社名 ゲイマーワイン
住所 神奈川県相模原市大野台4丁目1−11 電話番号 042-752-2364
取寄せ 不可 小売店販売のみ HP なし
自社畑あり 自社栽培葡萄のみを醸造 ツアー等 なし 訪問自由
テイスティング有り(無料)
栽培品種 詳細不明(全てヨーロッパ品種) 営業日 ※2004年12月をもって、
閉園となりました
★訪問日 2003年8月3日
ゲイマーワイン
〜コンクリートの海に浮かぶ緑の孤島〜
外観

相模原市の住宅街と工場群の真っ只中にある、松や杉に囲まれた広大な葡萄畑。それがゲイマーワインです。
門をくぐると、突然別の世界にでも来てしまったかのように目の前に大きな垣根立ての葡萄畑が広がります(下図)。さらに葡萄の木の数は、相模原という住宅地の中にあるとはとても思えないほどに膨大なものです。
そして、この畑の遊歩道を進んでいくと、真新しい赤みがかった倉庫のような建物が見えてきます。それがこのページで紹介するゲイマーワインの醸造所・小売店です(右図)。

 
歴史

ゲイマーワインの現在に至るまでの歴史はかなり異色です。
フランスの洋裁の修行に行っていた岡山の名家の子女、戸田康子(結婚後はゲイマー康子)が、13歳年下のワイン農家の長男マーセル・ゲイマーと恋仲になったのがそもそもの始まりでした。
康子は帰国後、東京に日本初の本場フランス仕込みの洋裁店を開きます。いくら良家の子女で資産があるとはいえ、戦前の日本でこのような事業を起こす女性はごく少数であったことを考えれば、かなり先進的な思想と行動力の持ち主であったといえるでしょう。洋裁店で作られる洋服は非常に高価でしたが、上流階級の婦人たちが数多く訪れたため大成功となります。夫ゲイマーも来日し、毛皮貿易を営んでそこそこ成功します。
ところが戦後ある時、康子は友人から経営に失敗した相模原の葡萄畑を買い取ってほしいと泣きつかれました。康子自身が友人にワイン作りを薦めたこともあり葡萄園を買い取ることを決意。ワイン農家の長男ではありましたが実際に葡萄園であまり働いたことがない夫のゲイマーを何とか説得し、1952年ついにゲイマーワインが設立されました。

二人が買い取った葡萄園は労苦の末、軌道にのりましたがもともと生産量が多くはなく(といっても2万坪の敷地があります)、最盛期でも数箇所の販売店だけが取り扱う小規模ワイナリーでした。それでも、ゲイマーと康子が極めて好人物であり、しかもフランス人が作るワインということで、年に一度の収穫祭の時にはフランス大使を含めた周辺の在日フランス人が集まる貴重な場所として賑わいました。
またゲイマー康子が「女性の自立はまず女性が自ら経済活動を行うことから始る」を信条とする人物であったため、基本的に女性以外の社員は雇用しないという方針を設立以来とっていたというのも興味深いところです。

現在、マーセル・ゲイマーもゲイマー康子も既に他界し、ゲイマーワインは閉園となりました。樹齢50年近い葡萄園の木々、フランス人の作ったおそらく最初で最後の日本のワイナリー、こういったことに想いを馳せると、やはり残念です。
ゲイマーワインの産みの親であり、いわゆるウーマンリブの精神を持っていたゲイマー康子夫人(肖像画)
施設の概略 

門から入ってしばらく歩くと赤い倉庫のような建物がみえてきます。それがゲイマーワインの醸造所と販売所です。
社員の方の厚意により醸造所の中まで見せて頂きましたが、その中には、FRPのタンクなどの現代的な機械設備と一緒に、かなり古いぶどうの圧搾機(ほぼ木製)があったりと、歴史あるワイナリーであることを体感できるものが少なからず置いてありました。道具の中には既に50年近く年月が経ているのにいまだ現役というものもあり、昔ながらの醸造方法の一端を垣間見ることができます。
※なお筆者が見学に行った時、小売の窓口には人がおらず、広大な畑を探し回りました(実は小売店奥の醸造所で作業中でした)。社員の方がいない時にはとりあえず小売店のカウンターから大声で呼んでみたほうがいいかもしれません(^_^)


葡萄畑

営業時間内であるならば自由に入ることができます。
面白いことゲイマーワインの畑は葡萄の種類ごとに栽培区画を分けることなく、様々な種類の木が同じ垣根の列の中に混在して栽培されています。これは素人目にもあからさまに樹勢と葉の形が違う樹があるのでよく見ればすぐにわかります。そして、これらの葡萄が熟したところからそれらを圧搾してワインを作っているため、ゲイマーワインのワインは全て様々な葡萄がブレンドされた混醸ワインとなります。ワインの生産量は約1万5千リットルとさほど多くはありませんが、全て自社畑の葡萄から生産されています。

テイスティング

現在、販売している銘柄は赤・白の「ミュイドー」、リキュール、ブランデーの4種類です。使用されている葡萄は全て自社のぶどう園より収穫され、醸造も販売所と同じ建物内で行われています。
行った際にテイスティングさせてもらえたのは、リキュールとブランデーの方のみでした(ワインは抜栓後の劣化が早いのでこれは仕方ないと、あきらめました)。リキュールやブランデーに関しては私の経験不足でどのようなものが良いものなのか判断ができないので書けませんが、少なくとも飲むに値する品質ではあると思います。


残念なことにゲイマーワインは2004年12月をもって閉園となりました。初代ゲイマーや康子夫人の存命中はフランス大使を招いての大規模なパーティーを開くなど元気がありましたが、その死後は相続等の問題で畑も減少したうえに、周辺が住宅地になってしまったことにより農薬・肥料の散布などに対して苦情が寄せられたりと、ぶどう園の活動も難しくなっていました。加えて初代ゲイマーの養子にあたるオーナーはさほどワイナリー経営には興味がなく、神奈川県唯一のワイナリーもその歴史を閉じました。
私見で恐縮ですが、ゲイマーワインの所在地の周辺には草木がほとんどないような都市部であるだけに、景観や環境の点からもぜひとも蘇って欲しいワイナリーです。

筆者が飲んだこの一本!
銘柄: ミュイドー(赤)
生産元: ゲイマーワイン
価格: 1200円前後
使用品種: 不明
備考 カシスとミネラル臭のある香り、色は少し黒みがかった濃い赤。赤ワインでも樽を使って発酵させていないため樽香はまったくありません。酒質は薄めですが、タンニンはよくでており、ミディアムボディ程度の重さがあります。混醸ワインのせいかやや酒粕に似た味がします。ヴィンテージの記述はありませんでしたが、葡萄由来のフレッシュな香りが強くでていたので最近のものであると思われます。
不純物が多いのか飲みすぎると悪酔いします。
飲んだ日: 2003年8月16日
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購入方法

ワインの販売は葡萄園内の小売店と、一部のデパートでのみ取り扱っています。扱っているの小田急線相模大野駅前の伊勢丹小田急線町田駅の小田急駅ビル、となります。ただし常時あるとは限らないので、確実に購入したい場合は直接ぶどう園に行ったほうがよいと思われます。


ワイナリーアクセス


・JR横浜線古淵駅より徒歩約25分(右図参照)

右図には掲載していませんが、地図の上には相模原ゴルフクラブというゴルフ場があり、観光マップにはこちらもよく掲載されているので目印にするとよいと思います。

醸造は行っていませんが、葡萄園は一応存続しているようです。
銘柄: ミュイドー(白)
生産元: ゲイマーワイン
価格: 1000円前後
使用品種: 不明
備考 白とありますが色は薄い茶色。香りは、シェリーのような熟成させた香り。
飲んだ瞬間には、辛口で酸味を強く感じますが、舌にまわるころには穏やかなものにかわります。ただ、全体にやや水っぽさがあり、後味にぶどうの皮のような臭いが残ります。他のホームページ等の情報を見ると、それぞれ味などの評価がばらばらなので生産年ごとの差異がかなり激しいようです。
ヴィンテージの記述はありません。
飲んだ日: 2003年8月30日


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