日川中央葡萄酒
〜アットホームな小醸造所〜
外観

葡萄畑と民家だらけの斜面を登っていくと、道の脇には用水路が通り、上から下へと水が流れていくのどかな田園風景が続きます。
その中で周囲とちょっと雰囲気の違う白い洋風の建物。あたりが純和風の葡萄農家ばかりなのでいっそう目立つこの建物が、もちろん今回紹介するワイナリー、日川中央葡萄酒なのです。
歴史

公式ホームページに歴史が書かれているのでそちらを参照してください。

1974年に創業したこのワイナリー、山梨県特有の農家共同経営醸造所のように思えますが、完全な個人経営。ややこしいことにこの地域の共同醸造所は別にあったらしいのですが、そちらは醸造ををしなくなったため、代わりに日川中央葡萄酒で地元農家の方々の持ってきた葡萄を醸造して農家に販売しています。が、あくまでここはご夫婦二人による独立したワイナリー。もとより果樹農家なので、4.5ヘクタールという広大な自社畑で生食用葡萄や桃を含めた栽培が行われ、生食用と醸造用は区別されてワイン原料に使用されています。

ワインの生産量は約3klで山梨県産葡萄のみを使用しています。原料は農家からの直接購入と自社畑によるもので自社畑比率は60%程度とかなり高め。意外に生産量が多いように思えるのですが、そのほとんどを一升瓶で販売しているので『生産本数』は少ないようです。
この一升瓶主体ということから想像のつく方もいるでしょうが、このワイナリーはあくまで地元への販売が主体であり、広範囲に販路を拡大するタイプのワイナリーではありません。公式ホームページに生産したワインの90%が直接消費者のもとに届けられると書いてあるので問屋への卸しなどはほとんどないと考えてよいでしょう。
施設の概略
工場の見学は可能。というより、試飲所がそもそも醸造所の区画に入ってしまっているので、見学の意思に関係なく見えてしまいます。

あまり広い施設ではないので、特に移動することなく、手で詰めるスタイルの瓶詰め機やワインのラベルなどがその場で見ることができました。ちなみに日川中央葡萄酒で樽は使っていないので、あしからず。
また出荷されるワインは地元農家の消費が大半ということもあり全て火入れ(パスツリゼーション)処理が行われています。

施設は地表だけでなく地下にもセラーがありそこで創業当時のものを含む大量のワインが眠りについています。しかも、その多くには既にラベルが。通常、セラーのワインにラベルを貼ると年月と共に汚れたり擦り切れるために貼られることはないのですが某会社の方が「ラベルが古くなったほうが味がでてくる」と言ったのでそれを実践しているとのこと。確かにそういう部分はありますが、その某会社の古いヴィンテージのワインにあまり年月を感じさせるラベルを見たことがないような・・(^_^)。
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外観  歴史  施設の概略  自社畑  テイスティング  購入方法  アクセス  管理人のワイン記録 
葡萄畑
生食葡萄と桃農家でもあるために自社畑は4.5ヘクタールと広大。山梨県らしいといえばらしいのですが畑はあちこちに分散しており、見学には遠すぎる畑もあるようです。

幸いワイナリーの向かいに自社畑の一部があるのでそこであれば見学は容易。ここでは棚栽培の甲州のほか、垣根栽培でシャルドネとメルローが植えられています。畝の数を見るとまだ研究段階のように見受けられますし、商品にはこうしたヨーロッパ品種のワインの使用を謳ったものが上ってないところをみるとやはりまだ生産量は多くないようです。しかし、ヨーロッパ醸造醸造品種への意欲があることはこの畑を見ればわかるでしょう。

醸造品種であり商品化もされている甲斐ノワールは一文字短梢による栽培が行われているのですが、残念ながら遠方の畑にあるため見学していません。


テイスティング
醸造所に試飲用ワインが置かれており、いくつかのの銘柄が試飲できました。銘柄数は多くはないので、短時間で終わる

リエゾン 白:詳細は管理人のワイン記録にて。

リエゾン 赤:詳細は管理人のワイン記録にて。蛇足ですが日川中央葡萄酒のワインは720mlと一升瓶の価格設定が接近しており、どういうわけか500〜600円しか違いません。一升瓶は地元の方用と割り切っているのかもしれませんが、2.5倍入っているのに価格は1.5倍ぐらいしか上昇していないとは・・・。いっぱい飲みたい人には嬉しい限り(^_^)。

いちのくらわいん 赤:価格は1200円。リエゾン赤と違い、こちらはマスカットベリーA100%。ベリー系の香りと狐臭があり、味わいもライトでわずかにタンニンがある程度。少しだけシナモンなどのスパイシーな香りも感じましたが、基本的にはシンプルな香りと味わいのベリーAのワインといえます。

販売されている銘柄数はかなり少なく、食中酒としてのワイン造りに徹しているため全て辛口の銘柄となります。
スタンダードの白は、どちらかというと昔ながらのスタイル。味わいもシュール=リーなどではなく、またあまりフルーツ系の華やかな香りはありませんでした。複雑味は少なくシンプルな味わいながら、厚みがあるので食べながら飲むタイプのワインのように感じられます。
リエゾンの赤は詳細は後述しますが、これはちょっと面白いワインです。また、「委託醸造ワイン」という名前のままの農家から醸造を委託されたワインも販売されていますが、こちらは一般消費者が購入できるかどうかは不明。価格は一升瓶で1800円です。
購入方法 
購入はオンラインショッピングと直接購入により可能。

ワイナリーアクセス
公式ホームページにアクセスマップがあります。ワイナリー自体はわき道に入ったところにありますが主線の道路に看板が出ているので、あまり迷うことはないでしょう。

総論
完全に家族経営ということもあり、醸造所としては小規模。しかし、それゆえに建物や雰囲気になんとも言えない温かみがあり、訪れると安心感のある醸造所、という印象を受けました。いま書いたことは大変に抽象的で申し訳ないのですが、同規模の醸造所でも機山洋酒工業や金井醸造所のようにメディア評価の高いワインを造っているところから、こういう雰囲気を感じたことはありません。もちろん各々の醸造家のキャラクターの影響が大でしょうが、周辺ののどかな風景などもそう思わせる要因になっているようです。

ワインの品質は、白は良くも悪くもあまり洗練されていはいません。クリーンに造っているとは思うのですがやはり果実香が弱いので、大手や著名な醸造所の香りに富んだ甲州が好みの方がおいしいと思えるかは疑問。しかし味わいは濃い方に入るので、昔に近いスタイルの甲州を飲みなれている人ならば充分に楽しめると思います。
赤はセパージュもさながら、品質もなかなかのもの。訪れたなら飲んで頂きたい銘柄です。
自社畑でシャルドネなどを小規模ながら植えているのですが、こちらはまだ植えて時が経っていないこともあり、商品化はまだ先のよう。しかし、こういった新しい品種を植えようとする努力をみると、品質の向上に無関心なワイナリーではけしてないことは明らかです。

訪問ついては、ワインを飲むかどうかに関係なく意外と万人に楽しめる醸造所かも?と思っています。むしろ「ワイナリーは国際的に通じる品質のワインを造っているかどうかが全て」という人が行ってもあまり得るものはないかもしれません。日本の田舎の風景が好きというような方やちょっとのんびりした旅行ついでに、といった方ならば穏やかで充実した時間を過ごせるのではないでしょうか。ただし、大人数でいくと、畑の風景などを楽しむ余裕がなくなるので、気の合う人々とあまり時間にとらわれずに行くのがおすすめです。
ワイナリーの価値は、ワインだけではない(もちろんワインの内容が最重要項目ではあるのですが)と思う私にとっては、たとえ品質はまだまだ雑誌などで注目されるスタイルではないとしても、地元農家と共に真面目にワインを造っている素朴な醸造所はそれはそれで価値があると信じてます。こういう意見に同意できる方ならばぜひ門をたたいて、社員の方にお話をうかがってみてはどうでしょう。
銘柄: リエゾン 甲州・白
生産元: 日川中央葡萄酒
価格: 1200円(1.8リットルは1800円)
使用品種: 甲州
備考 色は甲州にしてはかなり黄色が強いですが、茶色などの色はないのでそこまで古いワインでないことは想像できます。香りはブドウの皮に由来するとおぼしきクヌギなど樹木系の香りが強くでて、その裏側に洋ナシの香りが感じ取れました。
アタックはかなりどっしりしており、含み香には上立香と同じ香りが感じられます。酸だけでなく苦みや味わいも荒削りながらもかなり強くでており、やや辛口程度に残った糖度がそれらをまとめているという印象。色と味わいから想像するにプレスの強い果汁が入っているように思えました。

味の要素からいって、単体で飲むよりは食中酒に向いているのではないでしょうか。
飲んだ日: 2006年8月7日
試飲販売所。醸造所内ですが、試飲用のスペースはしっかり確保されています。
社名 日川中央葡萄酒(株) /リエゾンワイン
住所 山梨県笛吹市一宮町市之蔵118-1
電話番号 0553-47-1553
取寄せ オンラインショッピングあり HP http://www.wine.or.jp/liaison/
自社畑あり ツアー等 訪問自由(予約推奨)
テイスティング可(無料)
栽培品種 甲州、マスカットベリーA、メルロー、シャルドネ、
甲斐ノワール
営業日 年始のみ休業
営業時間:8時30分〜17時30分
★  2006年7月12日
備考:山梨県産葡萄のみ使用
銘柄: リエゾン ベリーA 赤
生産元: 日川中央葡萄酒
価格: 1200円(1.8リットルは1800円)
使用品種: マスカット・ベリーA 甲斐ノワール
備考 ベリーAと書いてありますが甲斐ノワールも入っており、かなりめずらしいブレンドのワイン。
色は黒味がかったガーネット。ワインの涙を見る限り粘度は濃くもなく薄くもない様子。
香りはチェリー、シナモン、月桂樹、ちょっと根菜類のような香りもあります。含み香もほぼ同上ですがより根菜や、クヌギのような樹木のニュアンスが強く感じられました。アタックは弱めですが、中盤からグッとくる強い酸味が刺激的です。しかし、酸味の強さはどこへいったのかというほどアフターはおだやかで柔らかく、スッと消えていく感じです。タンニンは少なめでかつ細やかなので気にしていないとわからないというレベル。
いい意味で優しいワインといえるでしょうか。

日川中央葡萄酒の銘柄では飲んだかぎり最もインパクトがあり、かつバランスの取れている銘柄というのが私見です。赤としては少し酸味が強いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういったスタイルのワインも問題なく楽しめる方なら価格との比較からしても、購入の価値あり。
飲んだ日: 2006年8月7日
地下セラー内。ビン貯蔵で、既にラベルが貼ってあるのが確認できます。
ワイナリー近くの自社畑。まだ樹が若い状態でした。
畑はかなり7月にしては下草が無いことをみると、はやりの草生栽培ではないようです。