
加えて本来ここの工場の商品ではなかったようですが、製造が統合されて以降は梅酒も(ただし部屋は区切られています)製造するようになっています。おかげでワイナリーの社員の仕事がますます増えたとか・・・・。
地下には樽のセラーがあり、ここで数多くのワインが熟成されています。数もかなりのもので、ヨーロッパ品種だけでなくベリーAの樽貯蔵の個数がかなり多いのはこのワイナリーならでは。ベリーAはタンニンがもともと少ない品種のため、新樽によるタンニンを利用してボリューム感のあるワインもあり、一口に樽熟成・樽発酵といっても様々なバリエーションがあります。なお甲州は繊細なため樽熟成は現在行っていません(樽発酵のみ)。
なお樽ごとの品質の違いについては、社員がテイスティングした際になかなか面白い区分マークが書かれています(^_^)。
銘柄: カベルネ ロゼ 2006
生産元: シャトー酒折
価格: 2100円
使用品種: カベルネ・ソーヴィニヨン
備考 自社畑のカベルネを使用してつくったロゼワイン。ロゼというにはかなり色が濃く、ドイツの発色の弱い赤よりはよほど鮮やかな紅色がでています。香りはチェリーやアセロラといった果実香が主体で、甘酸っぱい香りという印象をうけます。アタックはしっかりしており前半は骨太、中盤は果実の香りがひろがり、最後にロゼとは思えないほどかなり強い酸味にはびっくり。減酸をおそらくはあまり行っていないのでしょうが、刺激的な酸味とタンニンのしぶみがバランスよくまとまっています。
価格はロゼとしては安くはないものの、かなり内容のあるワインなので購入の価値あり。
飲んだ日: 2007年1月19日


外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  ツアー  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
葡萄畑
自社畑はワイナリーのすぐ下にある斜面にあるので見学は容易です。シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローといったヨーロッパ品種も植えられていますが、こちらはあまり力を入れている品種ではありません。母体の会社がチリなどのワインを輸入している関係上、お客さんはどうしても展示会や販促会などでそうした濃厚なワインと自社のワインを比べてしまいます。そうなると価格的に見ても国産に悪い印象を抱くことが多いため、無理に世界的に著名な品種を栽培することはないという方針になったそうですがこれは酒折ならではの事情といえるでしょう。
代わって『池川総合ブドウ園』園長の池川仁とシャトー酒折で最も近年重視している品種はなんとマスカットベリーA! 甲州を重視するワイナリーは多いですが、栽培面でベリーAに最大の力を注ぐというのは山梨では非常に珍しい、というかシャトー酒折だけではないでしょうか。
「酒折はベリーAをフラグシップに」というのは口先だけではなく、2005年からはベリーAのワイン用の契約栽培を行い、さらに自社畑のヨーロッパ品種を改植してベリーAの垣根栽培を始めています。一般的にはベリーAをやめてヨーロッパ品種を栽培する逆のパターンが多いのですから、かなりの英断。栽培も一般的なベリーAよりも収穫時期を3週間以上遅らせることで、ワインの品質向上を狙うなどリスクをものともせずに品質向上を目指してます。
栽培指導は池川氏が行っており、『日本の風土に合った葡萄の栽培』という観点からみても今後が大変に期待される畑といえるでしょう。

ツアー
あらかじめ申し込めば無料の工場見学ツアーを行ってくれます。(団体の場合には予約が必要です)。
係員が一人ついて工場の設備などを醸造の順番に沿って説明してくれます。もちろん圧搾機やタンクなどの醸造機械は一通り見学できます。途中に梅酒のタンクがあるために時期によってはワイナリーらしからぬ梅の良い香りがすることも(^_^)
ステンレスタンクのある部分を案内されたところで一通りの説明は終わりとなります。
テイスティング
販売されているほとんどのワインをカウンターで試飲することが可能です。ただし、高額の銘柄に関してのテイスティングは有料のものもありますのでご注意ください。

エステート カベルネ=ロゼ:自社畑のカベルネ=ソーヴィニヨンによるロゼワイン。詳細は管理人のワイン記録にて。ヨーロッパ品種はあまり重視していないといいながらもちゃんと内容のあるワインを造っています。

マスカットベリーA 2005 樽熟成:価格は1890円。大変に果実味豊かなワインですが、味わいも負けず劣らずに旨みがあり食中酒として濃い料理とも合わせられそう。樽の香りも新樽比率が高いだけあって高級感があるうえタンニンもしっかりしており、最低でも価格分の充実感は保証できます。

甲州ドライ 2004:価格は1470円。辛口のワインで香りはどちからというと日本酒的なところがあります。当たり前といえば当たり前ですが熟成間があり、複雑な味わい。

甲州ドライ 2005:1470円。洋梨などの香りのほかにちょっとだけわさびのような刺激のある香り。酸味もあり飲んだ時の充実感があります。いろいろとヴィンテージごとにのみ比べてみると、毎年、醸造方法などを変えているのがわかります。なおこの他、2006にあたる銘柄(飲んだ時は未発売)は明瞭に柑橘系の香りがし、ブラインドで飲まされたらソーヴィニヨン=ブランと間違えるほうが普通と言っていいワイン。

甲州スィート 2004:価格は1470円。山梨県内の3つの産地の甲州がはいっており、大変にバランスよい味わい。ドライ同様に香りには熟成した感じがでていますが、含み香にはりんごなどの香りのするフルーティーなワイン。

甲州スィート 2005:1470円。同ヴィンテージのドライを甘口に仕上げた、と言われて納得の内容。味わいはともかく香りなどにはこのヴィンテージは特徴的でかなり共通しています。

甲州にごりワイン 2007:1470円。この状態の甲州を出している会社が少数であることもあり有名な銘柄。葡萄を食べているというよりは、柑橘類やリンゴをかじったような甘く心地よい香りが特徴です。2007年度からグレープフルーツやみかんといった香りがするようになり、さらに香りのボリュームが増しています。味わいは新酒ということもあってやや甘口、含み香もしっかりしたグッドワイン。

他にフェスタンシリーズと銘打たれたワインは、洗練されたボトル(500ml)に入っており贈答品などにはこういったものはいいかもしれません。
またワインではありませんが、こちらで製造している梅酒も試飲・購入が可能。中〜高価格帯の梅酒を製造しているため、ぶっつけ本番で一本買う気が起こらない方はまず試飲してみるとよいでしょう。梅は東京都青梅市原産の『梅郷』を使用、価格にふさわしい内容です。
と、皮肉はさておき、他の商品はおおむね適正価格で販売されていますからワインが飲めない人のためのお土産として買っていってもよいでしょう。

                     
日本でもあまりないタイプの発酵タンク。ビール醸造用のものを含めあったりと、醸造設備は豊富です。

購入方法 
ワイナリーの販売所から直接購入、ホームページからの注文を受付けています。生産本数の多い銘柄は販売店が多いので比較的入手は容易。また生産本数の少ない銘柄でも木下商事からの入荷がある酒販店であれば取り寄せも可能と思います。


ワイナリーアクセス
公式ホームページに詳細な地図が載っているのでそちらを参照してください。


総論
季節限定で賞味期限がついている珍しいワイン「にごり甲州」が、都心部を中心にかなり出回っているのでこのワイナリーの知名度は中堅クラスとしてはなかなかのものでしょう。このワイン、いわゆるマニアにはウケが悪いタイプかもしれませんが新酒特有の甘い香りと味わいに好印象をもった人は少なくないはずです。
しかしシャトー酒折は変わった製品がメインのワイナリーなどではけしてない正統派の醸造所。ヨーロッパ品種の栽培はある程度を見切りをつけ、フラグシップをベリーAにシフトするなどなかなか大胆な試みを行っている点には驚かされました。

私は2000年あたりから、毎年試飲階等の機会で酒折のワインを飲んでいましたが、最初の頃はまずいとは思わないものの他社の優れたワインと比べるとわざわざ購入の必要はないだろうという感想をもちました。しかし醸造・栽培ともに現在も試行錯誤が繰り返され、その努力は確実に品質を高めています。
発展著しい酒折には農家の池川氏が大きな影響を与えていますが、この人は山梨のワイナリーの間ではも有名な人物。他社の方に聞くと「うまいワインが飲みたい、そのためには協力を惜しまない」という熱意をもち、しかも努力家の農家というのは極めて少数で大半の農家は当然ながらもっと純粋に商売として葡萄を栽培しているそうです。生活なのですからむしろそちらが普通なのはよくわかりますが、シャトー酒折はその数少ない『普通でない農家』の協力を得ることに成功したワイナリーといえるでしょう。
その池川氏の協力もあって力を入れているベリーAの上級クラスは確かに自慢してよい出来栄え。ベリーAのワインとしては完成度は間違いなく全国でベスト5には入るであろう内容です。


酒折町は葡萄狩りの産地としてはやや東京から離れていますが、甲府市の中心地に近く、観光する場所には困らないのもよいところ。さらに私のようなワインマニアを魅了するワイナリーも甲府市には他に数件存在するのもポイントです。その魅了してやまないワイナリーに酒折が入ってるのは言うまでもありません。また梅酒もあるので、ワインにあまり興味がなくてもこちらが好きな人とならば同伴できるのもありがたいです。
日本特有の品種に力を入れている点などからみても注目度のあがるワイナリーと予想されるシャトー酒折。甲府市の観光のついででも、ワイナリー目当てでもぜひ酒折に足を運んでみてください。

( ̄_ ̄|||)な状態
社名 木下商事(株) シャトー酒折ワイナリー
住所 山梨県甲府市酒折町字内林の丁1338-203
電話番号 055-227-0511
取寄せ オンラインショッピング有り HP http://www.sakaoriwine.com/
自社畑あり 契約栽培畑あり ツアー等 あり(無料・要予約)
テイスティング可(無料・有料)
栽培品種 マスカットベリーA、甲州、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、他 営業日 年末年始を除き、年中無休
★訪問日 2007年9月18日
備考:梅酒生産
良い状態。
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銘柄: マスカットベリーA樽熟成 キュヴェ イケガワ2005
生産元: シャトー酒折
価格: 2310円
使用品種: マスカット・ベリーA
備考 ベリーAを通常より収穫を遅くし完熟したものを使用した銘柄。シャトー酒折ののフラグシップワインです。
色は完熟させたというわりには薄めで既に茶褐色のニュアンスもあり、ヴィンテージにしては熟成した雰囲気。色合いにやや不安を感じつつも香りを嗅ぐと、ブラックベリーなどの果実香やコーヒーのほか、シナモンといったスパイシーで複雑な香り。味わいは非常に滑らかかつ複雑で含み香も上立香と同様にやはり複雑で奥深さを感じます。酸とうまみのバンラスがよく、ややヴィンテージに比べて熟成しているものの、正直これほどのワインがベリーAでできるのかと驚愕しました。
同価格の海外を探してもこれだけの内容のワインはまず見つかりません。見つけたら即買いです。
飲んだ日: 2007年1月22日