フジッコワイナリー
〜フジッコは煮豆だけにあらず〜
外観
勝沼の中心部からかなり外れた丘のうえに、かなり遠くからでもわかる「フジッコワイナリー」と書かれた巨大な看板があります。一見、ただの工場のようにしか見えませんが、近くにいけば観光客用の入り口があり、ワイナリーらしく樽や圧搾機といった醸造器具も展示してあります。超大手のワイナリーのわりにはなんとなく入り口がせまいのですが中に入ると広いテイスティングルームがあり、そのギャップに驚くことになります。
駐車場は広く車で行くのに向いていますが、ものすごい坂の上にあるので自転車でいくとかなり難渋することになります。・・・正確にいうと難渋することになりました。

 
歴史
名前で判るとおり、煮豆やナタデココなどのデザートの生産で有名な株式会社フジッコの100%出資により作られたワイナリーです。新規事業の開拓と新たな食卓の演出を目標にフジッコのワイン生産部門としてフジッコワイナリーが設立されました。(※1)
1986年より本格的にワイン醸造を開始し、1994年に同じ工場内にナタデココのデザートの生産工場も建設されています(※2)。
社員数は約70人と多いのですが、半分以上が併設されているナタデココ工場の社員なのでワイナリーの社員はずっと少なくなります。
生産本数は年間20万本に届かない程度と、大手の資本が入っているワイナリーとしてはあまり多くありません。生産するワインのほとんどは純国産(9割は山梨産)の葡萄を使用しています。以前は輸入ワインもブレンドしていましたが、現在は全原料を国産のものに切り替えており、かなり純国産ブランドを確立することに力を入れています。
他に「鳥居平ワインの会」に参加し甲州の品質向上の研究を行うなど、「大手資本=とりあえず量産」のイメージと異なり、かなり真剣にワインに向き合っていることがうかがえます。

※1親会社フジッコの商品は甲州以外のワインに合うものがあるようにはあまり思えませんが・・・(^^;。
※2これは観光用工場などではなく、れっきとした生産工場です。ここで作られた商品が全国のコンビニなどで販売されています。


施設の概略

大手資本だけあって広く、清潔感溢れるテイスティングルーム兼販売所があります。自社の方針やワイン醸造の工程などを説明したビデオも流され、受付や店内にいる社員の数も多いなど、いたれりつくせりの感があります。

さらにナタデココ工場が併設ということで、”自社製ナタデココが食べ放題”というリッチなサービスも行われています(しかも無料!)。もちろん販売も行われていますが、さすがにこちらは工場直送、というかすぐそこで作っていても定価販売です。
お土産用商品も販売しており、観光客向けの対応も手堅く行っていることをうかがわせます。

テイスティングルームからの眺望はご自慢のものだけあり素晴らしく、またナタデココ工場を見学することも可能です。こちらはツアーなどでなく、外からガラス越しにみるだけのものになります。
目立たないですがグラスの販売もドイツのカリクリスタルのグラスを販売しており、値段が安いわりにはかなりよいものをおいてあります。
また、後述するツアーを申し込めば醸造施設の一部を見学可能です。

施設の内装の充実ぶりはさすが大企業で、並のワイナリーでは及ばないところです。

銘柄: 甲州辛口 2001
生産元: フジッコワイナリー
価格: 1260円
使用品種: 甲州葡萄
備考 フリーランを使用した甲州ワイン。色は薄いレモンイエロー。香りはシンプルで、白桃や白い花のニュアンスがあります。穏やかでほどよい酸味と、甲州としては厚みのある旨味があり、薄い感じを受けることはありません。
含み香には、フルーティーーな香りのほかにも軽い樽香のようなスモーキーなところがあります。甲州由来のものでしょう。
値段と品質を比べるとお買い得であるといえます。
飲んだ日: 2004年7月19日


外観  歴史  施設の概略  葡萄畑  ツアー  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
葡萄畑
自社畑ではシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンといった品種が栽培されています。しかし、途中から一部のヨーロッパ品種を引き抜いて甲州に改植という、英断が行われました。社長である雨宮氏は甲州重視であることは知られていましたが、カベルネなどを切って新たに甲州を植えるという行為は滅多に行われることはないため、関係者を驚かせています。

ツアー
申し込めばその場で無料の工場見学ツアーを行ってくれます。(団体の場合には予約が必要です)。
係員が一人ついて工場の設備などを醸造の順番に沿って説明してくれます。もちろん圧搾機やタンクなどの醸造機械は一通り見学できます。
瓶熟成されているセラーと瓶詰め機のある場所まで行くとツアーは終了です。瓶詰めの工程は完全に自動化されており、稼動中であればガラス越しに動いている状態を見ることができます。

蛇足ですが、案内してくれた社員さんはワイン醸造については詳しくなかったのであまりマニアックなことは聞けませんでした(^_^;。どちらにせよ醸造の基礎を説明するタイプのツアーなので、「フジッコワイナリー」ならではの特徴などを知りたいならば、むしろテイスティングルームに流れるビデオを見る方がよいでしょう。
テイスティング
販売されているほとんどのワインを自由に試飲することが可能です。ただし、値段が2000円を超える銘柄に関してのテイスティングは有料のものもありますのでご注意ください。有料テイスティングの金額は書いてありませんが、びっくりするほど高いということはなくワインの値段の約10分の1程度です。ちなみにグラスに注がれる量が多いので、利くだけで終わりにしようと思っていると困ることがあります(^^)

無添加ベリーA 2008:まあよくあるといえば、よくある亜硫酸無添加のマスカットベリーA。と思いきや、1000円とは思えない濃縮感、熟成のある香りが特徴の大変出来のいいワイン!ヴィンテージが若かったこともあり無添加特有の酸化臭もほとんど確認できず、ラベルに書いていんなければ亜硫酸無添加などとは思わないでしょう。
このワイン、ワイナリーの方に聞いたところ亜硫酸なしで高い品質を維持するために、原料ブドウに特に優良なものを使用しているとのこと。それでも価格は1000円のため、我々にはありがたい代わりにワイナリーの方には悩みの種の銘柄となっているそうです。

甲州シュール・リー 2002:詳細は管理人のワイン記録に譲りますが、数あるフジッコの甲州ワインの中でも白眉といっていい品質。人気が一番あるというのもわかります。これとは違う銘柄ですが、辛口甲州もなかなかよくできています。

甲州(辛口) 2001:おとなしながらもフルーティーな洋梨の香り。わずかに糖度を残した味わいで、熟成によるほどよい複雑味も感じます。かなりクリーンなワインで、食事の邪魔をしません。値段が1200円と安いですが、価格以上の品質であるといえます。

フジッコ ブラン :テーブルワインとしての新たな可能性へ向け造られた2005年度の新商品。価格は1200円で、甲州・シャルドネ・セミヨンを使用したワインとなります。オール国産原料から造られており、おとなしめな香りにわずかなミネラル香がある気がします。味わいはとても素直で軽やか。バランスがよい辛口ワインで甲州辛口以上におすすめです。

巨峰ワイン:甘口で、白砂糖のような香り。味は薄く、悪いいいかたをすると砂糖水のような感じです。もう少し原料葡萄らしさがでてほしいところです。

後発に属するワイナリーとしては珍しく、山梨のワイナリーの伝統(?)にちなみここでも一升瓶ワインが販売されています。甲州やマスカットベリーAによるワインで、原材料などは720mlの商品と基本的には変わらないそうですが、一升瓶売りのものはヴィンテージがない点が異なります(異なる年のワインをブレンドしているため)。フジッコで生産しているワイン多くにヴィンテージが記載されていますが、これは例外です。

他にノンアルコールのブドウジュースやキウィフルーツで醸造されたワインなども販売されています。お酒が飲めない人でもそこそこ楽しめるような気配りがされており好感がもてます。
他の商品はおおむね適正価格で販売されていますからワインが飲めない人のためのお土産として買っていってもよいでしょう。

購入方法 
ワイナリーの販売所から直接購入、ホームページからの注文を受付けています。取り扱い店に関しては公式ホームページにあるのでそちらを参照してください。
ただし、ホームページには全銘柄が掲載されているわけではないようです。


ワイナリーアクセス
公式ホームページに詳細な地図が載っているのでそちらを参照してください。


総論
フジッコワイナリーはなんといっても施設とサービスが充実し、観光用の商品もそろっています。こういったところにまで資金を回せるのは大手ならではですが、きちんとお客の方を向いていることの証でもあるといえます。実際、多くの観光客がぶどう狩りのシーズンに押し寄せて、広いテイスティングルームがごった返すこともあります。

しかしワインの方まで”観光用”などということはなく、ワイナリーの名に恥じないものを醸造しています。強力なライバルが多い山梨でも、コストパフォーマンスに優れた商品を多く出しており、全体が低価格に抑えられています。特に甲州シュール・リーを代表とする甲州ワインの多くは他社の優良銘柄と比較しても勝るとも劣らない品質のものを生産しています。他でも、甲州やフジッコブランなどの白ワインの品質は概して良好で、とても素直なワインという印象を受けました。反面、赤は価格帯に関係なく充分とは言い難い品質のものが多く、甲州と比べるとまだまだ向上の余地があるように思えます。ただしべりーAのワインなどに良い銘柄が存在しており、こちらはむしろおすすめ。

その性質上、ほとんどのワイナリーはどうしてもワインに詳しい人同士や、ひとりでないとなかなか楽しみづらい部分があります。そのなかでもフジッコワイナリーはあまりワインを知らない人や、子供と気軽に訪れることができるワイナリーとして訪問の選択肢に入れてよい存在です。
もちろん、詳しければより楽しめるワイナリーであることを付け加えておきます。
見学の際にみることができる樽。これはごく一部だけで実際には工場の奥に大量の樽があるそうです。
社名 フジッコワイナリー(株)
住所 山梨県東山梨郡勝沼町下岩崎2770-1
電話番号 0553-44-3181
取寄せ オンラインショッピング有り HP http://www.fujiclairwine.jp/
自社畑あり 契約栽培畑あり ツアー等 あり(無料・予約不要)
テイスティング可(無料・有料)
栽培品種 甲州、マスカットベリーA、シャルドネ、カベルネ・フラン、巨峰、ナイアガラ、他 営業日 年末年始を除き、年中無休
★訪問日 2003年12月29日 2008年11月15日
備考:ナタデココ工場併設、国産ブドウのみ使用
はじにあってわかりにくいのですが、ビデオの流れている側で売られているドイツ製グラス。コストパフォーマンスに優れた一品です。
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銘柄: 無添加ベリーA 2008
生産元: フジッコワイナリー
価格: 1029円
使用品種: ベリーA(山梨県産)
備考 色はやや薄めながら、黒みがかった紅色。トップノーズはベリーAによくある果実香豊かなフランボワーズや他にスパイシーな香り、狐臭も弱めながらあります。
驚かされるのは口に含んだときのねっとりとした濃縮感。また無添加といいながらほとんど酸化臭を感じさせず、果実香のみが香ります。素人の私ですら良い原料を使ったのがわかります。
このワイン、明らかに品質と値段があっていません。フジッコが価格を改訂しないうちに見つけ次第飲むべきワインです。
飲んだ日: 2009年4月19日